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維新〜総員決起せよ〜  作者: 棚瀬 賢
甲章
7/18

第6話 作戦「甲」

平成34年度初頭における自衛隊主要作戦能力


陸上自衛隊


陸上総隊

直轄部隊 第1ヘリコプター団、第1空挺団、水陸機動団、特殊作戦群、中央即応連隊等総勢約7,000名。


各方面隊

即応型師(旅)団 第6師団、第8師団、第11旅団、第14旅団ー隷下に1個の「即応機動連隊」を有す。

および、各師(旅)団。


主要装備保有数

戦車 550輌

自走砲 450輌



海上自衛隊


護衛艦 50隻(+3、計画3)

潜水艦 22隻


※『はつゆき』型は練習艦用途以外では既に退役済。



航空自衛隊


戦闘機配備部隊(少数配備は除く)

・F-15J(未改修型)配備部隊

第2航空団・第201飛行隊、第203飛行隊

第5航空団・第305飛行隊

飛行教育航空隊・第23飛行隊


・F-15J改(改修型)配備部隊

第6航空団・第303飛行隊、第306飛行隊

第9航空団・第204飛行隊、第304飛行隊


・F-2A(B)配備部隊

第3航空団・第3飛行隊

第8航空団・第6飛行隊、第8飛行隊

第4航空団・第21飛行隊


・F-35A配備部隊

第3航空団・第205飛行隊

第7航空団・第206飛行隊、臨時第207飛行隊(編成定数20機、現配備数4機)


※F-4EJ改戦闘機運用部隊である第301、302飛行隊は、F-35A運用部隊である第205、206飛行隊の新編に伴い解隊。

※RF-4E(EJ)偵察機運用部隊である第501飛行隊は、無人偵察機『グローバルホーク』運用部隊である「自衛隊無人偵察機運用隊」新編に伴い解隊。

※以上により、航空自衛隊はF-4EJ戦闘機の運用を昨年度を以て運用終了済。

前回に続き同日 夜


「作戦『甲』は無事に終了です。近日中に『乙』を発動しますが、それまでにもう少し同調者を増やしたいと思います」

関西にある居酒屋の一室。乾杯し、注文した料理が出揃った後にこの会話は始まった。

掘りごたつ式の個室には6人の男がいた。言葉を発した男が座る北側には黒スーツの3人。体格も良く、3人とも日焼けをしている。対して反対にはネイビーブルーのスーツとダークグレーのスーツ、そして柄の入ったグレーの3つボタンスーツが座っていた。ネイビーの男も褐色の良い肌の色をしていた。対しダークグレーの男と3つボタンの男の肌は白く、特にブチの薄い眼鏡をかけている3つボタンの細いイメージがあるその体は、襟につけた金バッチの効果もあってかどこかの官僚の匂いを発していた。

ネイビーを除いた全員が中年のこの会場。一見すると、会社の中間管理職者による飲み会にも見える。おまけにどこの部屋でも吞んちゃんベェちゃんが騒いでいた。

「それは良かったです。私も報告を一応職場で受けてはいますけど、やはり現場からの報告を聞くのが最も安心できますからね」

と、3つボタンの男。

余談であるが、3つボタンの男以外は全員ノーネクタイ、言う所の「クールビズ」スタイルであるが、3つボタンの男だけは黒字に青と白のストライプを締めている。


「僕はいつも内勤だからこの格好が落ち着くのですよ」と冷たい普段の表情とは真反対の表情で愛想良く言っていたのは初めて会った汗だくになる夏の開戦前であったな、とネイビーは思った。



「で、肝心なのは兵力だ」と言う声で我に帰るネイビー。

「やはり人数は多い方がいい。あとあと楽だし。な、仙崎」と話しながら鮪の刺身を口に運んでいく正面に座る黒のスーツに身を包んだ男...『長門』は普段の優しい口調で発言した。爽やかなソフモヒは、彼の顎髭を含めてトレードマークだ。

ネイビー...仙崎も相槌を打つ。

「しかし長門さん、確かに兵力と装備は多いに越したことはない。だが、問題は離反者や密告者が出たときさ。少数ならば拘束するなり監視するなりできる。もし密告されても1人だけならなんとかなるかもしれない。でも、あまりにも大勢、ましてや部隊ごととなれば無理だよ。最悪、部隊ごと"無力化"するか対象者を殺すしかないよ」

と怖いことを言うのは部屋の入り口に座る長門ととは真反対の奥に陣取っている眉間に年季が入った「縦皺」がある『伊庭』だ。オールバックの彼は「親父臭」がピカイチだ。彼は早々とジョッキを開けたらしく、タッチパネルで早速お代わりを注文した。

「しかし、それだけは絶対に許されません。ましてや同胞同士で銃を向け合うのは。居て発言するだけで給料が貰える無能な政治家ならともかく」と3つボタン。

「おや、左文字さん。反日左翼にも銃は向けないのですか?」と、ホルモンの煮込みが入った取り皿を手に持ったまま驚いたように聞くのは長門と伊庭の間に座る『坂下』である。3つボタンの男...左文字と同じく眼鏡をかけているが、官僚臭漂う左文字とは違い、眼鏡の奥にある大きな二重と鼻筋の通った顔は青年時代さぞや"もてた"ことだろう。

まぁ、言う左文字も決して「ブ男」ではないが。

「坂下さん、私は確かに彼らの言動にはイライラしている。いえ、言ってしまえば殺したいほどに...」そう言いかけた左文字を遮るように「失礼します!」という元気な声とともに襖が開いた。

若くてふくよかな胸をしたウェイターが伊庭の注文したジョッキを届けに来た。

「お、こりゃどうも」と伊庭が受けつつ、長門、坂下経由で伊庭が手に取り、空のジョッキを逆バージョンでウェイターに渡す。

「ごゆっくりどうぞー」とハナにかかった声でウェイターが言いつつ襖が閉まる。

「あや、こりゃ失敬」と伊庭が詫びる。

「構いませんよ、帰って助かりましたから。おかげで少し冷静になりました」と伊庭の正面に座る左文字が言う。

「私も殺したいと思いますよ彼らのことを。まともに先を見ないでロクな知識もつけずにただ叫ぶ。自分達がそれで良ければいい、国から締め付けられるのは嫌だからよくわからないけど反対するなんてあまりにも無責任すぎます。ましてや、デモをアルバイトや単にイベントと捉えて参加するなんて論外です」

そう続ける左文字の言葉に、気づけば誰もが箸の手を止めていた。

「私は別に反対することは否定しません。十人十色、いいえ国を見れば億の数がこの狭い日本に住むのです。海外の意見や在日人の意見を参考にすることも結構です。それで国が少しでもまともな方向に、世界に胸を張って誇れるものになればと考えています。

しかし、現にどうでしょう。7年前の安保法制や米軍基地移設、折角大筋合意したTPPの立ち役者をまるで晒し者にするかのような時期に告発する週刊誌。そのおかげで多くの国が協定式に過去の会議において活躍した大臣クラスを送っているのに日本は副大臣でした。本来行くべき人間が行けず、関係国閣僚より下の人間が行くなんて酷い話です。確かに断罪すべき罪はありますが、せめて告発日を後にする程度の考えは思い浮かばなかったのでしょうか?それほどまで許されない、直ちに告発し審判を仰がなくてはならない事件でしたか?

その前には海保の尖閣ビデオが流出した際、隠した政府より流出させた保安官を責める人間もいましたが、確かに公務員としては失格ですが一人の人間としては本当に過ちを犯したのでしょうか?

そして近年においてもその不可思議な状況は続いています。

また、反日デモも酷いものです。なぜ日本が嫌いなのに日本にいてデモをするのか。

反日デモに限ったことではありませんが、デモをしていることになんの気概があるというのでしょうか?少なくとも私がデモをするなら、誰にでも受け入れられるような綺麗なデモをします。通行を邪魔するのは仕方ないとしても、道路に広がったり公園を占領したり、ゴミを散らかし放題、人を脅す暴行するなんて単なる暴動です。ましてや、彼らのデモの結果を誰かに負担させるなんて言語道断です。

自衛隊を「違憲」としているのに安保法制のときだけ「自衛隊大好きだから安保反対」などとふざけたことを言う人達もいました。都合よく違憲を変えて信念も持たず意見を言い歩く、まさにゲスの極みですよ」


そこまで言った後に左文字は緩くなったビールに口をつけた。


「マスコミもマスコミです。誤報をしても一回謝罪すれば終わり。閣僚の罪は永遠に追求するのに彼らは一瞬で終わりです。まして謝罪しないこともある。偏向報道なんて当たり前。なぜ毎日報道されるのは反対派ばかりなのか?賛成派もいるはずなのに。

名前が売れているタレントが「反対派の急先鋒」として紹介されたりもしますが、彼らは本当に自分なりの意見があって、そして名前を売って報道されるだけの知識と経験があるのか甚だ疑問です。

そして一番は国会です。無意味な質問をし、「退場することこそ意見」と認識する政治家。平気であんな全ての姿が小学校や幼稚園を卒業した人間とは思えません。なぜ、あそこまで無能な人間が多いのか。

そんな無責任な人間達がさも日本国民の代表のように

扱われ報道される姿を見ると腹が立って仕方ありません!」

デーブルに置かれた彼の拳は強く握り締められていた。それを見た全員が左文字を見つめる。

と、その拳の力が抜けた。

「しかし、それでも国民です。我々は決して銃を向けてはならない。マスコミや政治家に向けても、一般市民には絶対に向けない。それが我々の意思でもあり、使命です。だからこそ、慎重に事を進めなければ」


その一言で安堵したのは部屋の全員であった。

「...左文字さんが熱くなる姿、初めて見ました」

と、やっとの事で声を絞り出したのは左文字の隣に座るダークグレースーツ...白井だ。

「ふふふ、お恥ずかしいところお見せしましたかね」と、いつもの口調に戻って話す左文字。

「どうです、折角左文字さんの熱い姿を見れたんです。改めて自己紹介を兼ねて野望でもいいし、理想でもいいですから語り合いませんか?今日の議題はすでに片付きましたし」

白井のその一言で皆が自分の理想を語り合い始めた。



2時間後


いつも以上に酔った6人の男達は、その足取りからしてさぞかし有意義な会であったことが想像ついた。

このあと、ホテルに帰りそれぞれの部屋で休む。念のため、監視がある事を想定して「仕事ついでの友達同士での小旅行」を演出するためだ。だからこそ、居酒屋も電車を3駅乗りついで適当な店に入ったのだ。

彼らは、それぞれの心の内が理解できた彼らは「いずれ"本名"で会い、そして今度は"同志"ではなく"友人"として再び飲み交わしたい」と思った。

それが叶わぬ夢と分かっていたとしても。

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