第64話 連載再開?そのつもりですけど?
ひっひっふー。
(´・ω・)お久しぶりでございまする。何気に時間がなかったのですよ。会社で部署変わったりいきなり役員になったりなんだのがあったので。だいたい会社のせい
「まさかこんな事になるとはねぇ……」
「ねーちんのせいじゃねーよ。て言うか予想できる奴がいたら、そいつ神様だわ」
「まあ神様はともかく、使徒の人?は確かに言うほど万能感は無かったけどー」
現在シア達は、やることをやり終えて、モノイコス王国への帰路についていた。
他の皆は魔法の大売り出しが在庫一掃の状態で回復もそこそこに殲滅祝いへと突入したため体力魔力精神力がほぼ総ざらえ状態に陥りほぼ全員が早々に轟沈、今頃はロビーで雑魚寝している者が大半で、魔法職以外の者達だけが杯を傾けている程度である。
シアはというと、ある程度酒盛りを楽しんだ後に、それまでギルドハウスの舵を任せていた呉羽と入れ替わりで館長席につき、寛ぎついでに空の航海を堪能していたのである。
そこに熊子が暇つぶしにやって来ているのであるが、その熊子がお供に連れている、ホビットである彼女を下回るサイズの背丈で、おまけに等身が二等身半程しかない、人としてそれはどうなの?リアルサイズでそれだとデフォルメされたらどうなるわけ?的な幼女が、シアの憂いの原因であった。
【をー?】
「あー、あんたは気楽そうねーって言うか、この子脳内に直接っ!」
【をー!】
「ファ○チキください……だと!?」
「言ってない。言ってないからね、ねーちん」
熊子が手を引いてきた一種異様な幼女……と言うか妖女は、こわっぱ五人組のロボットアニメの敵戦闘員と同名なフィギュア的な体型をしていた。
青いほどに真っ白な肌に魅惑のぷにぷにぼでぃ、くりくりとしたつぶらなまんまるおめめには仄かに輝く青い光を宿し、その頭髪は半透明のゼリーのような質感で、なおかつ紐程の太さを持ち時折様々な色の光を発しては様々な色合いに変化していたりする。
「ねーちんさー、実際のところコレどうすんの?」
「どーするもこーするも……任されたって言うか丸投げされたされちゃったし」
館長席で頬杖を付きながら、シアは先程の顛末を思い返していた。
★
『別に「限界」じゃないけど……“押すねッ!”』
光の奔流と、遅れて響く音を超える速度の衝撃波、そしてその後に続いた音の洪水。
純粋な魔力の爆発による白光が押し寄せ、続く爆発により生じた衝撃波が周囲を覆い尽くさんと広がったのち、しばらくの間をおいて耳をつんざくような激しさの轟音が響き渡ったのである。
「合格ですね。いえ、むしろこういう解があったのかと此方が頭を垂れたくなる思いです」
どれだけ続くのか、と思われていた光と音の大合唱はしかし、そのような状況で聞こえるはずのない、静かな声がシアの耳に届くと同時に、まるで霧散したかのように消えてなくなっていた。
果たして消え去ったのは周囲の音と光か、シア自身か。先程まで居たギルドハウスとは全く違う、視界全てが白で埋め尽くされた―――光に満ちた場所―――そうとしか言えない、何もない空間に居た。
「……は?」
見渡せど、あたりは何もない白い世界。
いったい何が?もしや爆風爆圧で死んだとかで死後の世界?などと首を傾げていたところに、先ほどの声が背後から聞こえてきた。
「どうも、ご無沙汰しております。いつもニコニコ貴方のお側に這いよるキモヲタ、女神の御使いネフシュタンでっす♪」
振り向いたシアの目の前で、この世界へと彼女を導いた一因であるところの、元の世界での元同僚でおまけに実は女神の御使いでした等という正体を持っていた残念イケメンがにっこりと笑みを浮かべて何やら変なポーズを取っていたのである。
「しねばいいのに」
「いきなり酷くないですか?私これでも女神の御使いですよ?」
「女神様に恥ずかしく無い行動をとってから言ってほしいわね、そういう言葉は」
「結構女神様もお嫌いじゃないみたいなんですけど」
「汚染すんなよぉー、女神様をよ~」
懲りない態度で彼女に対してお巫山戯のように相対するネフシュタンに対して、シアはがっくりと肩を落とした。
「で?私になんの用?今絶賛クライマックスタイム中だったんですけど」
「ああ、大丈夫です。ケリがついたのを見計らっての推参ですから」
「見参と言わない当たりでまあ良いんですけどね……って、ケリがついたってアレでおしまい?ほんとに?二段構えとか三段構えとかよくあるじゃない。一回死んでからが本番なやつとか」
良いんですけどねと言いつつ、あからさまな不機嫌を露わにしながらほんとに決着がついたのか?と言い募るシアに、ネフシュタンは平然とした態度で言葉を続けた。
「そういうのはあちらの世界でのRPGのボスぐらいのもんですよ……」
倒したと思った敵が異形化した上で能力増々で復活したり、巨大化したり影の親玉が出てきたり巨大な弟が出てきたりという展開が普通……と言うのもおかしいが、定石とも言える展開であったため、シアとしては倒した、倒せる、楽勝、と言った相手であっても常に予断を許さないと考えていた。
であるが、「その考えはおかしい」と目の前の神の使いから言われてしまったわけである。
「そも、命を2つ持ってて一回位は倒されても平気とか言い出す時点でおかしいですからね。どこかの異星人とかならまだしも」
「いやまあそう言われればそうだけど……でも死なずの王やら動く死体とか吸血鬼とか居るじゃない?死んでからが本気出した的な奴ら」
シアが上げた存在は、どれもが死んでいると認識されているにもかかわらず生きているかのごとく動きまわる者達ばかりである。
段取りを踏むか、きちんとした対策をした武器で戦わねば、殺そうにも死んでいるため中々に倒すのに骨が折れ、たとえ止めを刺してもそのうち甦るという面倒くさい相手であった。
「あれらの多くは生者であった時に得た死を、引き延ばしているにすぎません。中には確かに死を超越したように見える存在もおりはしますが……まあ、さほど気にする必要もないでしょうね、あなた達ならば」
「うん、まあそうだとは思う。不死だの不滅だのとか言ってもやりようは色々あるし」
その話は扠置くかのようなネフシュタンの口調に、シアは若干気になりつつも応え、内心で対不死者対策を幾つか考えながら相手の言葉を待った。
なお、シアの考える対不死者案は、色々とエグい。
例えば相手の四肢を関節部分で断ち切った上で、不死者の苦手とする魔法銀や聖別された銀などで作った容器にそれぞれを入れて封印、それを人跡未踏の地や海底にでもばら撒いてしまおうか、などと言うものだったり、同様の素材で檻なんぞを作ってそこに魔法や鍛冶スキルで耐熱やら耐久性やらなにやらを強化した上で収監し、活火山の火口にでも放り込んでしまえばずっと焼かれ続けるんじゃね?などという色々とアレな方法だったりする。
普通はそもそも不死者を相手にそんな事が出来るのかどうかをまず心配するのであるが、彼女にとっては然程気にするものではないようである。
「で、話は戻りますが。このタイミングで接触させてもらったのは、貴方の攻撃の余波で出来た空間の歪みが都合よく此方の、私どもの普段居る次元と繋がったので手間が省けてラッキーと思った次第でして。兎にも角にも彼の地にてあの魔神を打ち滅ぼしていただいた事、誠に感謝に絶えません。我が敬愛する慈愛の女神に成り代わり、お礼を申し上げます」
「はあ、あんま実感ないけど」
本来はモルダヴィア大砂漠を渡って来た、ありとあらゆるものを飲み込んで進み続ける超巨大スライムを始末しようとしていただけである。ソレを叩くために大技を繰り出したところに地の底から這い出てきたのが、ネフシュタンの言う魔神。元の世界に於いての、メソポタミアの風の魔神によく似た存在。
ソレを相手に一方的に魔法で焼いて、トドメのひと押しとばかりに停滞していた自身の攻撃魔法を発動した直後であったのだが、その結果も見ずにこの場に連れて来られて「討伐おめ」と言われても、シアとしては、敵を倒せたという実感がまるでないのは残念ながら当然と言わざるを得なかった。
「さて、それでですね。巨大スライム討伐に関しては、独神ギヌンガルプが使徒、カミラの鬼の方から前金と成功報酬を約束されているかと。それでですね、この度私が推参いたしましたのは、もうお分かりかと思いますが魔神討伐の一件に於いての報酬をお渡しさせていただきたく」
「え、巨大スライムと魔神、別個の話だったわけ?」
てっきり巨大スライムと合わせてのお話だと思っていたシアである。
魔獣の侵攻のおかわりが来たので受けた今回の総力戦であるが、実にタイミングよく地面の下から這い出てきた輩が居たために、その依頼には当然ソレの相手も含まれているのだと思っていたのである。
「はい、全くの別物です。そも、あの場所にアレが埋まっていたの自体は我々も存じておりましたが、目覚めるには早すぎました。少なくともあと数世紀単位は先に成るものとばかり」
「……はあ、要するに『スライムを討っててとんでもない物を見つけてしまった!どうしよう』ってところなわけね 」
「はい、あなた方は大変なモノまで討伐してしまいました。異世界の魔神です」
「……マジモンの魔神だったんかい」
にやりとして応えたネフシュタンに、シアは溜息とも付かないつぶやきを吐き出し開き直るかのように口を開いた。
「で?貰えるもんは貰っとくわ。何くれるのかしら?」
「取り敢えず、と言うのもなんなんですが……正直困っております。何しろ此方から出せる品の殆どは、もう既にお持ちでしょうし……」
はて?と首をかしげるシアであるが、ポンと手を打つと納得したように頷き、答えた。
「ゲーム時代のレアアイテムは大体がトコうちの天の磐船に揃ってるから、ってことね?」
「そーなんですよねー。ッて言うか、あなたが十二分にこの世界に馴染んだ上でお願いしようとしていた魔神退治をなんでほぼ初っ端で終わらせちゃうんですか?アレですかお約束フラグ殲滅大作戦でもやってるんですか!?」
「いや、そんなこと考えてるわけ無いじゃん、ただの成り行きだし。どっちかって言うと某最終幻想一作目で最初のボス倒したあと先に進もうとした途端にテーマソングが流れる的なアレじゃないの?」
「そんなクソ面倒なイベントやりませんよ。はぁ、まあいいです。成り行きであろうと出落ちであろうと倒してくださった事には変わりありませんし」
白い世界でシアの視界の正面に浮かぶネフシュタンは、その端正な面差しに嬉しそうな笑みを薄く浮かべつつも悩みが尽きないとでも言うように額にシワを寄せていた。
「んじゃ保留でいいんじゃないの?」
「まあそうなりますよねぇ……。そちらがソレでよろしいのなら、此方もその方向で調整させていただきますが」
「なんか問題でもあるの?」
「問題といいますが、神が人にお願い聞いてもらって即お返ししないとか、信心離れちゃうじゃないですか」
「……えらく現実的な理由だったわけで」
「現世利益追求が信者ゲットの最大要因ですから」
「ぶっちゃけんな」
「とまあ色々と言いたいことも言えましたし、取り敢えず今回の私からのご褒美は保留と言うことで。あ、あと厄介ネタがひとつ」
「え、まだあんの?」
「これはどちらかと言うと私どもも想定外な出来事です。と言うより寧ろあなたが引き起こした結果と言えるのでそちらの方は貴方にお任せということで」
「は?」
「まあ、あちらに戻ったら貴方の魔法で吹き飛んだ中心地点をよく探してみてくださいな。それでは」
「ちょっと?」
言うだけ言ってネフシュタンが手を振った直後、シアの視界は再び閃光に襲われた。
先のものとは違い、今度は激しい振動と轟音を伴って。
眩さに眩んだシアの目に映るのは、ネフシュタンに呼ばれる前の、先ほどまで自分が立っていた天の磐船の穂先と自身の発した魔法による爆発の残滓、そして轟音の跡とも言うべき耳鳴りのような残響音、そして……。
「やったか!?」
「くくく、これだけの攻撃、さしもの奴とて一溜まりもなかろう」
「死亡確認」
「勝ったッ!第二章完!」
「どうやらチリひとつ残さず消えたようだな。引き上げだ!」
敵生存フラグを乱立させている仲間たちの声であった。
「……なんで敵生存フラグ乱立させるかな。えーっと、呉羽聞こえる?余波が収まったら爆心地に近づいてくれる?異常がなかったらそのまま降りるわ。確認しなきゃだから」
『ええ、了解よ。気をつけてね』
わいのわいのと騒いでいる仲間たちを横目に、シアは天の磐船の舵をとっている呉羽に指示を出し、爆発の影響の薄れてきた地表を見渡した。
「……地平線の向こうまで広がってた大スライムまで消えてる、か」
徐々に近づき始めた爆心地のクレーターを見下ろし、シアは改めて装備を確認して降下に備えたのである。
「ま、危険なら危険だってあのバカ使徒も言ってただろうし、そんなに焦る程でもないか、な?」
まあ気は抜かないけどね、とそれだけは心のなかで呟きながらゆっくりと白み始めた風景に目を向けた。
☆
「まあ、見事にクレーターを形成していた爆心地のど真ん中に、犬神家状態で埋まってたわけですが、この子」
「いや、ねーちんがいきなり飛び降りてったのには驚いたわ、あの爆発の瞬間にそういう顛末があったって後で聞いた今でこそ理解できるけども」
【をーをーをーをっほをーをっほをっほ】
シアと熊子、二人が語らう館橋の空きスペースで、楽しげにゴリラのドラミングを真似たかのようなダンス?を踊っている奇妙な生き物がそこにいた。
「ちゅーかさ、アレが魔神と魔獣大侵攻の原因が混じって一つになったブツって誰が信じるよ」
「実際見てた私ですら信じたくなかったわ。ムダに高い鑑定スキルが憎い」
【を?】
「はいはいあんたは好きなようにしてなさい。まったく、どこの昭和の乙女さんなんだか」
【きゃー!】
「ねーちん……元の世界からずっと言われてたけど、ほんっと年齢詐称疑惑が怪しさ大爆発だよね」
「シアちゃんピーーーー歳。年齢詐称疑惑が浮上しつつも異世界で健気に生きる女」
「素敵よ―!お客さーん!!」
「あんたも大概じゃない」
【をー……?】
シアと熊子、二人のやりとりを見ながらひとり首を傾げる妖女であった。
「もうイヤっ!こんな生活!って言いながら入ってった方が良いのかしらねぇ」
「何の話ですか?」
「こっちの話しよ」
そんなある意味カオスな館橋の出入口で、ほろ酔い気分の呉羽がゲストである部外者二人を連れて、姿を見せていた。
('A`)以前のようにはいかないけれど、比較的時間が取れるようにはなったと思うのでこれから頑張る。