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MMORPG?知ってますけどなにか?  作者: でーぶ
異世界突入!?
16/83

第15話 豚呼ばわりですか?それは豚に失礼と言うものでしょう?

「ふん。絶対(アブソリュート)命令(ディレクション)の魔法が掛かったアイテムかよ。ふざけた話だ」

足元に転がる眼鏡型の魔法のアイテムを拾い上げながら、カレアシンは呟いた。

噂にたがわぬクソ野郎だ、と。


絶対命令の魔法。

レンズ型をしたアイテムに掛けられていることが多く、眼鏡や義眼、コンタクトレンズといった形状で、装備状態で狙った相手の目を見据えて発動させる事で、相手の意識を支配下に置くことが出来る。

真正面から見つめて使わねばならないため、相手に知られずにかける事が出来ない上に同じ相手に2度かける事が出来ないという不便な魔法だが、掛かってしまえば必ず命令に従ってしまうという外法である。

ゲームの頃は、ネタアイテム(コー○ギアス)扱いだったが、現実となるとやばい事この上ない。


「な、な、なんだそれ(光の翼)は!大体僕の魔法が効かないなんて、そんなはずが無い!」


カレアシンの目の前では、この陣幕の責任者である部隊指揮官殿が腰を抜かして座り込んでいた。


「お前の魔法だぁ?どう見てもこのアイテムのおかげだろうが」


拾い上げたそれを、カレアシンは握りつぶそうとして、思いとどまった。

これはこれで、いい証拠かな、と。

それに、彼の周囲では、一応は責任者である目の前の豚を救うためか、取りあえず自分自身の体面を保つためか、兵や従者らが剣に手をかけいつでも抜けるようにしている。

抜かれたところで別にこれといって状況は変わらないが。

何故なら、剣があってもなくても、この鎧の防御を貫ける攻撃が出来るものなど、この陣地にはいないとわかっているからだ。

無手に見えるカレアシンの方も、目に見える武装こそ外に預けているが、それとはわからない武装は持ったままなので、お互い様と言う所かもしれない。

鎧の右手首の内側部分には、魔力光の刃が出る、魔力光オプティック・マギスセイバーが仕込まれているし、尻尾を包む蛇腹装甲はそれだけで十分に鈍器だ。

それに左腕の六角形のソードストッパーの形状をした部分は、背後に伸びている光の翼を収束して巨大な光の楯にすることも出来る。

そもそも全身これ武装といった感じの竜人であるし、本人は武器があろうとなかろうと、手を出すつもりも出させるつもりも無かったが。

それに、傍目にも馬鹿魔力を内包しているのがわかる、いかにもな魔法鎧を着ていれば、手を出すのも憚られるだろうし、出したとしても常人の膂力でなされた攻撃では、傷一つつかないだろう。

手違いがあっても自分は怪我をすることはないし、何かあるとすれば、それはすなわち相手が無駄なことを仕掛けてきたときだ。

それゆえの鎧だったのだが、見事に役に立ってしまった。

魔法攻撃や物理攻撃に反応して、自動的に防御機能が展開される魔法鎧で、カレアシンご自慢の逸品である。

物理ダメージの有質量攻撃は魔法強化された装甲が圧倒的強度で身を守り、魔法による攻撃は、それが如何なる物であってもその内封された高魔力により、発動自体を阻害するのだ。

部隊指揮官ヴォルフラム・フォン・レフィヘルトは、使者の精神を支配して後、上空の岩城へ戻らせ、内部からの手引を企て、侵入工作及び大型魔法装置特有の、主人認識の書き換えを目論んだのである、が。

そもそも頼りにしていた魔法のアイテムが、起動と同時に攻撃と認識され魔法鎧が発動。

大魔力の励起により周辺魔力が枯渇、魔法アイテムは魔力吸収が阻害され(ガス欠により)無力化という自体に相成ったのである。

このマギウス・ドライブと呼ばれる魔法機関が装着された鎧は、魔法戦闘の際に味方の魔法まで阻害するため集団戦には向かないが、ソロ狩りの時には重宝していたカレアシンである。

鎧の背中、翼を覆う様に背負われていた部分が起き上がり、天を突いた状態で金色の光を放っているまま、カレアシンは一歩踏み出し、片膝を付いて尻餅をついたままの公子を睨みつけた。


「さて坊主。この落とし前はどうつけてくれるんだ?」


カレアシンは、面倒な事を仕出かしてくれるもんだと、ある意味感心しながら相手に詰め寄った。

周りの連中も剣を向けてきてはいるが、それ以上は動かない。

実際は無意識(お怒りモード)でカレアシンが放っている威圧スキルにより動けないのだが。


「しっ!知らん!僕は何にも知らないぞ!そっ、それはお前が僕を陥れようとして自分で持ち込んだんだろう!そう、そうだ!そうに決まってる!」


威圧状態の自分に迫られてる状態で、それだけ減らず口が叩けるのならある意味大したもんだと、苦笑して立ち上がる。

それがたとえ、ちびりながらでも、と。



ハイジは背後を振り向いて視界に入ったその異常な光景に、脳が理解する前に動き出していた。

瞬時・・にトップスピードにまで加速し、警備の兵たちの脇をすり抜け陣幕へと突っ込む。

クリスと共に、話しながら歩いていたため、およそ50mほど離れていた。

にもかかわらず、たどり着くまでに掛かったのは4秒ほど。

隣に立っていたクリスなどは、ハイジの動きが目で追えず、彼女が巻き起こした風に頬を叩かれてようやく気がついたほどである。

陣幕へと突入したハイジが目にしたのは、背中から光の羽を伸ばしたカレアシンと、無様に尻餅をついて失禁している指揮官に、剣に手をかけはしたがピクリとも動けないでいる従者達。

彼女が入ってきたことに気がついた指揮官は、抜けた腰のまま、彼女に向かってカレアシンを切れと叫んだ。

もはや言葉になっていなかったので、それは誰にも理解できなかったが。

ハイジを確認した所で光の翼を収めたカレアシンは、周囲への威圧はそのままに彼女へと近づき、事の次第を告げた。

ハイジは馬鹿指揮官の狼藉に天を見上げ、深く息を吸ってからカレアシンに頭を下げた。

たとえ一時のものとはいえ、仮にも主従契約を結んでいる者が仕出かした事の大きさを理解しているのであろう。

責は彼女にないとはいえ、このままでは立場的に確かな者の言い分がまかり通るやも知れないと、ハイジはカレアシンに向かって申し訳なさで一杯の顔を向けた。


「ああ、気にすんな。こいつが何を言おうと、ごまかせねえ様な証拠がある」


そういって、手にしたアイテムを手に笑うが、馬鹿がどうにか復帰したのかして、それを指差してあざ笑った。


「そっ!そんなものが証拠になどなるか!裏社会の魔法具屋に行けば、誰にでも手に入るような代物だぞ!」


そういってけたたましく笑う。


「…コイツじゃねえよ。こっちさ」


そう言って、装甲の隙間から何か薄い直方体のものを取り出して見せた。

真ん中に丸い水晶のようなものが埋め込まれ、裏側には四角い板が貼り付けてある。

横に飛び出している突起部分をカレアシンが何やら弄ると、その四角い板に絵が写り、声が聞こえ始めたのだ。


「これは…?写し絵の魔道具ですか!」

「まあ、似たようなもんだ。デジカメっつってな、万一の為にって、シアが持たせてくれたもんだが、魔力に関係なく動く分、ある意味便利だよな」


くつくつと笑うカレアシンだが、ハイジは息を呑んでそれを見つめた。

人の姿や風景などを取り込むアイテムなら、魔力式を封じた水晶などがあるが、それでも結構な価格と魔法の発動に時間がかかる代物だったと記憶していた。

絵が動き、音まで出る上、簡単な操作でそれを行えるような品など、見たことも聞いたこともなかった。

しかし、まあこの人たちなら何でもありなのだろうと苦笑してしまった。

ちょうどその時、背後から息を潜めて覗き込んできたクリスが視界に入った。


「ああ、クリス。彼は無事よ」

「いや、カレアシンの旦那に何かあるとはこれっぽっちも思っちゃいないけどね。って、ちょいと。何があったんだい?」


何事も無かったかのように会話をする二人に、身動き一つ取れない周りの者達。

それらに視線を送りつつ、クリスは心配そうに二人の傍へ近づいた。


「ああ、何度か見た顔だな。クリス、だったか。魔獣使いの」

「おや、覚えててくれたとは光栄だねぇ。魔獣使いのクリス。クラリッサ・モンベルさ」


挨拶はいいからと、彼女は「で?」と説明を促した。



「はぁ、馬鹿だとは思っていたけれど、本当に馬鹿だったとはねぇ」

「まあ、こっちには非はない。何か言ってきたとしても、折れる気もない。全力で反撃させていただく」


強気だねぇ、と笑うクリスだが、それもそうだろう。

呼ばれて来てみれば、魔法をかけられそうになって、それを防いだ所で逆に自分がその魔法を掛けようとしたのだと言い張られては容赦などしたいとは思うまい。

ましてやそれの一部始終を写し取った道具まであると来ている。

自分なら、即座に平伏して許しを請う所である。

しかし、今の所部隊の指揮官はおろか、それに付き従ってる者達に何かしようとする動きは見られない。

と言うか固まったままである。


「あの、カレアシン殿。彼らに何かなさったので?」


心配そうにハイジが尋ねると、思い出したかのようにカレアシンが鼻を鳴らして笑みを浮かべ、軽く一息吸い込んだかと思うと、「ハッ!!」と。

気を入れるかのような声を発するや、周囲の兵達がばたばたと倒れこんだのだった。


「…情け無い奴らだねぇ」

「ええ、そうね…」


いくらなんでも立ったまま気絶とか、流石に無いわと嘆く女性傭兵達であった。


3/27 誤字脱字修正

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