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Chapter7:三日の滞在

 「すまんかった。ではわしはここいらで失礼するかの。お前さんも、何か用があってここにきたんじゃろ。あんまり迷惑はかけられんからな」

おじいさんは湖のほとりを見つめながら、なんだか吹っ切れた様子で言った。ファルフォークは立ち去ろうとするおじいさんの背中に呼びかけた。

「あ、ちょっと待ってくれよ。一つだけ教えてくれないか?」

「ん?」

おじいさんは立ち止まった。

「この村には店とか、宿とかないのか?」


 ファルフォークは今、次の旅路を行くための食料に困っていた。特にユルルの食料なんて、小さなドクダケ数個しかなかったためにもう何日も何も食べさせてあげていない。おかげでユルルはぐったりしていた。


 おじいさんはホホホと笑って答えた。

「何か、そんなことか。残念ながらこの村には宿も店も無い。ただ、七日おきに行商人がやってくるでな、そいつからなら色々と手に入れることができるぞ。そうじゃな、やつが来るのは今日からちょうど三日後じゃ」

「ふーん、そうか。わかった、ありがとう」

ファルフォークが礼を言うと、おじいさんは微笑んで立ち去っていった。


 「三日後かぁー、参ったな……」

ファルフォークは湖の前に仰向けに寝転び、ため息をついた。視界に空だけが映った。ふとそのとき、ユルルが服の中から這い出してきて、ファルフォークのお腹の上で鳴いた。

「なぁユルル、あと三日間我慢して待つか?お前なんかもう餓死寸前だよなぁ……。あ、っておい!」

そのとき、ユルルは急に湖に向かって走り出した。

「おい待てよ!」

ファルフォークは起き上がり、ユルルを捕まえようと追いかけた。しかし、そのときのユルルは風のごとく疾走していて、まるで何かにおびき寄せられている様子だった。そしてユルルが湖のそばにやってきて立ち止まったとき、ファルフォークはそこで驚くべき発見をした。


 「おい!何食ってんだよ!?」

ファルフォークは叫んだ。

「ちょ、やめろ!」

そしてすぐさま、ユルルを持ち上げた。


 なんと、ユルルは湖の水辺の土をガツガツとほおばっていたのだ。しかしよく見ると、ユルルは土をほおばっているのではなかった。土の中にある、小さなコケのようなものを食べていたのだ。その証拠に、ユルルは綺麗に土だけを吐き出した。

「はあ……なんだよお前。びっくりさせんなよ」


 とにかく、ユルルは死ぬほど腹をすかしていたらしい。今までドクダケしか食さなかったユルルも、この際不味いだのなんだの言ってられなくなり、好きでもないコケを口に運んでいるのだ。ファルフォークははっと大きくため息をつくと、必死にコケを食べるユルルに向かって言った。

「わかったよユルル、あと三日我慢して、美味しいもん死ぬほど食ってやろうじゃないか」


 というわけで、彼らは三日間この村に滞在することになったのであった。







こんな成り行きで、二人は三日間、行商人が来るのを待つのでした!

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