第5章 噂の男
真たちは棒倒しを次々と勝ち進んで行き、ついに準々決勝にまで来ていた。
「何だかんだで結構楽勝だったな。」
流が言った。彼は汗一つかいていない。
「まあでも流石にここからは厳しいと思うぞ。なんか色々噂もあるし。」
真が言う噂というのは、ある男の話だった。その男というのは、入学早々暴力事件を起こしていて、学校の中では有名だった。
「色々噂あるけど、その中でも有名な噂はやっぱりあれだよな。姿を消すっていう···」
そう。彼の噂で最も有名なのは、「直ぐに姿を消してしまう」こと。消えてしまうが故に誰も捕まえられない。教師も手をやいている。流は以前に彼の暴力事件に巻き込まれていて、彼には詳しかった。
「アイツはヤバかった。関わらない方がいい。」
流が真顔で言った。
「名前は?」
話を聞いていたユイネが流に尋ねた。
「···王乃 潤弥だ。」
流が静かに答える。
「次の対戦相手は?」
今度はユイネが真に尋ねる。
「えっと···うわ、マジか。···王乃だ。」
真が苦い顔で答えた。
するとそこに二人の男女が歩いてきた。
「私たちは君たちの次の相手だ。リーダーの王乃君は恥ずかしがり屋でね。姿を見せる気は無いようだ。まあでも、宜しく頼むよ。」
男が言った。
「ああ、私のことはJとでも呼んでくれ。この女はO。」
女が丁寧にお辞儀をした。
「では。」
そう言うと二人は去って行った。しばらくの沈黙。
「アイツら本当に高校生か?雰囲気がヤバかった。」
流が言った。
「でも、負ける気は無いんでしょ?」
ユイネが聞く。
「当然でしょ。」
真と流が声を揃えて言った。
「」