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MMORPG?知ってますけどなにか?  作者: でーぶ
異世界突入!?
14/83

第13話 呼び方って大事ですよね?愛称で呼び合うのなんて特によさ気ですよね?

(゜д゜) え





        何このランキング

((((;゜Д゜))))ガクガクブルブル 

「は、はあ?確かに子供の頃はそう呼ばれていましたが…」

現実世界において、ドイツ系女性名のアーデルハイトの略称は確かにハイジである。

この世界においてもそれは同じようで、彼女も過去にそう呼ばれていたという事である。

ならば当然っ!

そう呼ばなくてはならない(・・・・・・・・・・)

心の中で熱弁しつつ、カレアシンは拳を握りしめた。


「んじゃ、あなたの事はハイジって呼ばせて貰うってことで」 


呉羽を自室に放り込みにいったシアが、戻りながらそう告げるとハイジは椅子から立ち上がってかしこまってしまった。


「ああ、そう言うのはいいから。私の事もシアでいいわ」

「で、ですがさすがにそれは…せめてシア様、と」

「…ん~、じゃあそれでいいや。よろしくね、ハイジ。あと、準ギルメン扱いにしとくから、次からはこの広間までは好きに入れるからね」


それで、とソファーに座り直し、ネコメイドからティーカップを受け取ってハイジに視線を戻そうとして、ローテーブルに置かれた『つまめる物』に気付いてシアは口元をひくつかせた。 

白パンて。

気を利かせ過ぎだ、とシアはかろうじてそれ以上突っ込まずに話を進めようと居住まいを正した。


やっと本題に入れると言わんばかりに、預ってきた封書を懐から取り出したハイジは、恭しくシアに手渡した。

封を切り、その書面に目を落としたシアの表情がピクリとも動かなかったのを不審に思い、失礼と知りながらもどういった内容なのか、と問うてみた。


「ぐっだぐだ色々書いてるけど、簡単に言うと『責任者出て来い』って事らしいわ。お前はぼやき漫才師か?って感じ」

「おお、懐かしいのう。ワシの若いころは大人気じゃったぞ?人生○朗師匠は」


シアの呆れ口調に、アマクニが笑いながら答えた。

かなり彼のツボにはまった人物(漫才師)らしい。


「流石に存じあげておりません。私が物心つく以前にお亡くなりになってるのでは?」

「ウチだって漫才のDVDで見ただけだわ。さすが年季が違う」

「わ、私だってリアルタイムで見てたわけじゃないからね?言っとくけど!」


ニューハーフパブ勤めの接客業だったためか意外に博識でお笑い好き(守備範囲が広め)なヘスペリスも、流石にそこまで食指は伸びていなかったようである。

熊子もシアも、過去の収録作品を何らかの形で見たようであるが、そこら辺は亀の甲より年の功といった人材が居るわけである。


「責任者出て来い!の人と、地下鉄は何処から入れたのか考えると一晩中眠れなくなる人は、昭和漫才じゃ鉄板だぞ?」

「ははっ!トカゲの癖に良く知っておるな」

「だからトカゲじゃねえって…」

「さっぱりわからない…じゃなくてですね!」


思わず声を荒げてしまったハイジだが、この人たち相手だと、多少強引な話の舵取りをしなければ、いつまでたっても本来の目的を達成できないと思ったのである。


「あ、ごめんごめん。で、どうしよっか」

「こういうのは呉羽が専門と言うか、あいつが全部受け持ってたからなぁ。勝手に進めると後でうるさそうだな」


回復を待つか?と言うカレアシンに、シアはふるふると首を振る。


「回復自体は済ませたわよ?神聖魔法(ピースフルスピリチア)かけたし。ここに居たらまた同じことの繰り返しになりそうだから置いてきたけど。まあ、面倒だけどさっさと終わらせましょう。他に色々やる事もあるし」

「そうだな、じゃあハイジ。先導してくれ、俺が出る」


当然自分が先導と言うか案内して、誰かは知らないが使者を自陣に連れ戻ることになると考えていたのだが、彼が来るとは思わなかったハイジである。


「ン?意外か?これでもここの幹部だぞ?ろくな権限はないがな」


それでも今回の出征では、責任者として隊長の任を担っている。

驚きが表情に出ていたハイジを見たカレアシンの言葉に、彼女が驚いているのは、そういった部分が問題なのではないと、目の前のエルフは苦笑しながら伝えた。


「むしろたかが使者に、幹部が出るのかってところじゃないの?あと、呉羽にいちいち聞かなきゃ駄目、みたいな事言ったしね」

「はい。失礼ですが、シア様が最高責任者ですよね?」


面と向かってこのような事をたずねるのは、下手をすると問題になりそうなものであるが、しかし、目の前に居るこのエルフ女性が、そのような事を気にしそうには思えない、と彼女は見ていた。

「最高責任者だけど、私は責任取るために居るだけ。実際切り盛りしてるのは呉羽くれはで、こういっちゃアレだけど、お飾りだったのよね、私。君臨すれども統治せず、って所ね」

「まあ、でもねぇ?角ねーちんがギルマス(トップ)だったらこんなに人集まらなかっただろうし」


不思議がるハイジに、シアと熊子は再び苦笑で返したが。


「人望がなくて悪かったわね」


続いて響いたその言葉に、熊子はびくりと震えて苦笑した表情のまま固まる羽目になった。



「あ~、確かに。他の部隊は準備が出来次第動き出してるけど…。アラマンヌ王国の旗を掲げた部隊の一つが、そういった動き無しで留まったままだったね。でも変なの浮かべてたよ」


熊子が「ちょっと下、見てきなさい」と、怖い笑みのまま元に戻らない呉羽に言われ、即姿を消して戻るまでの間、十数分。

そのわずかの間に、地上に展開していた軍勢の状況確認を済ませ、下の様子を語っていた。


「あ、それは総司令官から貸与していただいている空中警戒具ですね。私の所属するシュヴァーベン領軍は、総司令官の命により後方監視となっておりますから、そのための装備だそうです。名目上は、比較的被害の少なかった我が領軍が、撤収時の後備えとして居残っているわけですから…」


そこまで言って、アーデルハイト・アルブレヒツベルガーは口ごもった。

これ以上伝えてもいいものだろうか、と。

彼女は、うら若い上にそれなりに見目麗しい女傭兵にして飛行魔獣使いである。

古参傭兵の間でも、若手の中で特に“出来る奴”と言う評価を得ている。

確かにこれまでの仕事で致命的なミスを犯した事はなく、過去の雇い主などからの評価も上々であった。

容姿と実力は別なのだと自負するところであるそんな彼女であるから、自身の女の部分に拘る雇い主は正直なところ忌避していた。

さらに今回、空に浮かぶ巨岩に居るであろうと思われる者への使者として、雇い主である領軍指揮官の命によりココにやって来ているのだが。

その際の、今回の雇い主で指揮官のあの態度と比べてしまう。

ここに居を構えている様子の謎の女エルフと、その関係者と思われる“冒険者ギルド”のメンバー達の、その対応を。

彼女自身にはまったく理解不能であるが、やけに気に入られてしまっている。

しかも、自分の容姿には一切関係ないところで、である。

気になる。

彼女でなくとも、そう考えるものは多いだろう。

新進気鋭の何でも屋集団“冒険者ギルド”の噂ぐらいは彼女も耳にしていた。

販売される武具やアイテムは、他の店が取り扱う市販品よりも遥かに高品質だ、と。

彼女が帯びている剣も、冒険者ギルド製を選べば間違いないと、指導を受けた先輩傭兵に教えられて買ったものだ。

そして、並みの傭兵など足元にも及ばぬ“冒険者”と呼ばれる彼らの実力も。

結成以来、戦闘時に一人の死者も出していないと言う冗談のような話が出回るほどだ。

辺境の町にすら、今では知る者が多い。

何処の巨大商店だと言うほどの商売の実績もある。

戦闘集団としても、今回その実力をあらわにした。

どうしたものかと思う彼女だが、余り気に入っていない雇い主の面子などクソ喰らえだと思い、口を開いた。


「…独断で私をここに越させるなど、どういった思惑があるのやら。正直なところ、良からぬ考えを持っているとしか思えません」


ギルド内“公式”愛称『ハイジ』を得た彼女は、指揮官の命令に沿った行動をしてはいるが、納得して動いているわけではないと、使者としてはあるまじき言葉を口にしたのである。


「ふうん、色ボケで後先考えないタイプの上、高貴な出自で部下の意見を聞かない指揮官、ってとこかぁ。厄介そう」

「どっかの宇宙戦争してる帝国軍とかに居そうだよね、門閥貴族のお坊ちゃま的に考えて。無視しても返事してもめんどくさそう」


そんな事などどうでもよさそうなシアのつぶやきに、熊子が余計な一言を付け足した上で肯定した。


「ま、いいわ。ハイジの顔を立ててあげなくちゃ。カレアシンに任せるって決めたし」

「あ、ありがとうございます」


もし「現場の責任者程度とは交渉する必要性がない」という結論であったらどうなるかと脳内シミュレーションをしていた彼女だが、領軍に戻った後、適当ないちゃもん付けられて身柄を拘束、その後撤収の混乱にまぎれて行方知れずなどと言う嫌な考えすら思い浮かんでおり、いざとなれば逃げ出そうと決意していたりしたが、それは何とか避けられたようだ。

とうに成人している身としては、子供のころの愛称で呼ばれるのはいささか面映いが、その程度でこの返事が引き出せたのならば、安い代償である。

それに、なにより面白そうだ、と。

そう彼女は思った。



その時は。




領軍唯一の飛行魔獣使いの彼女が使者として飛び立って、もうどれほど時間が経っただろうか。

シュヴァーベン領軍の面々は、神経を張り詰めたままその帰りを待っていた。

他国の部隊は着々と帰り支度(撤収作業)を進めており、中には既に出立した気の早い騎士も居ると言う。

しかし、彼らの部隊は未だに軍装も解けないままである。

元々この部隊は後詰めとして戦線の後方に位置していたため、他と比べて圧倒的に被害が少ない。

そのために後備えに回されても、いた仕方がないとは思うが、流石に疲労が溜まってきている。

それに大半が傭兵で構成されているため、他と比べて使い捨て易いとまでは言わないが、正規軍の部隊に任せるよりも、後々の始末も容易いからであろう。

何しろ金で済ませられる。

とはいえ、一応正規の領軍所属の者達にすれば、居心地が悪い事この上ないと言えるだろう。

殿を務める事が決定したのは、全軍を指揮していた将軍に、自分達の部隊を率いている指揮官が上奏したと言う事実があるらしいが、傭兵達はその事に関して、要らぬところで貴族様の気高い精神など発揮しないでほしいものだとやけくそ気味に笑ったりしていた。

領主の息子が指揮官とはいえ、なにやら申し訳ない気持ちで一杯になる領軍の兵士達であった。



ともあれ命令が発せられたのであれば、そのように動かねばならない。

流石に多少は気を使ってもらえたのか、後備えを命じられた際、将軍の居る本陣から哨戒用のアイテムが貸与されていたらしく、即座に使用が開始された。

古代遺跡から発掘された、浮遊魔術が付与されただけの球体に、籠のようなモノを取り付けた、空中警戒具(フロートワッチャー)

地上で見張るよりもはるかに遠くまで見渡せ、飛行魔獣と違い、定点での観測が長時間出来るのが利点だが、もちろん高価極まりない。

急遽使用を言い渡された兵達は、慣れないためか高所ゆえの違和感からか、或いは一旦緊張が解けた後に任された任務故か、疲れが倍増しているように見受けられる。

まあ、主なストレスの原因は、圧倒的に巨大な物体が、目前に迫っている上に、敵なのか味方なのか未だにわからないという点だろうが。

ちなみに今回のような遮蔽物のない戦場においては、本来ならば飛行魔獣を乗騎とする偵察騎兵が複数で広範囲の索敵を行うのが常のため、周囲を警戒するような歩哨はさほど多く必要とはしないのだが、現状でこの領軍が抱えていた飛行魔獣は先のアーデルハイトの持つヒポグリフ一騎のみ。

しかもそれすら部隊指揮官の勝手な命令で出たっきりである。

他の部隊の飛行魔獣使いも、撤収準備に入っていなければ借り受けられたかもしれないが、現状では引き受けてもらうどころか、話を通すことすら難しいだろう。

そんな折、空中警戒具に搭乗していた物見の兵が声を上げた。


「4時の方角!ヒポグリフともうひとつ!」


東の空を塞ぐように浮かぶ巨岩から、一騎のヒポグリフと、大きな翼を広げた竜人とが姿を現していた。

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