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Chapter9:会話

 「……あの、あなたはどちら様ですか?」

エイナはぽかんとして聞いた。ファルフォークは苦笑いを浮かべる。


 あのような案件ともいえないただの衝突では、やはり顔は覚えてもらえなかったのだろう。そもそも、覚えてもらえなくても結構だが。

「昨日、昼間にお前とぶつかった者だけど」

彼は気安く答えた。

「ええと……」

エイナは宙に目を泳がせた。ほとんど覚えていないのか。やはり彼女も村人と同様、他人は他人、関係のない人はただの景色の一環なのだろうか。そんなことを考えているうちに、彼女ははっとして視線をファルフォークに戻し、以前と同様に大きく頭を下げて謝った。

「ああ、あのときの……。本当にすみませんでした。軽率な態度で、まともな謝罪もできなくて……」

本当に申し訳なさそうに、おどおどした様子で謝った。そんな態度を目にしたファルフォークは、ムっとして言った。

「別に謝ってほしいわけじゃないし、たいして気にしてないよ」


 彼女の顔をしっかり見るのは初めてである。その顔はやはりおじいさんが言ったとおり、忙しない毎日の生活を物語っていて、面窶おもやつれとはこのこと、目の下にはくまができていた。ファルフォークは彼女を横切ると、湖の前でしゃがみ、おもむろに口を開いた。

「ところで……お前さ、あのでっかい屋敷で働いてるんだって?」

「!」

彼の唐突な質問に、少女はピクンとした。ファルフォークは後ろに目をやる。

「たまたま小耳に挟んだんだ。詳しくは知らないけど」

「ええ、私はあのお屋敷で雇用人として働かせていただいています。しかし、そのような噂をどこで……?」

「村人に聞いた」

そのとき、ファルフォークの予想通りエイナは訝しげな顔をした。そして確信した。あのおじいさんの言っていたことは本当だということを。


 そして彼は、多少疑われようとも詳しく問い詰めてやろうと思った。水面を見つめる目を鋭くすると、声色を低くして呟くように聞いた。 

「なんでも忙中閑ありとは異状のことで、昼夜兼行仕事漬けだとか?」

独り言のように、水面を見つめながら言った。少女はまたピクンとした。

「牽制を受けて、うだつが上がらない状態だとか?」

彼女の表情がだんだん青ざめていく。


 やはりか、とファルフォークは思った。彼女は上からの重圧が強すぎて、言いたいことも言えない状態に陥ってしまっているらしい。もとい、監視を受けていると感じさせる、もしくは監視して牽制されているのだろう。だとすればおじいさんの言っていた言葉は嘘でもなんでもなく、おそらくほぼ全てが真実である道理になる。


 そのときエイナはふっと微笑みを浮かべた。彼女は、ファルフォークがたまたま自分の身の上を小耳に挟んだのではないということに気付いていた。

「私は職掌柄、休みなしで働くのは当然のことなんです。表面上、厳しい生活を強いられているようで理解も得がたいかと思われますが、私はあのお屋敷に仕えることで今を生きることができているのです。だから、たとえ昼夜兼行であろうとも私は今幸せなんです」

さっきのおどおどした様子はなく、まるで自分を披瀝したような清々しい面持ちであった。


 「ふーん……」

ファルフォークは湖に倒影した自分の姿を見つめた。水面に映るその表情は、まさに何かを思いついたような、期待に溢れた顔つきをしていた。





 「ナット、あれを見てみろ」

窓の外、湖のほとりに立つ二つの人影を指差してディアンが言った。

「はい……ああ、あれはもしや……?」

黒い装束を着た鼻の高い気障な顔の男が、ディアンのとなりに立って唸った。


 「ああ、間違いないな。あの青いボロマントと左手の手袋、16歳の若さにしてアディンを倒し、見事カガリア島の頂点に立った男、ファルフォーク・シルヴィノーツだ。アディン打倒以前にもカガリア城へ侵入、ヴァルファーラ崩壊、また、裏組織ドラゴンハンターにも繋がりがあるとして、王国から100万ラム(約1億円)ものの懸賞金が掛けられた、天才青年剣士。現在はトルピナス城下町に潜伏していると聞いていたが、まさか何の変哲もない質素な村に来訪しているとは……」

「ホホホホホ、馬鹿と天才は紙一重ということですか」

ディアンとナットは顔を見合わせ、ニヤリと笑った。


 「やっとあの使えない小娘を使うときがきたらしい。なーに、若造とイチャついて仕事をサボった罰よ。ナット、この件はお前に一任する」

「ホホホホホ、お任せください、だんな様。ローベルジャン発展のため、私め、全力を尽くして任務遂行にお勤めさせていただきましょう」


 







〜説明〜

カガリア島……物語の舞台となる島。

カガリア城……カガリア島の中核となる王国最大の城。

ヴァルファーラ……カガリア島の北西部に位置する砦。ファルフォークによって破壊された。

ドラゴンハンター……竜を狩る組織で、カガリア島規模でも一目おかれている集団。

トルピナス……第一章、二章、三章で舞台となった城(城下町)。商店街が賑やかで有名。


なお、覚えなくても支障は無いので参考程度にどうぞ。

急いで書いてます。少々忙しいもので・・・。遅くなってすいません><

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