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トリックエンジェルSS  作者: まーしゃ
第7章 くるみと冬子の物語
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学校給食その2

この物語にでてくる薬名、治療法、一部の病名、一部の物理法則はフィクションです。



舞  :「さあ、冬ちゃん行くわよ。」


冬子 :「わかりました。行きましょう。今日は決戦の日です。風林火山です。」


あきら:「おう、頑張れ! 先生をぐーの音もでないほど負かして来い。」


舞  :「パパもお仕事頑張って。」


3人は一緒に家をでて、互いの検討を祈って別れた。あきらは仕事場に舞と冬子は学校に向かった。


舞  :「さて、給食室にはまだ、何も話してないから一悶着あるかもしれないから、早めに行って話しつけるよ。」


冬子 :「はい。吉良上野介覚悟です。」


舞  :「う~ん、ちょっと違うかな~。ほんの少しだけどね。」


舞は学校につくと冬子にはちょっと待ってもらい、かばんを教室におきにいった。


ポッチ:「舞ちゃん、がんばって。」


美鈴と入れ替わったポッチがこぶしを突き上げ応援する。


舞  :「まかしといて。おいしい給食作るからね。」


舞が気づかず、そのまま教室を後にする。


ポッチ:「ほうら、案の定、目的と手段が入れ替わってる。さて、私のほうも動きますか。」



舞は冬子と一緒に給食室に向かう。


冬子 :「たのも~う。」


舞  :「またちょっと違うかな。雰囲気は出てるけど。」


奥から中年の女性が出てきた。ここのリーダー格の人のようだ。緊張の一瞬だ。


調理員:「楠木さんですね。話は市から聞いております。」


舞  :「あ、はい。」


舞  :「(さすがに先生が話しつけてくれたかな。そうしないとうまくいかないもんね。)」


調理員:「授業で給食費未納問題に取り組んでいるんですってね。それで、保護者と児童が給食調理を実体験して、みんなに給食室の実体を紹介することで関心も持っていただくという考えすばらしいです。」


舞  :「え? ええ」


調理員:「さらに我々調理員の仕事の大変さも知っていただき、その上で質の向上を図るためにアドバイスいただけるんですよね。この仕事は結構肉体的にきついです。さらに量が多いですからどうしても大雑把になってしまいます。でも、子供たちにおいしいものを食べてもらうというのはいつも心がけています。私たちも子供たちの笑顔が一番ですから。今日は楽しみです。」


冬子 :「宜しくお願いします。」


舞  :「は、はい。宜しくお願いします。」


何か違うけど。まあ、いいか。舞はそう思った。


実際に作り始めるとその量の多さにびっくりした。私は大根やにんじんをひたすら切っていった。冬ちゃんはさっきの調理員の横について、いろいろ気づいた点をアドバイスしたり、「こうしたらどうでしょう」と自分でやって見せたりしていた。調理員の人たちも、さすがプロで冬ちゃんの話を聞いてその実力を見抜いたようだ。素直に従っている。


そうこうしているうちにだんだんといい匂いがし始めてきた。もうすぐ給食ができそうだ。


--------------------------------


一方、教室ではポッチが積極的に動いていた。


ポッチ:「ひかるちゃん、ちょっと相談があるんだけど。」


ひかる:「なあに? 私でできることだったら。」


ポッチ:「実は舞ちゃんのことなんだけど。」


ひかるの顔色が曇った。


ひかる:「舞ちゃんも先生を困らせてしょうがないわよね。あの給食のどこが我慢できないほどまずいんだか。それで、給食室に親と一緒に乗り込むなんてどうかしてるわ。クラス委員のくせに。」


ポッチ:「実は、それ誤解なんだ。あれは給食費未納問題解決のための作戦なの。」


ポッチは事情を話した。といってもその事情は詩音とポッチででっち上げたシナリオではあったが。


ひかる:「そうだったんだ。それならちゃんと言ってくれればいいのに。」


ぽっち:「うん、舞ちゃんも結構言葉足らないところあるからね。それで、お願いなんだけど、クラスのみんなも結構誤解してると思うんだ。そこで、みんなに真実を教えてあげて欲しいんだ。私が言えばいいんだけど、私だとみんな信じてくれないかもしれないから。でも、クラスで人望のあるひかるちゃんの話ならみんな聞いてくれると思う。」


ひかる:「なんだ、そんなこと? いいわよ。協力する。」


ポッチ:「ありがとう、ひかるちゃん。助かる~」


ひかるは早速仲のいい子たちのグループに向かっていった。


ポッチ:「さてと、ひとり陥落と。」


次の時間は社会だった。社会貢献の話だった。


先生 :「じゃあ、社会貢献とかボランティアについてみんなに意見を聞いてみましょう。自分で社会貢献をしたとか、あるいはボランティアを受けて助かったとかそんな体験のある人発表していただけませんか?」


ポッチ:「はい!」


先生 :「あら、今日は積極的ね。じゃあ、丸山さん。」


ぽっち:「はい、実は知ってる人も多いと思いますが、私はず~っと、病気で入院していました。学校生活の半分くらいです。それこそ、生きて病院を出れるかどうかわからない重い病気です。毎日が不安の中ですごしてました。」


みな、ある程度美鈴の病気を知っている。だから、この話をすると真剣に話を聞きだす。


ポッチ:「でも、そんな中で、病院に入院している子供たちに本を読んだり紙芝居をしたり、工作をして楽しませてくれるボランティア集団がいたんです。私はそのボランティアをしてくれる人たちにどれだけ助けられたかわかりません。病魔との戦いにくじけそうな私をなんども助けてくれました。そんな中の一人にいたのが楠木さんです。」


一同 :「おお~」


ぽっち:「彼女は毎週のように通ってみんなに元気をくれてたんです。それは、私が一時退院してからも続けてました。決して私が入院してたから行っていたわけではありません。彼女は病気の子供たちを励ますことが自分ができることだからと言ってもくもくと頑張ったんです。」



ポッチ:「その楠木さんですが、今、新たな問題に取り組んでいます。給食費未納問題です。給食費未納問題は色々な理由があると思いますが、一つは我々の問題に対する無関心さがあると思います。それで、彼女は実際に給食室で調理員の人たちと一緒に今日の給食を作っています。調理員さんの給料は給食費からでています。でも、給食費が集まらなければ調理員さんの給料は払えません。だから、彼女は自分でできることはなんだろうと考え、一緒に働いて、その話をして、みんなに関心を持ってもらおうと今日頑張っています。もし、今日の給食を食べておいしいと感じたら、是非みなさん家で話してみてください。そして、わたしはこうやってもくもくとボランティア活動を行っている楠木さんの友達であることを誇りに思います。」


教室から拍手が沸き起こった。何人かの女の子は泣いている。


先生 :「いや、楠木さんは単に給食がまずいから文句をつけただけで...」


ひかる:「先生! それは誤解です! 楠木さんがそんな私利私欲で動くわけないじゃないですか。いつもクラス委員でみんなのために頑張ってるんです。そんなこというとかわいそうです。普段、あんなに大人しい丸山さんが熱弁を奮うんですからこれが本当の理由です。」


先生 :「確かに、そういわれてみればそうかもしれませんね。先生、誤解してたかもしれません。」


ポッチ:「(二人陥落っと)」


3時間目と4時間目の間の短い休み時間のあいだポッチは校長室の前をウロウロしていた。遠くに校長先生を見つけると、さも、ボーっと考え事しているように歩きはじめる。


ポッチ:「キャッ」


危うくぶつかりそうになりポッチが声を上げる。


校長 :「大丈夫かい、ボーっと廊下を歩いていると危ないよ。」


ポッチ:「すいません、まだ学校に良く慣れていないもので。それに給食の匂いがいつもと違っておいしそうに思えたんでつい考え事してました。」


校長 :「ああ、君は確か丸山さんだね。病気のほうはもう大丈夫かい?」


ポッチ:「おかげさまで、すっかり良くなりました。そういえば今日の給食の話校長先生はご存知ですか?」


校長 :「ああ、市の教育委員会から連絡があった。なんでも、給食費未納問題のための活動とか。」


ポッチ:「ええ、あれ、うちの担任の先生の発案なんです。こういうものは関心をもつことが一番なんだって。さすがですよね。」


校長 :「ほう、あの先生の考えか。なるほど。今日の給食は楽しみだな。」


ポッチ:「それじゃ、授業が始るので失礼します。」


校長 :「はい、身体に気をつけ頑張るんだよ。」


校長は校長室へと入っていく


ポッチ:「3人陥落と。これでボトムアップは完了ね。トップダウンのほうも校長先生が知ってるところをみると、詩音の工作はうまく行ってるみたいね。」


---------------------------------


4時間目が終わり給食の時間となった。舞も教室に戻ってきた。

冬子はまだ、給食室でお手伝いしている。


教室に入るとみんなの目が舞に集まった。


舞  :「え? みんなどうしたの?」


ひかる:「舞ちゃん、私誤解してた。給食費未納問題に取り組むために頑張ってたんですね。もっと早く言ってくれれば協力したのに。」


舞は首をひねった。

なんかいい方向にみんな誤解してるんだけどどうして?


給食当番が準備を始めて、みんなも班分けしてそれぞれの席につく。


ポッチ:「どうだった?」


舞  :「う~ん、思ってたより大変だった。でも、質の改善に関して工夫する点はいっぱいあったわ。結構収穫あった。」


ポッチ:「それじゃあ、ちょっとは期待できる?」


舞  :「美鈴、冬ちゃんがうちで作るレベルを期待しちゃダメだよ。そこまでは無理だった。」


ポッチ:「そうなんだ~」


準備が整い、給食当番が挨拶をする。


当番 :「いただきます。」


みんな:「いただきます。」


突然、男の子が叫び声を出す。


男子A:「なんだ!この給食!」


男子B:「うめ~。信じられないくらいうめ~。」


教室が騒然とし始める。


ポッチも箸をつけおかずを口に持っていく。そして、突然立ち上がり、箸を落とす。


ポッチ:「何よ!この給食! 本当に人間が作ったの?」


舞  :「なに、美鈴びっくりしてるのよ。さっきも言ったように給食ではこれが限界。なんとか我慢できるレベルね。」


ポッチ:「なに? ってことは普段これ以上のもの食べてるってこと?」


舞  :「何言ってるのよ。美鈴もうちに来てしょっちゅう食べてるじゃない。いまさら何をおどろいているの?」


ポッチ:「詩音がいうわけだ~。幸せのバランスが取れていないって。舞ちゃんの立場と全部交換してもいいって言うのはこれが原因なんだ~」


舞  :「何言ってるのよ。今日の美鈴変だよ。」


ポッチ:「ねえ、舞ちゃん、夕飯とかうちで食べずに外食したことある?」


舞  :「あるわけないじゃない。旅行とかだとしょうがないけど。わざわざ高いお金払ってまずいもの食べにいかないわ。」


ポッチ:「か~、やっぱり。」


舞  :「そんなこと、美鈴知ってるじゃない。なんで今更聞くの?」


舞がじ~っとポッチの顔を見る。


舞  :「あ~! ポッチ!!」


ポッチ:「し~。声が大きい」


だが教室中喧騒状態でだれにも気づかれていない。


舞  :「何しに来たのよ!」


ポッチ:「あんたが心配だからでしょ!」


舞  :「心配しなくても、ちゃんと給食できたでしょ。」


ポッチ:「そんなことは心配してない。もう、詳しくは休み時間に話すから。」



そんな中、先生も教室の喧騒状態を注意するわけでなく、呆然と給食を食べていた。


先生 :「材料は同じなんだよね。なんでこんなに味が違うの?」


普段ならこんなに騒いでいたら隣のクラスから文句がきそうだが、今、学校中のどのクラスもおなじ状態でそれどころの騒ぎではなかった。


みんなでご馳走様をいったところで、先生が校長先生に呼び出されて教室を出て行った。


舞はポッチに詰め寄ろうとしたがクラスの女の子の質問攻めにあってそれどころではなかった。


女子A:「病院のボランティアって何やるの?」


女子B:「給食室ってどんな仕事だった?」


女子C:「どうしたらこんなおいしい給食作れるの?」


舞はぐったりしながらも一つ一つ答えていった。


ポッチにも人だかりができていた。しかし、こっちは質問攻めでなく手品とかポッチ人形を見せていたためだが。


休み時間も終わり掃除の時間になると今度は舞が職員室に呼び出された。


担任 :「本当は、今日の給食がどうであれ、この要望書は校長先生に出すつもりはありませんでした。でも、すでに校長先生もご存知でしたし、やり方はどうであれ、給食費未納問題の関心惹起というのはわかりました。要望書は校長先生が受理し、市の教育委員会に送られました。今度から、ちゃんと本当の目的を話してください。そうしたら、最初から協力しましょう。」


舞  :「はあ。ありがとうございます。」


いつのまにか給食の味の問題が給食費未納問題に摩り替わってる。


担任 :「楠木さんはいいお友達を持ちましたね。」


舞  :「ポッチ・・・じゃなくて、美鈴が何かやったんですか?」


担任 :「授業で楠木さんのボランティアの話をしてくれました。とても感動的な話でした。」


舞  :「はあ。」


担任 :「それと、お母様にはお礼をいっておいてください。今日の給食はとてもおいしかったです。」


舞  :「工夫すれば、同じ材料でもおいしくできるんです。」


担任 :「それは良くわかりました。実際に体験できました。でも、それはお母様がとても料理が上手なのであって、いくら給食調理員でもあそこまでは無理です。先ほど調理員の方が見えられて、『なぜレストランをひらかないのか?』っておっしゃってました。」


舞  :「まあ、母の夢は別にありますし。それに料理は趣味の域ですから。」


担任 :「そうなんですか。それは残念です。レストランが開かれればその常連客になろうと思ったんですが。」


舞  :「ありがとうございます。母にも伝えておきます。」


職員室から戻り、5時間目と6時間目が始った。それぞれ、算数と国語でテストだった。


やっと放課後になり、舞はポッチを捕まえた。帰り道話をした。今日はどういうことなのかと。


ポッチ:「あのね、舞ちゃんは学校との戦いの始め方は知ってても、収め方は知らないでしょ。」


舞  :「え?」


ポッチ:「だって、成功したらどうするつもりだった? 先生とか調理員の人の立場とか。面目丸つぶれだよ。みんなを敵にまわすよ。」


舞  :「考えてなかった。失敗しないようにするにはどうするかばかり考えていた。」


ポッチ:「でしょう。だから私と詩音が心配したのよ。舞ちゃん学校で孤立しちゃうんじゃないかって。」


舞  :「そっか。バカだった。」


給食室の人も嫌な思いをするだろうし、先生からもにらまれ、クラスからも嫌われる。そういうことだったんだ。


ポッチ:「それで、問題をすりかえたの。万人受けする問題にね。でも、内容は一緒でしょ。給食の味の改善要望書を校長先生に渡すことには違いない。でも、こうすれば、みんないい気持ちで仕事ができるでしょ。」


素直にすごいと思った。ポッチはそこまで考えちゃうんだ。


舞  :「ポッチ、ありがとう。今回はポッチ大活躍だったね。ポッチがいなかったらと思うとぞっとする。」


ポッチ:「ありがとう。でも、ちょっと誤解があるわ。私はクラスの子と担任の先生をうまく誘導しただけ。でも、給食室もみんな好意的だったでしょ。」


舞  :「うん、意外と好意的だった。というかすでに話が伝わっていた。」


ポッチ:「さらには校長先生にも伝わっていたよね。」


舞  :「うん。そういえばそうだった。」


ポッチ:「そっちは詩音がやってるの。」


舞  :「え?」


ポッチ:「詩音がうまく大人たちを使って、土日のうちに根回ししてるの。だからすんなりいったんだよ。」


舞  :「知らなかった。そうだったんだ。みんなに迷惑かけたんだ。」


ポッチ:「あはは、迷惑なんて思ってない、ない。 いつものいたずらの企画みたいなもの。」


舞  :「ごめんね。」


ポッチ:「あやまる必要なんて全然ない。今日は楽しめたし、給食おいしかったし。」


舞  :「ねえ、じゃあ、お礼に今日、うちでご飯食べてかない?」


ポッチ:「え? すごく魅力的な提案。 でも、向こうで後片付けが待ってるから、今日は帰らないと。」


舞  :「後片付け?」


ポッチ:「うん、じゃあね」


そういってポッチは帰って行った。


舞は複雑な気持ちで家路についた。なんか後先見ないで突っ走った。まるっきり子供だ。なんで、詩音とポッチは先の先まで考えられるんだろう。うらやましく思った。


舞  :「私もまだまだよね。」


いつになったらあの二人に追いつけるのか。そう考える舞だった。


--------------------------------


ポッチ:「ただいま」


響子 :「ポッチお帰り。」


教室には4人が待っていた。子供一人に大人3人だった。


詩音 :「どうだった?」


ポッチ:「うん、ばっちり。だれも悪者にならなくて、要望書も手渡せてハッピーエンド。」


詩音 :「よかった。」


響子 :「それじゃ、本題のほうに入りましょうか。志穂さんいい?」


志穂 :「ああ、話してくれ。」


今回は志穂さんを巻き込んだプロジェクト企画となったこともあり、今日参加してもらってる。


響子 :「向こうの『喫茶店エルベ』の力添えもあって、急な申し込みにもかかわらず、時間をさいていただけたわ。さすがに向こうはびっくりしてたけどね。」


志穂 :「それで、信じてくれたか?」


響子 :「本心はどうかわからないけど、和恵をみたらある程度は信じてくれたみたい。」


和恵 :「でも、私もびっくりしました。すごい人でした。」


志穂 :「ああ、私もゆくゆくはと考えているが、まさかいきなりとわな。」


響子 :「官僚ではなくていきなりって言うのは想定外だった。」


志穂 :「それで、考えてくれるっていったか?」


和恵 :「はい、そうおっしゃってました。」


響子 :「でも、専門が厚生労働省だからね~。どこまで出来るか。」


志穂 :「確かに、それが気がかりだ。文科省ならこっちみたいにエジソンプロジェクトみたいなので保護できるが。厚労省だと畑違いだ。」


和恵 :「ちょっと、心配です。」


志穂 :「まあ、我々としては後は任せるしかないな」


--------------------------------


南  :「志穂先生、変な圧力団体の陳情ではなかったですよね。」


大橋 :「ああ、ちょっとびっくりしたがな。高校の友人達だった。」


南  :「良かったです。後援会のほうからの強い要請だったんで断れませんでした。申し訳ありません。」


大橋 :「いや、でも、なかなか面白いことを教えてもらった。」


南  :「調べてみましたがすごいですよ。舞ちゃん。」


大橋 :「小学3年生ながら、ほぼ一発で病気を診断してしまうのか。」


南  :「すごいですね。相手の表情と面談でほぼわかるみたいです。もちろん、検査結果とかからもわかっちゃうようです。」


大橋 :「薬の出し具合で、病気の種類と進行状況がわかってしまうんだろ。」


南  :「小学校1年生のときから院内学級のボランティアを行いつつ師とあおぐ先生から薫陶を受けていたようです。」


大橋 :「あきれたことに、その病院ではその子に先生がセカンドオピニオンを求めるんだろ。」


南  :「はい。先生達から信頼を得ているようです。ただ、2例だけ先生と違う診断を下したようです。」


大橋 :「そりゃ、しょうがないだろう。小学生だ。間違うこともある。」


南  :「いえ、間違っていたのは先生のほうです。舞ちゃんの診断のほうが合っていました。」


大橋 :「はあ。それがどっかの田舎病院だったら納得行くが、日本でも有数な病院だよな。」


南  :「ええ、ですので、誤診した先生がダメなのでなく、その子が優秀なんです。先ほどの2例は難病指定されているわかり難い例なんです。」


大橋 :「さすがにこれはうまく導くべきだな。まじめに衆議院で検討を進める事としよう。」


南  :「わかりました。何をどううするかは我々のほうで検討してみます。」


大橋 :「ああ。宜しく頼む。」


そう言って若い代議士は「ふぅ」とため息を吐いた。


...あきら、お前の娘とんでもない娘だぞ...


続く



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