少年 策を練る
今回でこの章は終わりです。 ちょっと駆け足になっちゃいました。一回閑話を挟んでから次の章に行きたいと思ってます。 評価とブックマークお願いします。
### 卓視点
今回の侵入者は、これまでのどの獲物とも異なり、些か厄介な存在だった。白竜会の地下施設に送り込んだ構成員の大半が、無残な姿で発見されたという報告を受け、不本意ながらも代理支部長である俺自身が出張る羽目になった。本来であれば、末端の処理など俺の仕事ではない。だが、その侵入者は、俺の予想を遥かに超える手強さを見せつけた。
妖力高い身体能力に加え、得体の知れない黄色の斬撃を操る。そして何よりも、俺の中位妖術である《螺炎》を直撃させても、ほとんど無傷で立ち上がってくるその異常なまでのタフさ。しかし、それだけだ。彼の戦い方は、まるで素人同然。洗練された戦術もなければ、妖力の効率的な使い方も知らない。ただひたすらに、伸びる斬撃という力に任せた、力任せの攻撃を繰り返すのみ。
――にもかかわらず、俺は、この地下施設で彼を取り逃がし続けている。
(……クソッ、ふざけやがって)
俺の心に沸き起こった殺意は、仲間を殺されたことに対する純粋な怒りだけではなかった。それは、この程度の「雑魚」に手こずり、仕留めきれない自分自身への苛立ちでもあった。かつて、俺は別の組織を壊滅させたこともある。その時、相手の幹部が同じような感情に囚われ、冷静さを失ったのを嘲笑った記憶が蘇る。まさか、自分が同じ轍を踏むとは。やはり、俺はまだまだ未熟だ。怒りに囚われるなど、修行が足りない証拠。
だが、この追いかけっこも、もう終わりだ。俺は妖力を《妖紙》に溜め込み、いつでも螺炎を放てるようにしてあいつを探した。もしかしたら奇襲をしてくるかもしれない。そう思って角を曲がると、あの雑魚がナイフを構え、俺を待ち構えている。逃げるのをやめたらしい。
(……ちょうどいい)
先ほどの《螺炎》は、地下の複雑な構造と、天井の低い通路が邪魔をして、その威力を最大限に発揮できなかった。だが、今は違う。この広い空間であれば、最大出力を放つことができる。斬撃で牽制しようと身構える祐樹を見て、俺は鼻で笑った。彼の動きは、あまりにも単純だ。
(学ばねえな、雑魚が)
何度繰り出しても、俺の妖力を帯びたロングソードは、彼の斬撃を砕くことはできない。斬撃を止めた瞬間に、再び《螺炎》で焼き尽くしてやる――
その瞬間だった。
祐樹が放った黄色の斬撃は――俺の頭上を、まるで狙いを外したかのように、虚しく通り過ぎた。
「……は?」
俺の口から、間の抜けた声が漏れた。その斬撃が、天井のコンクリートを切り裂いたことに気づいたのは、次の瞬間だった。そして、その次の瞬間――頭上から降り注ぐ大量の瓦礫に、俺の巨体は為す術もなく埋もれた。視界は一瞬にして暗闇に包まれ、全身を激痛が襲う。まさか、こんな単純な奇策に、この俺が……。
### 祐樹視点
「よっしゃあああああああ!ざまぁみやがれ、この炎野郎が!」
瓦礫の山と化した通路を前に、祐樹は全身で喜びを表現した。両腕を天に突き上げ、全力でガッツポーズを取る。彼の顔には、満面の笑みが浮かんでいた。卓の妖術「螺炎」の猛攻を凌ぎ、ついに強敵を打ち破ったのだ。彼の頭脳と、不死の肉体、そして斬撃能力が、見事に融合した勝利だった。
やったことは、至って単純。この地下という特殊な地形を利用した、一か八かの奇策だ。卓の視界の外から、黄色の斬撃で通路の両端と天井の構造を、事前に切り裂いておいた。そして、卓が《螺炎》を放とうと妖力を溜めている、その一瞬の隙を狙って、真上を切り抜け――天井を崩落させたのだ。
……まあ、成功したのは、運が良かっただけかもしれない。もし卓が、あのまま真っ直ぐ突っ込んできていたら、この作戦は失敗に終わっていただろう。そして、ここが地下施設でなければ、天井を崩落させること自体が不可能だった。しかし、祐樹は、もしもの事態も想定していた。
(まあその時は、死んだフリでもして、懐に飛び込んで刺し殺してやるつもりだったけどな)
ポジティブなのか、それとも極限状態でのヤケクソなのか。自分でも判断がつかない思考を抱えつつ、祐樹は周囲を見回した。気を抜くわけにはいかない。卓ですらこの強さなのだ。白竜会には、もっと上がいるかもしれない。あるいは、卓が瓦礫の下から這い上がってくる可能性もゼロではない。
(ここから離れた方がいい。あれよりやばいのと戦いたくなんてないからな)
そう思い、祐樹は出口を探し始めた。彼の足は、血と瓦礫にまみれた通路を、迷うことなく進んでいく。新たな武器として手に入れたナイフと拳銃が、彼の腰とポケットで鈍く光っていた。
「ふう。やっと見つけたぞ。どんな入り組んでるんだよ、この地下は」
どれほどの時間が経っただろうか。数え切れないほどの哀れな犠牲者たちの血を踏み越え、祐樹は、まるで設計ミスとしか思えないほど長く続く階段を上りきった。その先には、重厚な鉄の扉が立ちはだかっている。道中、鉢合わせになった白竜会の構成員たちからは、ナイフや拳銃、そして着替えまで略奪した。彼の行動には、もはや一切の躊躇がない。人の心など、とうの昔に捨て去ったかのように。
そして、祐樹は、その鉄の扉のドアノブに手を掛けた。
(……多分、ここを襲撃した犯人として、俺は白竜会から標的にされるだろう。できるだけ見つけた人や防犯カメラは壊しておいたけど、どうせすぐにバレる。それに、あのゴミ共も、そのうち俺の捜索願を出すだろうな)
そう。今の祐樹の身は、極めて危険な状況にあった。日本の裏社会を牛耳る白竜会の支部を半壊させ、その恨みを一身に買った。そして、かつての家族が、いつ自分の捜索願を出すか分からない。もし捕まれば、彼の不死の力は研究対象となり、一生を研究所で過ごすことになるだろう。だが、そんな絶望的な状況にあっても、祐樹はめげなかった。彼の瞳には、燃え盛る復讐の炎が宿っている。
「ハッ。ヤクザだろうが警察だろうが、邪魔するなら叩き斬ってやるよ。そんでもって、あの猿共を後悔させてやる。あのゴミみたいな奴らをよ」
祐樹は、不敵な笑みを浮かべながら、重い扉を押し開けた。その先には、新たな世界が広がっている。この不死者が、これから世界をどう変えていくのか。誰も、それは知り得ない。彼の狂気と復讐心が、世界に何をもたらすのか。物語は、今、始まったばかりだ。
人物紹介⑥ 高野竜司
年齢 18歳
誕生日 3月30日
身長 180センチ
部活 ラグビー部
好きなもの 鍛えること 合体すること バカにすること
嫌いなもの 勉強すること バカにされること NTRれること
自分は寝とったのに寝取られるのは嫌いな人。っていうか自分のものが奪われるのがやだ。 てか誕生日3月30だと祐樹たちと同い年説が濃厚。ストーリーには影響しないけどちょっと気になる。 ちなみに元々の苗字は竜臥。 明美様の元々の苗字は流川。 ひれふせよ。 部活はラグビーだけどどう考えても協調性ないんだよなこいつ。でも筋肉といえばラグビー部とかいうど偏見の結果こうなった。 なぜ? ちなみに誰から復讐するかは決めてない。最初にして欲しい人いたら教えてください。




