第7章 反撃開始
王乃が作り出す<鏡>は、真の<空気>、流の<水>の攻撃を吸収し、反射した。
「そういうことか···。あの違和感の正体は自分の技が反射して自分に帰って来たからか!」
真の言っている違和感は、最初に攻撃した時に真が受けた攻撃のことである。
「しかもあの特性、それだけじゃ無いみたい。恐らく、自分の周りを鏡で覆って景色を反射していた。だから姿が見えなかった。」
ユイネの言うとおり、彼は姿を眩まし、突然現れる。だから瞬間移動に見えたのだ。そしてユイネが付け加える。
「でも、あれを見る限り鏡を作り出せるのは掌からだけ。つまり、一人が注意を引いておけば、もう一人の攻撃の防御は不可能。でもきっとそこはJかOがカバーしてくる···。なかなか厳しい状況。」
「そこをどうにかするのが俺達だろ!」
そう言うと、流が一人で飛び出した。下半身を水にして滑るように王乃に近づいて行く。
「馬鹿!一人で行くな!」
真は叫んで流の後を追う。
「俺の予想が正しければ···。」
流がボソボソと言いながら王乃に向かって勢いのある右ストレートを放った。王乃は慌てる仕草も見せずに左手でカウンターのストレートを放って来た。流は左ストレートが当たった瞬間に体を水に変化させ、王乃の体をすり抜けて、背後にまわった。
「後ろもらいっ!!」
王乃の背後から更に威力の増した右ストレートを放つ。王乃はその攻撃に素早く反応し、スレスレでかわす。そして自分の顔の真横にある右腕をがっしりと掴み、勢いを利用して自分の正面の床に流を叩きつけた。流は咄嗟に反応出来ず、ただ物凄い勢いで叩きつけられた。
「がっ!」
と、すぐさまそこに真が現れ、圧縮空気を王乃に向かって放つ。王乃は平然と自分の正面に右手を伸ばし、その攻撃を迎え入れた。案の定、圧縮空気は掌から作り出された鏡に吸い込まれ、次の瞬間真に帰って来た。その攻撃を読んでいた真は、その場を素早く離れ、その攻撃から逃れた。
「流!」
真が叫ぶ。真は棒を守っているユイネの場所まで後退した。流も、体を水に変え、王乃から離れた。
「流石の喧嘩センスだな。暴力事件を起こしただけの事はある。だけど予想通りだ。」
流は二人に言った。
「どういうこと?」
ユイネが問う。
「あいつ、喧嘩するとき特性を使わないんだ。だからもしやって思ったけど、あの鏡は遠距離攻撃しか反射出来ない。実際、俺のパンチも特性を使わずに普通にカウンターを狙って来た。背後からの攻撃も、あいつはかわした。でも、そのあとの真の攻撃は鏡を使って反射した。遠距離攻撃だからだ。つまり···。」
「接近戦なら勝てる!!」
真が流の説明を遮る。
「そう言うこと。」
流は突っ込みもせずに答えた。
「あんた···以外と頭脳派ね···。」
ユイネが驚いた顔で言った。
「まあ、こういう時はな。」
と流が照れながら答える。
「となると、一番適性なのはユイネだな。」
真が言った。
「ああ、お前ならあいつに勝てる···頼んだぞ。」
流が真剣な眼差しで言った。ユイネは一回頷くと、王乃達の方へ体を向けた。
「俺達は注意を引くんだ!」
真が流に言った。
「そんじゃま、行きますか!」
元気に流が言う。そして、真達の反撃が始まった。