少年 少女のからくりを知る
なんか1話の部分パクリ疑惑が出ました。
感想 読んでみたけどほぼ一緒でした。ああいうの書くのが僕だけじゃなく、同族がいて嬉しかったです。
でもほんとに瓜二つなので少し変えようと思います。 流石にね。
安っぽいシャンデリアが放つ、妙に生々しい赤黒い光が、ラブホテルの床に散らばるアクトの折れた剣の残骸を照らしていた。
少女――アクトが「駒」と名付けた不死者は、ベッドの端に体育座りのような形で静かに座っている。顔を覆う包帯は彼女の能力で伸ばしている包帯らしく、変えたりしなくてもいいらしい。そして、警戒心が薄れたのか、あるいは警戒するほどの余力がないのかわからないが、今はベットでゴロゴロしてる。まあ、包帯を新しく着替えたパーカーの裾の中から伸ばしており、いつ襲われても応戦できるようにはしてあるが。
アクトは、駒から数メートル離れた安楽椅子に深く沈み込み、スマートフォンの通話ボタンを押した。コール音は一回。即座に、スピーカーから声が聞こえた。
『……首尾は』
「あー、ボンリス?俺。……一応、終わった。例の児童養護施設、"光明の家"は、まあ、"解体"しといた」
アクトの口調は、先ほどの死闘が嘘のように砕けていた。疲弊しきった精神が、彼を不死者になる前の、ただの高校生のような無気力なトーンに戻していた。
『……そうか。データは確保できたか』
「いや、それが……ちょっとした"事故"があってな。地下にいた連中ごと、データも何もかも吹き飛ばしちまった」
『……"事故"だと?』
ボンリスの声が、わずかに低くなる。
「ああ、事故だ。……なあ、ボンリス。あの施設、白竜会も知らねえ秘密の研究やってたらしくてな、俺みたいな不死者の人工生成だ」
アクトは、ベッドでゴロゴロするのを飽きたのか、包帯で天井にアスレチックのようなのを作り、それで遊んでいる駒に視線を送った。
『……ほう』
「その実験体、俺が見つけちまった。……いや、俺が"解放"しちまった。そいつが暴走して、地下は全部おシャカ。俺も殺されかけたぜ。てか、一回死んだするし。」
アクトは、駒に聞こえないよう、わざと声を潜めて続けた。
「でだ。ここからが本題。そいつ、俺と同じ不死者で、俺のグリム・エンドみたいな異能力も持ってる。包帯を自在に操る、とんでもねえパワーだ」
『……』
「白竜会に内緒で実験されてたせいで、あいつらを死ぬほど憎んでる。で、色々あって……まあ、成り行きだが、俺の仲間にした」
アクトは「仲間」という言葉を使った自分に、わずかな違和感を覚えながらも、そう言い切った。
電話の向こうで、ボンリスが数秒間、息を止めたのが分かった。そして、スピーカーが拾うか拾わないかギリギリの音量で、彼がこう呟くのを、アクトの耳は捉えていた。
「(……そうか、やはり、あれは"偽物"だったか……)」
「ん?なんか言ったか?」
『……いや、なんでもない』
ボンリスは即座にいつもの冷徹な口調に戻った。
「不死者の実験体だと?しかもお前と同質の異能力。……面白い。非常に興味深いサンプルだ。名前は?」
「駒。俺がさっき付けた。細川 駒」
『駒、か。……それで、お前の"仲間"は、今どうしている』
「目の前でおとなしく座って..ないな。なんか遊んでる。……ああ、そうだ。もう一つ、聞きてえことがある」
アクトは、先ほどの戦闘で感じた最大の疑問を口にした。
「駒のやつ、単純な身体能力強化の率が、俺より明らかに上なんだよ。俺が二式でガチガチに固めても、あいつの包帯のラッシュは重すぎた。同じ不死者でも、妖力を使った身体能力強化の効率が違いすぎる。なんでだと思う?」
『……妖力強化の効率、か』
ボンリスは再び思案に沈んだ。
『……電話で話す内容ではないな。その"駒"とやらを、俺も直接診断する必要がある』
ボンリスは結論を出した。
「次のターゲットへ向かえ。愛知県の南東、白竜会系の物流倉庫だ。そこで合流する。……お前の"新しいオモチャ"、この目で見させてもらうぞ」
「オモチャじゃねえっつーの。……分かったよ。そこのC-4倉庫だな。じゃあ、後で」
通話が切れ、部屋に静寂が戻る。アクトは立ち上がり、駒に向かって折れた剣の柄を振って見せた。
「行くぞ、駒。お前を俺の協力者に紹介してやる」
駒は、包帯の奥の瞳でアクトをじっと見つめ返した後、静かに立ち上がり、こくりと頷いた。
合流地点のC-4倉庫は、海沿いのコンビナート地帯にあり、潮の香りと鉄錆の匂いが混じり合っていた。
アクトが駒を連れて倉庫の裏口に着くと、そこには既に、防弾ジョッキを身につけ、まるで兵士のような装備をしているボンリスが、まるで闇から染み出したかのように立っていた。
「……遅かったな、アクト」
「うるせえ。道が混んでたんだよ」
アクトが軽口を叩くと、ボンリスの視線はアクトを通り越し、彼の背後に立つ駒へと固定された。駒は、ボンリスの異様な姿と、彼から放たれる非人間的なプレッシャーに当てられ、パーカーの袖口から警戒の包帯を数本、這い出させていた。
「……これが"駒"か。確かに、アクトと同質の気配だ。だが、どこか違う」
ボンリスはアクトを無視し、駒に向かってゆっくりと歩み寄る。
「動くな。簡単なテストを行う」
ボンリスはガスマスクの奥から低い声で命じると、軍服のポーチから、一本の黒曜石のような、鈍い光を放つロッド(棒)を取り出した。長さは三十センチほど。宗教的な装飾は一切ない、ただの無機質な黒い棒だ。
「これに触れてみろ」
駒はアクトの顔を見た。アクトが「平気だ」と頷くのを見て、おそるおそる手袋(アクトが予備で渡したものだ)を外し、素肌の指先で、その黒いロッドに触れた。
パァッ!
次の瞬間、黒曜石のロッドは、まるで内部から純白の光を灯したかのように、眩い白色の光を放った。
「なっ!?」アクトが驚きの声を上げる。
「……ほう。やはりか」ボンリスは満足げに頷いた。魔力、すなわち俺みたいな欧州人の血が流れている人が大抵持っているエネルギーの含有量を測るリトマス試験紙のようなものだ。これほど強い白光……純粋な魔力資質が極めて高い証拠だ」
「魔力!?てことは、妖力と魔力の身体能力を上げ幅が違うのか?」
「いや、ほぼ同じだ。魔力は西洋の神秘学体系、妖力は東洋の霊脈体系だが、そういう所以外はほぼ共通している。。……さて、次だ」
ボンリスは今度は、懐から一枚の、血のように真っ赤な護符(紙)を取り出した。
「今度はこれに触れろ」
駒が再び指先で触れる。
ボッ!!
護符は、まるでガソリンをかけられたかのように、一瞬で激しい炎を上げて燃え上がり、灰になった。
「……アクト。お前、こいつはとんでもないぞ」
ボンリスの口調が、初めてわずかな興奮を帯びた。
「どういうことだ?」
「こいつは魔力と妖力の両方を持っている。それも、どちらも常人離れしたレベルでだ。こんなハイブリッド、俺も文献でしか知らん。……いや、文献の記述すら疑わしいと思っていた」
ボンリスが興奮気味に説明している間、当の駒は、何が起こっているのか全く理解できていなかった。彼女は、自分の両手を不思議そうに眺めた後、パーカーの襟ぐりから包帯を一本器用に伸ばし、空中でくるりと丸めて、完璧な「?」のマークを作って見せた。
その光景に、アクトはそれを呆れたような目で見つめた。
「……こいつ、話についていけてねえぞ」
ボンリスは咳払いを一つして、なぜか手に持っていた死神の面を被った。
「……説明しよう。アクトは駒があの施設で、何かを『体から抜き取られた』と言っていた。正しいか?」
駒は「?」の包帯を消し、真剣な顔つきでこくりと頷いた。
「恐らく、奴らはお前が魔力と妖力の二つを持ってることに気づいた。そして彼等は不死者を人工的に作ろうとしていたのだろう。そして、そのためには不死者も強力な個体じゃなければいけないと思ったはずだ。そして、無理やりお前の体の中から魔力と妖力を抜き取った。魔力や妖力は、筋肉と同じでどんどん使い続ければ量は上がっていく。そうしてそんな量になったんだろう。あと、そうして体の中から抜き取ることで、魔力と妖力の流れを強制的に掴ませた。だから誰に教わってなくても無意識に体に魔力と妖力を循環させ、身体能力強化をすることができた。」
ボンリスはアクトに向き直った。
「アクト、お前が『妖力を使った身体能力強化』と呼んでいるものは、正確には『体内に流れる妖力を循環させ、肉体を活性化させる技術』だ。これはある程度妖力があれば誰でも使える。そうだろう?」
「ああ、知ってる」
「だが、彼女は違う。彼女は妖力と魔力、二つの異なるエネルギーを同時に循環させ、肉体を強化している。お前が電池一つで動いているとすれば、彼女はお前より電力が強い電池二つで動いたるもんだ。お前より強化率が高いのは当然だ」
「……」
アクトは、ボンリスの言葉に、ただ「いいな」と呟くしかなかった。自分もグリム・エンドというチート能力を持っているが、基礎スペック(身体能力)でこれほど差をつけられているとは。
「納得したか?納得したら仕事だ」
ボンリスは冷たく言い放ち、C-4倉庫の巨大なシャッターを見上げた。
「ここは白竜会の物流拠点の一つだ。表向きはただの倉庫だが、地下には違法な武器弾薬が備蓄されている。我々の目的は、その破壊だ」
「待て。俺と駒の二人で、ここを潰すのか?」
「いや」ボンリスはガスマスクの奥の目を光らせた。「ここで連携チェックだ。どれだけ連携できるかをここで確かめるぞ。」
ボンリスはそう言うと、アクトが止める間もなく、ポーチから小型の爆弾を取り出し、シャッターの継ぎ目に設置した。
「3、2、1……」
ドガアアアアン!!
凄まじい爆音と共に、シャッターが内側に吹き飛んだ。
「奇襲だ!敵襲!」
倉庫内から怒号と、アサルトライフルの発射音が響き渡る。
「アクト、駒!まずは生き残ってる奴らを殲滅するぞ!」
ボンリスはそう叫ぶと、自らも二丁拳銃を抜き、闇の中へと消えていった。
「あの人、いつも無茶苦茶なんだよ!」
アクトは悪態をつきながら、新しく受け取った剣を抜き、二式を全身の服を媒介にし鎧のようにする。隣では、駒がパーカーの袖から二つの巨大な包帯拳を形成し、臨戦態勢に入っている。
「駒!俺が突っ込む!援護しろ!」
「(こくり!)」
アクトは弾丸のように倉庫内へ突入した。銃弾が降り注ぐが、二式の鎧がそれらを弾き、あるいは貫通しても即座に再生する。
「化け物め!」
構成員の一人がアクトに切りかかるが、アクトはそれを剣で受け流し、一式でカウンターの斬撃を放ち、胴体を真っ二つにした。
「こっちはどうだ!」
別の構成員が、アクトの背後から駒に襲いかかる。
ドゴッ!
駒が振り向くより早く、彼女の袖口から伸びた包帯拳が、構成員の顔面を壁ごと粉砕した。
「……お前、背中にも目があんのかよ」
アクトと駒。不死身の二人が暴れ回る戦場は、もはや「戦闘」ではなく、一方的な「殲滅」だった。
C-4倉庫の"軽い"殲滅は、数分で終わった。
アクトと駒のペア、そしてボンリス単独での襲撃は、その後も続いた。
アクトと駒のコンビネーションは、日を追うごとに洗練されていった。アクトがグリム・エンド一式で精密な斬撃や機動力を担い、駒が圧倒的なパワーと防御力で正面から敵を粉砕する。不死身の二人が前線で暴れ回る様は、白竜会の構成員たちにとって悪夢そのものだった。
ボンリスは単独で、暗殺や爆破、現代兵器を使った知能プレイで次々に破壊していった。
愛知県内の白竜会の拠点は、まるで伝染病が広がるかのように、次々と沈黙していった。
守りが特に硬い、本部直轄の最重要拠点以外、ほとんどの支部や施設が破壊され、白竜会の愛知県における支配力は、約三分の一ほどになってしまった。
名古屋の裏社会は、二人の不死者と一人の暗殺者によって、かつてない混乱の渦に叩き込まれたのである。




