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トリックエンジェルSS  作者: まーしゃ
第7章 くるみと冬子の物語
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給食パーティ

この物語にでてくる調理法はフィクションです。試してみて失敗しても作者は責任を持ちません。作者も何回か失敗しているので信じてはいけません。

三条家と楠木家主催で毎年恒例でクリスマスパーティを行っている。いつもは、くるみのケーキを中心に色々な料理をみんな持ち込むのだが、今年は少し趣向を変えた。


響子 :「今年は給食パーティですって?」


あきら:「ああ、詩音の発案で子供たちも何人か来る。」


くるみ:「小学校以来なの。楽しみなの。」


響子 :「私は毎日食べてるからね~。それほど懐かしくないわ。」


和恵 :「でも、ホテルとかでも料理として給食出しているところがあって隠れたブームらしいです。」


あきら:「昔と違って今の給食はおいしいらしいじゃないか。」


響子 :「まあね。でも給食は給食よ。だけど、こういう風に企画するのはいいことだと思うわ。」


響子にとって見ればせっかくのパーティが小学校で毎日のように食べてる給食なのでちょっとがっかりなんだろう。


詩音 :「でも、今日の給食はきっとおいしいと思う。」


あきら:「そういえば、詩音今回隠しダマ用意してるって言っていたな。」


詩音 :「うん。でも秘密。」


響子 :「ところで誰が給食作るの? 私、給食なんて作れないよ。」


詩音 :「うん、実は隠しダマに料理人呼んでるの。」


和恵 :「どなたなんですか?」


詩音 :「もうすぐ来るよ。」


そんなこんなで待っていると見慣れたデニムのオーバーオールを来た女の子がやってきた。


舞  :「こんにちは~」


和恵 :「舞ちゃん、こんにちは。寒い中ありがとです。」


あきら:「なるほど、舞か。これは期待持てそうだな。」


舞  :「ううん、今日はお手伝い。メインシェフは別だよ。」


あきら:「ほう、誰だ?」


舞の裏から、これまた見慣れた女性が現われた。同じようにオーバーオールをきている。


あきら:「冬子... まさか、メインシェフ冬子じゃないだろうな。この前、激辛こんぺいとうバームクーヘン食べさせられて死ぬかと思ったばかりだぞ。」


冬子 :「楠木さん、開口一番失礼です。冬子は冬子であって冬子じゃありません。それもわからないなんてやっぱり楠木さん変な人です。近所でもどちらかというと普通の人と評判の冬子でもそう思います。」


あきら:「相変わらず、わけわかんないな。」


冬子 :「楠木さん、冬子の給食食べれば、もう、私のとりこです。和恵さん、楠木さんをとりこにしてしまったらごめんなさい。それも運命と思ってあきらめてください。」


そう言うと冬子はにっこり笑う。


和恵 :「はあ。」


冬子 :「さあ、舞ちゃん手伝ってください。冬子、早速準備に入ります。」


そういってキッチンのほうへ向かっていった。


くるみ:「冬ちゃん。ちょっと変なの。」


あきら:「そりゃ、冬子はへんだろ。昔っからだ。」


くるみ:「ちがうの、いつもの冬ちゃんと違う感じなの。」


和恵 :「私もそう思いました。なんか自信に満ち溢れてるというか余裕があるというか。大人の感じです。」


あきら:「そうか~?」


響子が苦笑して言う。


響子 :「みんな、気づかなかったの? 冬ちゃんの左手の薬指。」


冬子の左手の薬指には指輪がはめてあった。


あきら:「あいつ、いつの間に婚約したんだ?」


和恵 :「それで、大人の雰囲気だったんですね。」


くるみ:「冬ちゃん、おめでとうなの。」


となりで子供たちがケラケラ笑っている。


響子 :「違う違う。あんたたち、ホント、アホアホね。あそこにいる冬ちゃんはうちらが良く会ってる冬子でなく、舞ちゃんのママのほうよ。」


あきら:「ええ? 向こうの冬子か!」


響子 :「そうでしょ。詩音ちゃん、ポッチ。」


詩音 :「そうだよ。この前美鈴ちゃんが冬ちゃんの給食食べられなかったから呼んだの。」


和恵 :「気づきませんでした。でも、とっても困ります。それだとホントにあきら君とりこにされる可能性があります。私も手伝いにいってきます。」


響子 :「くぎを挿しに行くの間違いでしょ、和恵。さて私も手伝うか。くるみさんはデザートのほうお願い。」


くるみ:「了解なの。」


ポッチ:「楽しみ~」


あきら:「向こう冬子はけっこう料理がうまいらしいからな。」


詩音 :「パパ、それは違うよ。結構じゃなくて、めちゃくちゃ上手だよ。」


美鈴 :「本当に上手なんですよ。私も何回も食べてますけど、それはほっぺた落ちるというか、なんというか。」


----------------------------------


くるみ:「いただきましょう。」


一同 :「頂きます。」


料理ができて、早速俺たちは食べ始めた。


冬子 :「どうですか?冬子の給食風ビーフシチューは。」


くるみ:「ホテルタイユバンの料理よりおいしいの。アメリカの超一流ホテルなの。一泊4万円くらいのホテル。」


ポッチ:「うん、お父さんといった帝国ホテルよりも上かも。」


響子 :「は~、聞いてはいたけど、それでも想像以上。」


和恵 :「えっと、えっと、えっと。言葉にできないです。」


美鈴 :「冬ちゃんの料理食べると本当に生きるってすばらしいと思えます。」


あきら:「参りました。降参です。」


だけど舞の顔は曇っていた。


舞  :「...まずい。冬ちゃん、これ失敗作。」


あきら:「え?」


冬子も慌てて食べてみる。


冬子 :「冬子みんなに謝らなければいけません。ごめんなさい。今、作り直します。もうちょっと待っててください。」


和恵 :「えっと、ぜんぜん、まずくないと思います。というかまずいという要素が見当たらないです。」


あきら:「どこをどういうふうに取れば失敗作なんだよ。」


くるみ:「なのなの。」


響子 :「私にもわからない。どこが問題なの?」


舞  :「だって、全体的なバランスが悪いじゃない。なんか半音の半音の半音ずれた感じ。」


冬子 :「冬子もそう思います。何がいけないのでしょうか?」


舞  :「このパンじゃない? なんかちょっとさくさく感がないし、口の中で広がる甘味がないというか。」


冬子 :「うん、このパンです。冬子気づきました。」


舞  :「このパンとビーフシチューのバランスが悪くて、ビーフシチューが浮き足立っている感じ?」


冬子 :「いつものパンだと思って、ビーフシチューを作ってしまいました。このパンにあった味に変えないといけないですね。すぐ作り直しますので、もうちょっと待ってください。」


呆然とする俺たち。テレビの料理対決の番組を見ているようだ。


響子 :「そんなことしなくていいわよ。第一、料理が遅くなっちゃう。私たちにはほんとにめちゃくちゃおいしいから。」


冬子 :「でも、冬子、これでは納得行きません。」


あきら:「いや、俺たちからすれば、この料理をお預け食らうほうが納得いかない。」


冬子 :「そこまでおっしゃっていただけるなら冬子あきらめます。舞ちゃん、今日は我慢してください。」


舞  :「うん、我慢する。」


あきら:「おまえたち、どういう会話してるかわかってるのか? 家庭料理に求められるレベルじゃないだろう。」


舞  :「そうなの? でも、冬ちゃんの名誉のために言っておくけど普段の料理はこんなんじゃないよ。」


道理で舞は学校の給食がまずいまずいというわけだ。このレベルでまずいというのなら、学校の給食はそりゃまずかろうに。


舞  :「和恵ママ、祐美子さんに伝えておいて欲しいことがあるんですけど。」


和恵 :「はい、なんでしょう。」


舞  :「このパン、祐美子さんが作ったパンだよね。祐美子さんに早く歯医者行って虫歯治すようにって。微妙にパンの味が変ってるのはそのせいです。」


和恵 :「はあ。たしかにお母さん虫歯になってます。子供みたいに歯医者さん行かないって言ってます。舞ちゃんすごいです。よくわかりましたね。」


詩音 :「いかにも舞ちゃんらしいよね。」


詩音がぼそって俺に言う。


詩音 :「この二人やっぱり親子だよね。ぶっ飛んでるでしょ。」


あきら:「まったくだ。」


うちもあまり人様のことは言えないが、このふたりも世間の常識では計り知れないものを持ってるとつくづく感じた。



おしまい

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