9-4.コンカッション ~イマジナリーフレンド編~
この物語にでてくる薬名、治療法、一部の病名、一部の物理法則はフィクションです。
次の日、学校に行ったが深沢は休みだった。昨日の話を聞きたかったがしょうがない。
昼休みになり、田村たちと学食に行こうとした時だった。
藤原 :「相川君いる?」
藤原さんが教室の入口に立っている。そして、女の子に僕の席の場所を教えてもらうと、つかつかと寄ってきた。
藤原 :「話があるの。ちょっと付き合ってくれない。」
田村 :「相川、藤原さんにまで手を出したのか?!」
藤原 :「ばーか。ちょっと相川君、借りるわね」
僕たちは空き教室に入って行った。そして、藤原さんは窓枠に腰かけて話を始めた。
藤原 :「私はあなたたちが付き合うことに反対してない。むしろ賛成している。でも、3週間待ってほしい。3週間会わないで。」
修 :「どうして?!」
藤原 :「彼女が情緒不安定だからよ。この前もパニック障害を寮で起こしたの。このまま放置しておけないわ」
修 :「その3週間の間に麻奈を消すのか」
藤原 :「おおげさにいえばそうなるわね。でもそれは大したことじゃないわ。あなたは4月から今までどおり深沢麻紀と付き合うだけ。見た目は何も変わらない。それに麻紀の方も魅力的よ」
修 :「断る。そんなことできるわけない」
そう言って教室を僕は出ていく。
藤原 :「ちょっと待って」
そういう藤原を残して。
学校が終わり、寮に帰る。
女子寮に寄ったが当然門前払いを受けた。麻奈にメールを送っても返事はない。
もんもんとしながら夜を迎える。
一体、麻奈が何をしたっていうんだ。なんで付き合っちゃいけないんだ。
次の日、麻奈が学校に来た。でも少し顔色が悪い。
修 :「大丈夫か」
麻奈 :「大丈夫。でも、今日、お弁当作ってこれなかった」
修 :「そんなこと、気にするな」
麻奈 :「ごめんなさい」
修 :「謝ることないよ。それより、あの二人にまた何か言われたのか?」
麻奈はこくりとうなずく。
修 :「大丈夫だ。僕が守る」
麻奈 :「でも、やっぱり私はいてはいけない存在」
修 :「そんなことないって」
麻奈 :「うん」
その後数日も麻奈は浮かれない顔をして登校してきた。やはりお弁当は作れず学食で二人で食べた。
僕は麻奈が心配だった。
本当は寮で一緒にいたかったがそれは許されない。寮では一人で閉じこもっているらしかった。
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深沢麻奈は女子寮で一人閉じこもり、机の前に座っていた。机の上には薬瓶が置かれている。藤原千秋からもらったものだった。
麻奈 :「千秋、あなたまで」
そういうと薬瓶をあけて中身を出す。そこには2種類の薬が入っていた。数の多い黄色の薬と数の少ない白い薬。数の多い方は良く見る薬だった。しかし、少ない白い薬は。
深沢麻奈は白い薬を一つつかみ、なめてみる。
麻奈 :「メラクトニン…」
そして、白い薬だけを選び、一気にあおった。
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夜、僕に突然携帯に電話がかかってきた。知らない電話番号だった。
修 :「はい、相川です」
藤原 :「相川君? 藤原です」
修 :「藤原さん、どうしたの? こんな夜中に突然」
藤原 :「相川君、落ち着いて聞いてね。麻奈が自殺を図ったわ」
修 :「え?!」
僕は急いで運び込まれた花の丘病院に向かった。
担任 :「睡眠薬を飲んだのよ。幸いにして、気付くのが早くて命に別条はないってことだけど」
修 :「びっくりした。どうして自殺なんか」
僕は近くのソファーに座った。病院のロビーには電話をくれた藤原さんのほかに担任と宮島さんが既に来ていた。
宮島 :「びっくりしたじゃないわよ! あんたが現れなければこんなことにならなかったんじゃない! お願いだからあの子に深入りしないでってあんなに頼んだんじゃない! これじゃ麻紀に合わせる顔がないわ!」
藤原 :「理恵。おちついて。相川君が悪いわけじゃない」
宮島 :「でも」
藤原 :「そうね。やっぱリ悪いわね。私は3週間だけ我慢して会わないでってお願いしたのに。それさえ守ってくれたら、こんなことにもならなかった。私は別にあなたたちが付き合うことには反対はしないのに」
宮島 :「私は反対よ。」
藤原 :「そうじゃなくて、今は大事な時期だからそっとしておいてほしいってことがいいたいのよ」
修 :「理由を教えてほしい」
担任 :「それは…」
藤原 :「だめよ、先生。いっちゃ。プライバシーの問題よ」
担任 :「そうでしたね」
修 :「僕は関係者だ。話してくれてもいいだろう」
藤原 :「特別な関係者だからこそ本人から聞いた方がいいわ。それに今は時期じゃない。もし、本人がいいって言ったら、その時私から話してあげる」
次の日、病院に行ったが病室の前に宮島さんが座っていて、頑として僕を入れなかった。
仕方なしにアメフト部に行った。
田村 :「おい、お前大丈夫か? 顔色悪いぞ?」
修 :「大丈夫だ。なんでもない」
国立 :「じゃあ、次はキックオフリターンの練習だ。みんな相川をきちんと止めろよ」
僕は飛んできたボールを受け取り相手陣地に走りこむ。
修 :「(いったいなんで麻奈は自殺なんて。)」
ドスン。一瞬で視開に青空が広がる。頭と首を思いっきり地面にぶつける。
考え事をしながら走ったのがいけなかった。普段なら簡単によけられるタックルをまともに食らってしまった。
田村 :「おい、修、しっかりしろ、大丈夫か? 修! だれか保健の先生を呼んできてくれ!」
意識が失われていく。
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医師 :「大丈夫だと思いますが明日、もう一度検査しましょう。とりあえず、今日は入院ですね。それと2週間はアメフトは禁止です。コンカッションを軽く見てはだめですよ」
修 :「はい」
別に大したことはないと思うが、コンカッション(脳震盪)を起こした場合は用心に越したことがない。
医師 :「それと、コンカッションを起こした前後の記憶があいまいになったり、なくなってるかもしれませんが、それはコンカッションが原因の一時的な症状です。そのうちゆっくり思い出すでしょうから、あせらずゆっくり養生しましょう」
そういって、医師が部屋を出て行く。
田村 :「大したことはなさそうだ。よかった。でも、春休みはアメフト禁止だな。まあ、試合もないし、ゆっくり休んだほうがいいよ」
田村たちも帰って行った。
一人、病室で取り残されてると麻奈が入ってきた。
麻奈 :「大丈夫?」
修 :「麻奈?! もう大丈夫なのか?!」
麻奈 :「うん、今日退院した」
麻奈と入れ替わりになってしまった
修 :「全く、心配かけないでくれよ」
麻奈は黙ってる。
修 :「どうした」
麻奈 :「やっぱり、私はこの世界にいちゃいけない。相川さんにも迷惑をかける。みんなの言ったとおり。ごめんなさい」
修 :「麻奈! そんなことない。この世界なんかにいちゃいけないなんてことはない。みんながどう言おうと、僕にとって麻奈がいないのは耐えられない」
麻奈 :「でも、私がいると相川さんを苦しめる。今回のように。」
修 :「なにをいってるんだ」
麻奈 :「さよなら」
修 :「おい!」
その時、女の子が入ってきた。麻奈と同じ顔をした女の子。麻紀だ。
麻奈 :「麻紀?」
麻紀 :「迎えに来たわ。一緒にいきましょう」
修 :「ちょっとまて、どういうことだ?!」
麻紀 :「修君、麻奈はこの世界にいてはだめなの。彼女のこのところの行動知ってるでしょう。 パニック障害、自殺未遂。恋人の修君でも、抑えられなかった。これ以上、麻奈がいるとお互い傷つくだけ。だから、これでおしまい」
そう言って二人は病室を出て行った。
修 :「おい!」
僕は起き上がろうとしたが、コンカッションの影響で頭が割れるように痛い。それで、起き上がることができず、二人を見送るしかなかった。
修 :「麻奈!」
声をかけたが二人は帰ってこない
修 :「クソ! どういうことだ」
割れるように痛い頭を抱えて僕は呻く。
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次の日、検査が終わり、特に問題ないことがわかり退院した。その足で寮に向かう。麻奈に昨日のことを聞くためだ。昨日あれから、携帯にメールや電話をしても全然つながらないし、返事も来ない。こうなったら本人に聞くしかない。
しかし。
寮母 :「深沢さん? 昨日退寮しましたよ。あんな事件を起こしたらここにはいづらかったんでしょうね」
修 :「どこに行ったんですか?」
寮母 :「さあ?」
修 :「彼女の自宅とか知りませんか?」
寮母 :「ごめんなさい。わたしはわからないわ」
僕は職員室に向かい担任に聞いてみた。
担任 :「深沢の自宅の住所? そんなの教えられないわ。個人情報保護法。それくらい知ってるでしょう」
修 :「でも、昨日からいなくなったんです。心配なんです」
担任 :「寮を出て行ったそうね。まあ、あんな事件を起こしたからね。もっとも、あの事件を知ってるのは、ほんの数人しか知らない。気にしなくてもいいのに。」
修 :「なんとか教えてもらえないでしょうか?」
担任 :「まあ、相川君も関係者だから。本当はいけないけど特別に教えてあげるわ」
そう言って、担任は、メモに住所を書いて渡してくれた。そこに書かれているのは隣の県の住所だった。
僕は電車に乗ってその街にいった。知らない街だった。交番に聞いてその住所を尋ねてみる。古いアパートがそこにはあった。メモに記載されている部屋を探す。
修 :「あった。ここだ」
しかし、その部屋の表札は別の人だった。
女性 :「あの、家にご用でしょうか?」
背後から声をかけられる。
修 :「あの、深沢さんの家をご存じないでしょうか?」
女性 :「深沢? このアパートにはそんな人住んでないね」
修 :「え? 深沢麻奈という子なんですが」
となりからも人が出てくる。
隣の人:「どうしたんだい? 押し売りかい?」
女性 :「いえ、なんでも、深沢って子を探してるって」
隣の人:「深沢ねえ。深沢、深沢。思い出した。深沢麻紀ちゃんだね」
修 :「多分」
なんで、麻紀なんだろう。僕はそう思ったが、麻奈への糸口はつかめた。
隣の人:「麻紀ちゃんなら引っ越したよ。もう、10年も前に」
修 :「え?」
僕はその隣の人に案内されて大家さんの家に行った。大家さんならその当時のことを知ってるかもということだった。
大家 :「麻紀ちゃんね。不憫な子だった。両親にかまってもらえず、満足にご飯ももらえなかったんじゃないかな。幼稚園にも行かせてもらえないで、友達もいなかった。かわいそうに」
修 :「それで、その子はどこへ引っ越したんですか?」
大家 :「さあ? お父さんが家を出て行って、奥さんもそれがもとで病気になり入院。そして、一人残された麻紀ちゃんは親戚に引き取られていったよ。たしか、隣の県じゃなかったかしら。でも、昔のことでよく覚えていないわ」
結局、麻奈への糸口はそこで切れた。僕の前から麻奈という存在が消えた。
つづく




