表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不死となった少年は抗う為に剣を握る  作者: マジュルーム
裏を牛耳る組織は 少年を何色に染めるのか?
4/34

少年は撫で斬りを決意する。

撫で斬りと言えば伊達政宗って思うのは僕だけでしょうか。


二つの首なし死体が、血溜まりの中に転がっていた。その異様な光景を前に、祐樹は乾いた笑みを漏らした。


「ハッ、ザマァみやがれ。俺を舐めてるからこうなるんだ」


常識的に考えれば、首が折れ、頭蓋骨が砕け散れば、いかに頑健な肉体を持つ者でも即死する。油断や慢心などという生易しい話ではない。だが、祐樹の口から出た言葉は、彼自身の常識が既に崩壊していることを示していた。彼は、先ほど男たちの首を刎ねたメスを再び握りしめ、意識を集中する。すると、メスの切っ先から、再びあの禍々しい黄色の斬撃が迸った。それは、まるで熱を持ったレーザーのように、天井の硬いコンクリートを、床を、そして血塗れの死体収納袋と、その中にあったであろう内臓までもを、一瞬にして切り裂いた。大量の血と臓物が、グチャリと音を立てて飛び散る。祐樹は思わず「ッゲ」と顔を顰めたが、すぐにその光景から目を逸らし、今度は自分の手から直接斬撃を放とうと試みた。しかし、いくら手を振っても、指を突き出しても、何も起こらない。次に、彼は長身の男が持っていたナイフと、ゴリマッチョの男から奪った銃を試してみた。すると、どちらの武器からも、先ほどと同じ黄色の斬撃が放たれた。さらに、試しに足で蹴りを放つと、彼の靴の先からも、鋭い斬撃が伸びた。


(……なるほど。恐らく、この奇妙な斬撃を放つには条件がある。それは、斬撃を放つためには、何らかの“媒介”が必要だということか。だから、素手では何も起こらない。その代わりに、こんな馬鹿げた威力の斬撃が、どんな物体からも放たれる、と……)


祐樹は、自身の新たな能力の特性を冷静に分析していた。その思考は、先ほどまでの絶望に打ちひしがれていた彼とは、まるで別人のようだった。彼はふと、自身の体に目をやった。


(てか、俺、絶対さっき死んでたよな。頭蓋骨が割れる音もしたし、死ぬほど痛かった。意識も途切れた。……てことは……)


彼は、メスを自身の首筋に当て、躊躇なく、思いっきり引き裂いた。肉が裂ける鈍い感触と、生暖かい血が噴き出す感覚。祐樹の体は、ドサリと音を立てて床に倒れ込んだ。しかし、数秒もしないうちに、彼の首の傷口は、まるで早送りの映像のように急速に塞がり、肉が再構築されていく。そして、何事もなかったかのように、祐樹はむくりと起き上がった。


「……なるほど、ってなるかよ!」


彼は、自身の不死性を確認したことに、驚きと同時に、激しい怒りを覚えた。彼の脳裏には、死にたくて飛び込んだ電車の光景が蘇る。あの時、彼は全てを終わらせたかったのだ。なのに、なぜ、こんな体になってしまったのか。死にたくても死ねない。その事実に、祐樹は激しい苛立ちを覚えた。彼はコンクリートの床を地団駄を踏んで悔しがったが、やがて、その表情に不気味な笑みが浮かんだ。


(……そうか。なら、俺をこんなところに連れてきた奴らにお礼ができるじゃないか)


彼の瞳の奥に、冷たい光が宿る。それは、復讐の炎か、あるいは、もっと別の、歪んだ感情の萌芽か。祐樹は、男から奪った銃を、血で汚れたボロボロの後ろポケットにしまい込んだ。そして、ナイフとメスを両手に持ち、鉄の扉の先に続く暗闇へと、足を踏み入れた。



コツ、コツ、コツ……と、規則正しい足音が、薄暗い通路に響く。祐樹は、その足音の主が、自分を追ってくる敵であることを確信していた。彼の耳は、微かな物音さえも捉えるほどに研ぎ澄まされている。


「まったく、あの人たち、いつまで待たせるんですか。もう30分は経ってますよ」

「まあそうだな、でも流石にもう帰……」

「ちょっ、先輩?だいじょ……」


通路の角を曲がった瞬間、祐樹は二人の男の会話を耳にした。彼らは、祐樹が切り裂いたコンクリートの壁と、飛び散った血痕を見て、警戒を強めているようだった。しかし、祐樹の動きは、彼らの予測を遥かに超えていた。会話が途切れるその一瞬の隙を突き、祐樹はメスを構え、電光石火の速さで斬撃を放った。黄色の斬撃は、まるで空間を切り裂くように伸び、男たちの首を正確に捉えた。ゴボッ、と血を噴き出しながら、二つの首が床に転がり、胴体はゆっくりと崩れ落ちる。祐樹は、血溜まりをベチャベチャと踏みしめながら、無表情で歩を進めた。


「ふう、やっぱり奇襲して狩るのが一番だな」


彼は、この通路で既に何人かの敵と遭遇し、戦いを経験していた。そして、自身の能力の特性と、敵の戦い方を学習していた。彼の斬撃は中距離では絶大な威力を発揮するが、接近戦では扱いづらい。そして、ついさっきまで一般人だった祐樹が、修羅場を潜り抜けてきたであろう男たちと、素手やナイフで渡り合うのは不利だと悟った。だからこそ、彼は「奇襲」と「斬撃」を組み合わせた戦法を選んだのだ。足音が聞こえた瞬間に、その足音の主がいるであろう場所のコンクリートごと斬り裂く。この荒業は、コンクリートを豆腐のように切り裂く彼の斬撃だからこそ可能な戦法だった。この方法で、彼は多くの敵を排除してきた。


しかし、その油断が、新たな危機を招いた。通路の奥から、一発の銃弾が祐樹の頭部めがけて飛来した。彼は咄嗟に首を傾け、紙一重でそれを避ける。


「ッツ!危ねーな!」


祐樹は、銃を撃った男の方向へ向かって、再び斬撃を放った。黄色の斬撃は、男の体を縦に両断し、血飛沫が壁に飛び散る。だが、その一瞬の隙を突いて、通路の左右から、十数人の男たちが一斉に祐樹に襲いかかった。彼らは、鉄パイプやバール、そして鈍く光るナイフを手にしている。明らかに、祐樹の能力を警戒し、対策を練ってきた動きだった。


「チッ、やってくれたな……!」


祐樹は舌打ちをしながら、ナイフとメスを握りしめ、襲いかかる男たちに手当たり次第に斬りかかった。黄色の斬撃が乱舞し、男たちの肉を切り裂く。しかし、数に勝る敵は、斬撃の隙間を縫って祐樹に肉薄する。一人の男が、鉄パイプを振り上げ、祐樹の頭部めがけて叩きつけた。祐樹は咄嗟にナイフでそれを受け止める。ガキン!と金属がぶつかり合う甲高い音が響き、ナイフと鉄パイプの間から火花が散った。鉄パイプを防いだことで、祐樹の斬撃は止まる。その隙を、他の男たちが見逃すはずがなかった。次々と鉄パイプやバールが祐樹の体に襲いかかる。


(流石にまずいな……。てか、こいつら、俺のことを対策してきやがった。それに、どうやって俺がここにいるって分かったんだ?)


祐樹は、頭をよぎる疑問を振り払う。彼らが、コンクリートの壁を切り裂く斬撃を見て、何らかの特殊能力を持つ者がいると判断し、追跡や待ち伏せを仕掛けてきたことは想像に難くない。血の足跡も、彼らの追跡を容易にしただろう。しかし、今はそんなことを考えている暇はない。祐樹は大きく息を吸い込むと、腰を軸に、まるで暴風のように回転した。ナイフとメスから放たれた黄色の斬撃が、竜巻のように周囲の男たちを容赦なく切り裂いていく。肉が断ち切られる鈍い音、骨が砕ける音、そして男たちの断末魔の叫びが、地下室に木霊した。


「ッグフッ……!」

「ッギャアアア……!」

「う、腕がああああ……!」


祐樹が回転を終えた後には、地獄絵図が広がっていた。首を失った胴体、手足を失い血を噴き出す男たち、そして、血の海に横たわる無数の死体。阿鼻叫喚の光景は、生き残った男たちの戦意を完全に喪失させた。


「ッヒイ、バケモンだあいつ……!」

「に、逃げろー!」


男たちは、恐怖に顔を引き攣らせ、一目散にその場から逃げ出そうとした。しかし、その背後から、重々しい声が響いた。


「何をしている、貴様ら」


その声に、逃げようとした男たちは、まるで糸が切れたかのようにぴたりと動きを止めた。声の主は、通路の奥からゆっくりと姿を現した。身長2メートル近い巨躯に、引き締まった筋肉。その手には、黒光りするロングソードが握られている。その男こそ、白竜会の幹部、「卓」だった。


「ッで、でも、卓さん、あいつ、変な力を……」


震える声で訴える部下たちに、卓は冷たい視線を向けた。


「……なるほど。霧島さんより、あのガキの方が怖いとでも言うのか。笑わせるな」

「そ、それは……」


卓の言葉に、男たちは歯切れ悪く言葉を詰まらせる。卓は鼻で笑うと、祐樹に向き直った。


「まあ良い。あいつは俺が殺そう」


卓の言葉に、祐樹は迷わず黄色の斬撃を放った。先ほどまで、この斬撃で敵を容易く切り裂いてきた。しかし、卓は動じない。ロングソードを構え、斬撃を受け止めた。キィン!と鋼が軋むような金属音が空間を震わせ、斬撃はロングソードに弾かれた。


(な、なんだよあれ……。なんでコンクリートを豆腐みたいに切り裂ける斬撃を受け止めるんだよ)


祐樹は、驚愕に目を見開いた。自身の斬撃が、初めて通用しなかった。彼は一瞬怯み、後方に跳び退くと、再び斬撃を放とうと身構えた。だが、卓の動きは、それよりも遥かに速かった。卓は右手を炎で包み込み、その業火を纏った右手を祐樹めがけて突き出した。


「貴様が撒いた災厄、この業火で焼かれるがいい――螺炎!」


卓の口から放たれた言葉と共に、炎の渦が祐樹を飲み込んだ。灼熱の炎が彼の全身を焼き尽くし、壁に激突。轟音と共に大爆発が起こり、地下室全体が激しく揺れた。


そこには、冷たい目で爆心地を見つめる卓だけが、静かに立っていた。彼の表情には、一切の感情が読み取れない。まるで、目の前の出来事が、取るに足らない日常の一コマであるかのように。

今まで人物紹介だの自己紹介だのキャラクター紹介だの言ってましたが、人物紹介で固定しようと思います。 これからミスってたら指摘お願いします。


人物紹介④ 高野慎吾


享年    30歳

誕生日   6月18日

身長    170センチ

職業    実業家

好きなもの 堅実 家族 真面目

嫌いなもの 怠惰 不真面目 ルールを破ること

堅実なものが好きなのに職業は実業家っていう謎の人。 あとあんな人と結婚したので見る目がない可能性が高い。 マジでなんで実業家やってるの? ちなみに死因は祐樹を庇ってトラックに轢かれて亡くなった? 転生して異世界チート手に入れたかな? ちなみに元々の設定だと白竜会かどっかに殺されてた。 それが色々あってこうなった。 何があった。 天国でもしこの状況見てたら闇堕ちしてそう。 あ、でも闇落ちはしないか。 彼殺されたんだから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ