少年は復讐されることを許さない
この後、アクトと駒が連携して戦うのがいいのか、別々で戦うのがいいのかどっちの方がいいんかな?
まあ駒の描写あまり書けてないから別々で戦うのがいいかなー。
コンテナヤードの暗闇を引き裂く炎。吽形の結界が砕け散り、その光を吸収するような黒い鱗が露わになった瞬間、アクトは既に動いていた。
炎を纏った剣は、吽形の巨体を正面から切り裂き、その悲鳴と共に彼の視界は次の獲物へと移った。
駒。
包帯グローブを形成し、卓の猛攻に必死に応戦している少女の姿が、アクトの脳裏に映った。
「チッ、離れろ駒!」
アクトは地を蹴り、音速に近い速度で戦場へと飛び込んだ。炎の翼が夜空を赤く染め、その軌跡は彗星のようだった。
卓は、駒の包帯グローブを巨大な剣で弾き返そうとしていた。その剣は、駒の攻撃を何度も受けながらも、その重さと質量で押し返す。卓の顔には、狂気と復讐心の混在が見えた。
「邪魔するな、女!お前を殺してからあのガキを片付けるんだ!」
卓の剣がひときわ大きく振り上がった。その一撃は、駒の首を完全に狙うもの。
その瞬間、炎の軌跡が割り込んだ。
アクトの炎を纏った剣が、卓の巨剣に衝突する。
「ぐ……っ!」
卓は衝撃に体を揺らすが、すぐに態勢を整え、アクトに向き直った。その目に宿る執念は、どうしようもなく深い。
「よくも……戻りやがったな。だが、この程度で俺を止められるか!」
卓は、巨剣を両手で握り直し、アクトに向かって突進した。
ガキィィィィン!!
二人の剣がぶつかり、凄まじい火花が散る。アクトの炎の剣と、卓の力が激突し、周囲のコンテナを熱で少しずつ変形させていく。
アクトは斬り合いながらも、脳裏の片隅で、さっきの現象について思考していた。
(あの黄色い斬撃……炎と一緒に飛んでいった。だが、俺は炎を飛ばそうと意識していた。ということは、あの黄色いエネルギーは、俺が意識した方向に従っているのか?)
アクトは卓の斬撃を受け止めながら、新たな仮説を立てた。
(もしそうなら……黄色い斬撃だけを、独立させて飛ばすことも可能じゃないか?)
その思考は、戦闘を通じて検証される必要がある。
「ハッ!」
卓は、アクトの一瞬の思考の隙を見逃さず、巨剣を思いっきり横に振り抜いた。
アクトはそれを防ぎきれず、その勢いに吹き飛ばされ、十数メートル離れたコンテナの上に着地した。
炎炎極火の効果が途切れかけている。全身の妖力が枯渇しかけているのを感じた。
アクトは自身の剣を見つめた。
その刀身は、二式で強化されているはずなのに、所々に刃こぼれが目立っている。卓の圧倒的な力の前では、どれだけ強化しても限界があるのだ。
(なら……別の方法を試すしかない)
アクトは、深く息を吸った。
彼の体内を流れるグリム・エンドのエネルギー――あの謎の黄色い力。それを、二式のように「硬度を上げるために循環させる」のではなく、無理やり剣に「纏わせる」ように、力を注ぎ込んだ。
それは、二式とも一式とも違う、新たな形態。
黄色い光が、剣の全体を覆い尽くす。その光は、まるで剣そのものが変質したかのように見えた。
アクトはガスマスクを直し、剣を握りしめた。
彼の唇から、無意識のうちに言葉が溢れ出た。
「……三式」
その呟きと共に、アクトは空を縦に斬り抜いた。
ビュオオオォン!!
黄色い斬撃が、剣から独立して飛び出した。だが、それは一式のような「伸びる」ものではなく、「投擲される」もの。まるで黄色い刃が、実体を持ったまま空を切り裂くように。
卓は、アクトを守ろうと立ち塞がった駒を殴り飛ばすことに夢中になっていた。彼の視界には、アクトからの攻撃は映らなかった。
――直前まで。
「な……?」
卓の右手が、肘から先、綺麗に切り飛んだ。
血が噴き出す。その流れは、まるでスローモーションのようだ。
卓の叫びより早く、駒は全力を込めて彼を殴った。
「ドゴオオォォォン!!!」
卓の巨体は、まるでボールのように吹き飛ばされ、背後に積み上げられた資材の山を貫通した。その衝撃は、壁をもえぐり、アスファルトにクレーターを作る。
その瞬間、アクトは足で一式を発動し、その黄色い足が伸びる勢いで地面を蹴り、一瞬で卓に肉薄した。
卓はまだ呼吸をしていた。片手を失った状態で、ようやく起き上がろうとしていた。
アクトは、卓の剣がないことを確認した。その剣は、吹き飛ばされた時に手から離れたのだろう。
最後の足掻きとして、卓はポーチから一枚の妖紙を取り出した。
「こういう時のための……」
卓の声は、かすれていた。血を失い、体力を消耗し、片手を失った状態で、なお彼は立ち上がろうとしていた。
その執念が、アクトの心に不快感をもたらした。
卓は、妖紙に妖力を循環させた。
「螺炎!!」
圧縮された炎の塊が、螺旋状に回転しながら、アクトを飲み込む勢いで迫ってきた。
だが、アクトは動じない。
彼は自身の体を限界まで縮め、螺炎の「中心」――その回転する炎の塊の、最も空間が広がっている部分を狙った。
ズオオォ!!
アクトは、螺炎の極限を通り抜け、炎の向こう側へと出た。ガスマスクは若干焦げ、服もところどころが焼けている。
だが、彼は止まらない。
左手を盾のようにして構える卓に、アクトは二式で強化した剣を振り上げた。
「待……」
卓の言葉は、完結することはなかった。
ザシュッ!
アクトの剣は、卓の左腕ごと、その躯を切り裂いた。
「ぎゃ……ああああああああっ!!!」
鍋島卓の断末魔は、コンテナヤード全体に響き渡った。彼の体は、二つに分かれ、血の海へと沈んでいく。
アクトは、その亡骸を見つめた。
復讐心に駆られた男。自分に匹敵する力を手に入れ、二度目の対面を果たした。そして、ここに決着がついた。
だが、アクトの心は、決して晴れてはいなかった。
(……虚しい)
その感覚は、彼を襲った。復讐の達成感ではなく、虚無感。
それは、。敵を倒しても、その劇の幕は閉じない。新たな幕が、別の場所で開かれているのだから、という気持ちがあるのであった。
アクトは、卓のポーチから残りの妖紙を奪い、その死体から目を逸らした。
彼の視線は、鉄心と上杉の戦場へと向かう。
そして、駒も。
今、あの混乱の中心で、三つ巴の戦闘が続いているはずだ。
アクトは、黒い剣を手に取り、その先端を赤く染めたまま、最終局面へと向かうのであった。
夜風は、コンテナヤードを吹き抜け、血の匂いを遠くへと運んでいく。
アクトの背後には、鍋島卓の亡骸が、静寂の中で横たわるだけだった。
この話の感想。
バカは死んでも治らないっていうけど、一回油断して下敷きになって負けたんだから、今回は油断も隙もない状態で来て欲しかったな。




