3人は三つ巴で戦う。
ちょっと投稿作品が重なって(ほぼ)毎日投稿が難しいっぴ。
名古屋港コンテナヤード、西側ジャンクション。 夜の闇と、コンテナの巨大な影が、この場所を現代の迷宮に変えていた。潮風の匂いと、鉄とオイルの混じった微かな臭気が、血と硝煙の匂いに塗り替えられようとしている。
アクトは、高さ十数メートルに積み上げられたコンテナの最上段、その縁に片足をかけ、全身に妖力を漲らせていた。彼の剣から放たれる黄色い斬撃は、まるで光の軌跡のように夜空を裂き、遥か下方にいる鍋島卓へと向かう。
「チッ……!」
卓は、巨大な剣を構え、アクトの斬撃を迎え撃つ。その剣は、一式を、まるで豆腐でも切るかのように容易く弾き返す。弾かれた斬撃は、後方のコンテナを「ガキン!」と叩き、深い亀裂を残した。
卓は、全身を覆うロープの隙間から、アクトを見上げる。その瞳には、憎悪と焦燥が入り混じっていた。
「クソが……!聞いてねぇぞ。なんでお前が生きてるんだよ!」
アクトは叫んだ。あの時に彼はとっくに死んでいるものと思っていたからだ。だが今、この場にいる。本当に自分みたいに不死身じゃないか?っと思ってしまうほどだった。
だが、卓も驚いていた。彼は、アクトの不死性と一式の斬撃の厄介さは知っていたが、その速度と手数が、以前とは比べ物にならないほど洗練されていることに驚愕していた。
卓の剣から放たれる斬撃は、重く、太い。一撃一撃がコンテナを破壊し、地面を抉るほどの質量を伴っている。対するアクトの斬撃は、速く、鋭い。連続する斬撃の波は、卓の防御の隙間を執拗に狙い、皮膚を掠める。
卓は、再び妖紙を握り、「螺炎!」と叫びながら、螺旋状の炎の塊をアクト目掛けて射出した。
アクトは、それを紙一重で避け、炎の塊が背後のクレーンに「ドゴォン!」と激突するのを見届けた。
(クソッ、やっぱりあの野郎、俺を殺すためだけに修行しやがったな。あの重さと速さ、そして螺炎の精度。以前とは格が違う。だが、俺も不死者だ。長期戦になれば、必ず勝機が見えるが、今回の目的は鉄心を殺すこと。長期戦になれば不利になるのは恐らくこっちだな。だったらパッパと殺すしかねえな。まあ、ラスボス戦に備えて妖術もあまり使いたくはないな!)
アクトは、不死者としての優位性を信じ、斬撃の波をさらに加速させた。
卓は、「俺は2回もお前なんかに負けるか!」と、自身の焦燥を怒りに変え、巨大な剣を盾のように構えながら、鉄心の護衛という役割を全うしようと、アクトの斬撃を全身で受け止める。
その頃、戦場の中心では、駒が包帯グローブを巨大化させ、吽形の結界を連続で殴りつけていた。
吽形は、金色に輝く結界を張り、駒の猛攻を防いでいる。結界は振動し、亀裂が走るが、破れる気配はない。
阿形は、水の激しい勢いで発射したり、噛みつきで駒を攻撃するが、駒は俊敏な動きで回避し、包帯グローブで阿形の巨体を殴りつけ、足止めを行っていた。
駒は、阿形の水の牙を紙一重で避けながら、一瞬、遠くのコンテナ上にいるボンリスに目を向けた。
(私の役目は、この二つの鯱を足止めすること。そうすれば、あとはボンリスがどうにかしてくれるはず。)
駒は、声なき期待を胸に、包帯グローブをさらに巨大化させ、吽形の結界に渾身の一撃を叩き込んだ。
「ドッゴオオォォォン!!」
結界が激しく振動し、鉄心の足元を揺らした。
その一瞬の隙を、ボンリスは見逃さなかった。
ボンリスは、遠くのコンテナ上から、スナイパーライフルを構え、鉄心の顔面を狙い、発砲した。
「カキン!」
鉄心は、杖を瞬時に顔面の前に移動させ、弾丸を受け止めた。弾丸は杖の黒檀に食い込み、火花を散らした。
鉄心は、冷笑を浮かべた。
「小癪な。だが、策士の本命は、常に本体を狙うものだ」
鉄心は、駒と戦っていた阿形を、ボンリスがいる方向へ差し向けた。そうやって移動しようとする阿形を仕留めようと包帯で殴りつけるが、それは鉄心の杖で防がれた。
「ふん。いいじゃじゃ馬よ。面白い。わしが相手になってやろう。」
そうして駒が鉄心と吽形と戦っている時、
ボンリスは、舌打ちをしながら、スナイパーライフルで撃っていた地点から飛び降りた。
阿形の突進は、コンテナを破壊し、轟音を響かせた。ボンリスは、紙一重で阿形の突進を避けた。
阿形は、巨大な体躯からは想像もつかないほどの敏捷さで、ボンリスを追う。
ボンリスは、魔力を循環させ、詠唱を開始した。
「Sine reliquiis, gladium vacuum activare!(残滓を出さず、真空斬を発動させる!)」
ボンリスの魔力は、空気の属性を持っていた。詠唱と共に、真空でできた斬撃が、不可視のまま阿形目掛けて飛んでいく。
阿形は、不可視の斬撃を「ヒョイ」と避け、水圧を高めたウォータージェットをボンリスに向かって放った。
そのウォータージェットは、まるでアクトが前戦った女の水断のような技で、コンクリートを容易く切断するほどの威力を持ち、ボンリスを寸前で避けた。
ボンリスは、「チッ」と舌打ちをしながら、トーラス PT92を阿形に発砲した。
「ダンッダンッダンッ!!」
弾丸は、阿形の巨体に命中するが、あまり効いていない様子だ。
ボンリスは、冷静に状況を分析した。
(あの鯱の霊質は恐らく水。だがまあ内臓が式神にあるかなんて知らないし、そんな内臓の破壊を狙うくらいなら単純に殺した方が楽だな)
ボンリスは、長期戦になりそうだと思い、「ここで仕留める」ことを決意した。
その頃、駒は吽形と、鉄心の連携に苦しんでいた。
鉄心は、杖から発射する変な針(金妖術の応用)で駒を攻撃したり、単純に杖で殴りかかってきたりしてきて、駒は回避に専念せざるを得なかった。
駒は、「あっという間にやられる」という極限状態に陥っていた。
「ドゴォン!」
鉄心の杖が、駒の頭上を掠めた。
その一瞬、鉄心の背後から、凄まじい速度で跳び膝蹴りが炸裂した。
「カキン!」
鉄心は、杖で防御したが、衝撃で体勢を崩した。
鉄心は、驚愕の表情で背後を振り返った。
「なぜお前がここにいる!」
上杉は、冷徹な視線で鉄心を見つめた。
「お前の部下らは全員殺した。俺はお前を駆除するだけだ!」
上杉は、凄まじいスピードで鉄心と殴り合いを開始した。
駒は、「ラッキー」と思い、吽形に集中しようとするが、別の方向から妖術が撃たれてそれをかわす。
その方向には、先ほどまで鉄心と卓以外を殺したであろう妖術科の職員が、ギラギラとさせた目で駒を見つめた。
駒は、「あっこれ私も狙うの」と思い、駒と吽形、妖術科の職員も三つ巴が始まるのであった。
アクトは、卓との激戦の最中、駒の窮地を察知した。
「クソッ、作戦通りにはいかねぇな!」
アクトは、卓の攻撃を紙一重で避け、早くあそこの乱戦に入らないといけないなと思い、剣で切り付けるのだった。




