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不死となった少年は抗う為に剣を握る  作者: マジュルーム
復讐を目指す少年と全てに絶望した少女
30/38

少年少女、全て掌の上で踊らされていた。

全て掌の上

鬼人、、、、、、人鬼

う、頭が、、、、、、

愛知県内における白竜会関連施設の襲撃は、驚くほど順調に進んでいた。 アクトの「グリム・エンド」による斬撃と、駒の「包帯」による圧倒的な面制圧。二人の不死者の前には、凡百の構成員など紙切れに等しかった。


アクトが斬撃で壁を切り裂き、駒が包帯の拳で建物を粉砕する。 アクトが機動力で敵の配置を乱し、駒が防御不能のラッシュで全てを更地にする。


「化け物だ!」 「不死身のコンビだ、逃げろ!」


そんな悲鳴が、彼らが通過した拠点の全てから上がった。ボンリスが後方支援(と彼が呼ぶ暗殺と爆破)で情報を遮断し、インフラを破壊する。


白竜会の愛知県における支配力は、文字通り「三分の一」にまで減衰した。 だが、その順調すぎる戦果こそが、アクトの心に、そしてボンリスの分析に、微かな違和感を芽生えさせていた。


(……おかしい)


-"軽すぎる"-。


アクトは、また一つ、白竜会傘下の金融事務所を破壊した後、夜空を見上げていた。 確かに抵抗はあった。妖術使いもいた。だが、「幹部」と呼べるほどの人間には、ただの一度も遭遇していない。名古屋支部を壊滅させた時のような、絶望的な戦力差を感じることが、まるでなかった。


「……ん。」


隣に立つ駒が、軍服のような服の袖を小さく引いた。彼女もまた、包帯の奥から、何も感じられない「空っぽの戦場」に疑問を抱いているようだった。


「ああ、わかってる。……何か、キナ臭え」


その違和感は、ボンリスによって確信に変わった。 『襲撃を中止しろ。今すぐだ』 ボンリスからの緊急通信を受け、アクトと駒は、次の襲撃予定地だった闇オークション会場から即座に離脱した。



「……で、俺たちはいつまでこんな所に隠れてんだ」


数日が経過した。 アクトと駒は、ボンリスの指示通り、一切の足取りを消し、名古屋市内の雑居ビルがひしめくエリアの、安宿や漫画喫茶を転々としていた。


今夜の宿は、古びたビジネスホテルのツインルーム。アクトはベッドの上でノートパソコンを開き、ボンリスが構築したダミーのサーバーを経由して、情報収集に努めていた。駒は、もう一つのベッドで静かに漫画を読んでいたが、そのパーカーの襟元からは、常に4本の包帯がアンテナのように伸ばされ、周囲の警戒を怠っていない。


「(……何もねえ)」


アクトは舌打ちをした。 警察の無線、裏社会の掲示板、どれを見ても「白竜会が本格的に動いた」という情報がない。まるで、愛知県が壊滅的な被害を受けていることなど、存在しないかのように、全てが静かだった。


「なあ、駒。お前、何か感じるか」


駒は漫画から顔を上げ、包帯の奥の瞳でアクトを見た。そして、ゆっくりと首を横に振った。

(……何も感じない。それが、一番不気味だ)


その時だった。 アクトのスマートフォンが、けたたましく振動した。暗号化されていない、ただの通常回線。 表示された名前は――『ボンリス』。


「!?」


アクトは即座に通話ボタンを押した。

「ボンリス!お前、この回線でかけてくるなんて、何があった!?」


『……時間がない。今すぐそこから逃げろ』


ボンリスの声は、いつもの冷徹さを欠いていた。焦り、そして、アクトが初めて聞く「恐怖」のようなものが滲んでいた。


「逃げろって、どこへ――」


『いいから聞け、アクト!我々は、罠に嵌っていた!』



ボンリスの言葉は、アクトの脳をハンマーで殴りつけるような衝撃をもたらした。


『気づいたんだ……我々が襲撃した施設、そのリストを再検証した。そのほとんどが、上層部に反抗的な連中のシマか、全く価値のない幽霊施設だった!繋がっていないんだ、何もかもが!』


「……どういう、ことだ……?」


『文字通りだ!我々は、白竜会本家の"お掃除"に利用されたんだ!奴らにとって不都合な"不穏因子"を、我々が勝手に処分して回っていたに過ぎん!』


ボンリスの口調が荒くなる。


『関東の抗争?鷹龍軍団との戦いか?あれはとっくに終わっている!数週間前にな!白竜会は、もうお前たちに全戦力を差し向けられる!』


「待て、待て待て!じゃあ、俺が1番最初潰したあの『名古屋支部』は――!」


『名前だけだ!』


ボンリスの叫びが、アクトの鼓膜を突き破った。


『あれは、抗争で出た死体を密売ルートに流すための中継点に過ぎん!お前がそこを潰したから、奴らは"建前"としてお前を追った!だが、血眼になどなっていなかった!お前が「白竜会に血眼になって探されている」と勝手に勘違いし、俺と組んだ!……奴らは、最初から俺たちの掌の上で踊らせていただけだ!』


アクトは絶句した。 自身らは何をやってたのだろうか。自分の覚悟は。ボンリスと組んだ、この選択は。 全てが、仕組まれていた。


「……じゃあ、今、俺たちを追ってきてるのは……」


『……ああ。掃除が終わったからな。ようやく"幹部"が、俺たち"害虫"の駆除に動いたらしい』


「"動いたらしい"?……動いたか、じゃねえ。誰が来た!」


アクトが怒鳴った、その瞬間だった。


ジジジジジジジジッ!


スマートフォンの接続が、急激に悪化していく。まるで、強力なジャミング電波に妨害されているかのように、ノイズが走る。


『……っ!まずい、"結界“が展開され……!』


「ボンリス!おい、聞こえねえぞ!もっとはっきり喋れ!」


『……奴と戦うな!逃げろ、アクト!奴は……一個中隊……いや、一つの「災厄」と……!』


ボンリスの声が、ノイズの海に飲まれていく。


『……もはや人間じゃない……"鬼人"だ……!』


「おい!ボンリス!聞こえやすくしろって――」



アクトが、途切れ途切れの通話に苛立ち、ホテルの窓に近づこうとした、その刹那。


「ン!!」


それは、駒が発した、「声」に近い「叫び」だった。


彼女の包帯が、アクトの警告を無視し、彼の胴体をぐるぐる巻きにした。


「なっ!?何しやがる、駒!」


ゴッ!


アクトが抗議する間もなく、駒は全パワーを込め、アクトの体を、彼が立っていた場所から真後ろへと思いっきり引っ張り投げた。


ドゴォォォン!!


アクトの体は、ホテルの壁を突き破り、そのまま道路の向こう側にある雑居ビルの壁に激突した。


「ぐ……っ!テメェ、いきなり何しやが……!」


アクトは瓦礫の中で、信じられないものを見た。


彼が、さっきまで立っていた場所。 ホテルの窓際の空間。 そこが、まるで**巨大な何かに"食いちぎられた"**かのように、無くなっていた。


爆発ではない。溶解でもない。 空間そのものが、そこにあったはずの床も、壁も、アクトが持っていたスマートフォンさえも、不自然なまでに綺麗にえぐり取られ、消滅していた。


アクトは、くるりと体を捻って着地すると、全身に悪寒が走るのを感じた。


「……なんだよ……あれ……」


空気が、重い。 見上げると、夜空が濁っていた。低い雲が垂れ込めているのではない。高濃度の「何か」が、街全体を覆い隠そうとしていた。



その「何か」の中心から、それは現れた。


コツ、コツ、と。 夜の静寂を切り裂く、重い杖の音。


闇の中から、一人の老人が、ゆっくりと歩いてくる。 黒檀の杖を携え、身に纏うのは最高級の黒紋付羽織袴。その威風堂々とした佇まいは、まるで古代の王のようだった。


そして、彼の両脇には、二匹の巨大な「獣」が従えられていた。 それは、名古屋城の金鯱を模した、黒鉄(くろがね)の鯱だった。それはただの生物ではなく、男の金妖術で従えられている二匹の妖怪。その黒い鱗は、街灯の光を一切反射せず、ただ闇を吸い込んでいた。


男は、アクトと駒の二十メートル手前で立ち止まった。


圧倒的なプレッシャー。 空気が重いのではない。この男が放つ「圧」が、重力そのものを捻じ曲げているかのようだ。


アクトは、自分が「不死者」であることを、この瞬間ほど感謝したことはなかった。もし生身の人間ならば、この圧に当てられただけで、心臓が止まっていただろう。


「……貴様が、アクト。そして、そちらが、あの施設の生き残り、か」


老人の声は、地響きのように深く、重かった。


「我が名は、鬼龍院 鉄心(きりゅういんてっしん))」


彼は、杖を軽くアスファルトに突き立てた。


「白竜会、愛知"本"部長。……お前たちが掃除してくれた、"元"名古屋支部の、本物の支部長だ」


アクトは、新しく受け取った剣の柄を握りしめた。その手は、興奮か、恐怖か、わずかに震えていた。


「……テメェが、ボンリスの言ってた『災厄』か」


駒も、アクトの隣に並び立つ。彼女のパーカーの襟元から、二本の包帯が噴き出し、空中で二つの巨大なボクシンググローブの形を成した。


鬼龍院 鉄心は、二人の殺気を受け止めながら、ゆっくりと目を細めた。


「『災厄』、か。……懐かしいな。いつの時代か、そう言ってくるものは大勢おった。さて、小童(こわっぱ)ども。お前たちのお陰で、腐った枝は全て刈り取られた。……礼を言うぞ」


鉄心は、そう言って、僅かに頭を下げた。 その、あまりにも丁寧な所作に、アクトは最大の警戒を抱いた。


「だが、お前たちという『害虫』は、まだ残っている」


鉄心は、黒檀の杖をゆっくりと持ち上げた。 二匹の黒鉄の鯱が、グルル、と金属の摩擦音のような唸り声を上げる。


「鯱よ。……遊んでやれ」


二匹の獣が、アクトと駒に向かって、空中を泳ぐように飛んでいった


――と、見せかけて


カシャッ!


鉄心がそう呟いた瞬間、二匹の鯱はアクトたちを飛び越え、彼らの背後に着地し、退路を断った。


「なっ!?」


アクトが反応するより早く、彼らの周囲を取り囲む全てのビルの窓が、一斉に内側から破られた。


カッ!


数十個の高光量ライトが、アクトと駒を照らし出し、完璧なキルゾーンを作り出した。


「……撃て」


鬼龍院 鉄心の冷たい号令と共に、ビルの窓から突き出された数十本のアサルトライフルが、一斉に火を噴いた。


愛知県における抗争は、この瞬間、「遊び」から「狩り」へと、その局面を決定的に変えたのである。

人物紹介 鬼龍院 鉄心

年齢 65歳

誕生日 3月3日

好きなもの 干し柿 強者 便利な相手

嫌いなもの 餅 弱者 使えない人

この章のラスボス、、、、、、と見せかけた中ボス。妖々夢の妖夢みたいな立ち位置かな?それか紅魔郷の咲夜か。

この世界では最強格の金妖術の使い手であり、おじいちゃん。まあ妖力は筋力と違ってあまり衰えないから、、、、、、

昔は今よりエグく、近距離戦でも地獄、遠距離戦でも地獄。 まあ今は高齢化の影響か身体能力が著しく低下しておりまして、、、、、、トラウマは全くないが、強いて言えば正月に餅を喉に詰まらせて死にかけたこと。本人曰く戦場でも見ない走馬灯を見たとか。 みんなも気をつけよう。

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