第5話 自身の能力
翌日の朝蓮二とジンはパン屋の裏の森に来て居た。
「んじゃ、始めるか?レンジ。」
ジンは準備体操をしているレンジに言った。
「おう。いつでもいいぞ、と言ってもなにやんだ?俺、ある程度武道やってたから組手ならやんねぇぞ?」
蓮二は現実世界では合気道、空手、ムエタイ、カポエイラなどとりあえず格闘が趣味で色々やって居たことがあった。
「分かってるって、今からやんのはこの世界で誰もが必ず一つ持ってる自分専用の潜在能力の開花だ。」
「潜在能力?そりゃあれか?気の力でいいんだな?そうだな?頭わいてんのか?ゲイ野郎」
機関銃のごとくジンを罵倒する蓮二。
「まっまあキの力ってのはよく知らんが、潜在能力ってのはそいつがウチに秘めてるモノだって、わかんねぇか?」
ジンはそこで説明をやめ一瞬考える素振りを見せた。
「よし。とりあえず見せてやる、よく見てろよ!俺の能力!」
ジンは腰を落とし手を地面に付けた。
「えっ?なに?お前の能力ってあれ?屁なの?だったら全人類共通能力だぞ?」
横で蓮二がバカにして居るが関係ない。
「見るがいい!俺の」
すると突然ジンの触れていた地面に穴が空いた。
「なっ!?なんで!?」
「どうだ!レンジ!これが俺の能力!『触れた物に穴を開ける力』だ!」
驚きの表情を浮かべる蓮二の横でジンは誇らしげに言った。
すると驚きの表情のまま蓮二はジンの顔を見た。
「穴ってお前、穴開けるってお前!やっぱりゲイじゃねーかァァ!なに?お前の深層心理穴あけたい…いや掘りたいの?」
蓮二はそういいながらやっぱ、修業いいわと言う様に手を振りながら帰ろうとする。
「いや、まてぇい!!なにノーマルに帰ろうとしてんの?お前もやんだよ!」
「えぇぇ、そんなガチホモ能力要らないんだけど」
「これは俺の能力だから!俺だけの!お前は自分の能力探すんだよ!」
そうでかい声を上げながら蓮二をなんとか説得したジン。
そして腰にかけていた袋からペンダントを出し蓮二に渡した。
「これは?綺麗なペンダントだな、ジンが持ってるなんて勿体無いな」
そう言う蓮二にジンは余計なお世話だと言う風に顔をしかめた。
「これは〔解放石〕ってシロモノでできたやつだ。コレをかけてると能力開放がしやすいってだけだ」
それじゃと言うとジンは蓮二に言った。
「お前が今能力と聞いてピンとくるイメージをしろ」
蓮二はジンの言葉通りイメージを始める。
(イメージか。そうだなぁ、武道やってるからなぁ武道と言ったら相手との間合い、強さ、硬さ、目線、そして一撃必殺だな)
そうイメージすると心の奥底から何かが出てくる感じがした。
「これかな?いまいちピンとこないな?」
「レンジ、分かったか?どれそこの気にでもやって見たらどうだ?」
ちょうど蓮二の目の前の木をジンは指差して言った。
「うし!いくぞ!」
蓮二は腰を低くし拳に力を込める。
「はぁ!」
パンッ!と言う音がし目の前の木に穴が空いた。
「んっ?俺と同じ能力?」
「いや?殴ったのに拳が痛くなかった。でもあんな穴が空くほどの威力が出るわけでもないしなぁ?」
と、何気なく足で蹴りの練習をして見た見た。
ズン、と言う音の後に蹴りをした方向15メートルぐらいの距離にあった木々が折れた。
「おっおい、レンジ…なにがどうなって」
そこでなにかに気付いたレンジは蓮二はジャンプして見た。
するといきなり高さ5メートルほどまで跳び、空中に立った。
「!?れっレンジ!!お前!空中に立ってるぞ!?」
「ジンさん!分かったぜ!俺の能力!」
そこまで言って突然両手を上げながら何かをつかむ仕草をした。
「俺の能力は『なんでも触れられる力』だ!」