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Chapter4:窪んだ地形

 ファルフォークは一瞬出発を躊躇った。なぜなら、もうたそがれ時であったからだ。


 しかし彼は出発することに決めた。理由はもちろん、城下町の――――である。あんなごった返した町の中を歩くのは二度とごめんだった。


 夕暮れの出発ということもあって、門番の兵士に呼び止められた。

「君、待ちたまえ」

門番の兵士は槍を前に突き出して、ファルフォークの行く道を塞いだ。

「こんな時間に外に出るのは危険だ。最近は人を襲う生物が頻出していると聞くしな」

兵士は二人いるが、もう一人の兵士はまるで人形のように立ち尽くしていた。ファルフォークは一瞬その兵士をチラっとみやると、また眼前の兵士に視線を戻した。

「そんなものにビビってたら旅なんて一生できねえよ。それに、もしその生物に襲われて、俺が死んでしまったとしても、あんたらには何の迷惑もかかんねえだろ?」

「……しかし」

「はいはい、そうやって一生正義気取って頑張ってくださいよ。俺は止められても行くから」

ファルフォークは皮肉っぽく言った。人の行動を規制しようとする発言はもううんざりだ。彼は兵士の槍を手で退けると、無愛想に「じゃあな」と行って城門を出てしまった。


 

 彼の旅が、ようやく始まった。


 

 太陽は西に傾き、柿色の光を放っていた。その光に焼かれた雲が、上部が真っ赤で下部が黒色に染まっている。正面からそれを見るのはさすがに眩しかったので、手で目を覆い、彼は地平線まで広がる雄大な平原を眺めた。


 風がユラユラと、ファルフォークのマントをなびかせた。その風は平原の向こうからやってきたもので、平原の草木がサーサーと音をたてて揺れていた。平原は決してなだらかではなく、風は小高いところでぶち当たったり、斜面を登ったり、逆に下ったり、また何事もなく直進したりと、ところどころで軌道を変えて平原を這い進む。そしてファルフォークを横切り、城壁に弾き返され、空へと上昇し……。風の一つ一つが違う軌道を描き、やがて空へと登っていくのだ。


 ファルフォークはこんな何気ないことから趣を感じられる人になりたいと思ったことが何度かある。かつての貴族様は、暇がゆえに季節の移り変わりや温度変化、たかが落ち葉が落ち始めたことにさえ、染み渡るような哀愁を感じていたのだという。意識せずとも自然に対して趣きを感じられる、そんな研ぎ澄まされた感性というものに、彼はあこがれていたのだ。


 彼はふうっと息を吐くと、ゆっくり平原を歩き始めた。平原の地は、城下町の石材で固められた地面と違ってやわらかい感触がした。彼は大地を踏みしめながら、地平線に浮かぶ太陽目指して歩いていった。



 歩き始めて数時間後、太陽は西の空に沈み、ほの暗く蒼い空が現れた。空には太陽とバトンタッチをした月と、それを取り巻く星の群れが燦然さんぜんと輝いており、人々に夜の訪れを告げていた。


 そのときふと、星影の花のことを思い出した。{夜空にぼんやりと浮かぶ一対の月。一つは縁を表し、一つは天を表す。そして、その月下に沈む小さな湖。月明かりが落ちる水面に咲く、一輪の花}。もし星影の花というものが存在するのであれば、一対の月とはいったいなんなのだろう。湖という時点でこの近くでないということはわかるが、月が二つある夜空とはいったい……。このころの彼には、考えてもわかるはずがなかった。謎解きをすればするほど謎が深まるばかりで、彼は考えるのをやめた。


 それから数時間後、ついに彼にも睡魔というものが襲い掛かり、この日の旅はここまでということになった。



 次の朝、起床し、軽い食事を採った後、彼は出発した。そして夜まで歩き続けた後、眠気がさしてきたと同時にその場で休む。そんな繰り返しを彼は何週間も続けた。数週間歩き続け、彼の食料が完全に尽きたときであった。昼間、涼しい風とゆったり雲が浮かぶ青空の下、彼は壁のように急な斜面にぶち当たった。


 「これは……なんだ?」

明らかに普通の斜面ではなかった。まるで向こう側から何かで押し上げられたような、丸い斜面。坂だのでこぼこ道だの、変な足場を歩くのは慣れっこだったが、この足元の感触はなんだか不思議だった。


 斜面はだんだんと緩やかになっていった。やがて斜面がなくなり、平面が続く草むらを少し歩くと、彼はそこであっと声を上げてしまった。

「へぇー。凄いなぁ!こんなとこに村か……」

ここは小高い丘の上。いや、窪んだ地形の周辺部というべきか。その窪んだ地形の真ん中には、小さな村が横たわっていた。この高さから見るその様子は、まるで活気を失った寂莫の空間だった。村は中心部より少し右にそれて、左側には大きな湖と、三区切りにされた大きな畑が見受けられた。全体的にほんとうに小さく、戸数も数えるくらいしかない。


 ファルフォークは変わった村だな、と思いながら、くぼんだ地形の斜面を下り始めた。


旅路の様子は出来る限りカットしようと思います。あんまり詳しいとただの旅日記になって、読者様が飽きちゃうかなと思いましたので。。


さてさて、STAR/STORYで最初の村に到着いたしました!はたしてこの村ではどんな出来事が彼を待ち受けているのでしょうか?次章、ご期待ください

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