少年 逃してしまう。
三日坊主にならないでしょ。 ここまでやったら(謎の自信)
コンクリートが砕ける鈍い音が、夜風に混ざって消えた。
女の体が黄色い光の弧に叩き飛ばされ、隣のビルの壁面に突き刺さる。砕けたガラスが街灯に反射し、まるで星の雨みたいに夜空を散らした。
アクトはすぐさま、左手の指先から伸びる「黄色い斬撃」でコンクリートの破片を掴むようにして体を止める。
衝撃を殺す間もなく、そのまま重力を味方に変えて、腕の斬撃を縮ませ――自分の体を弾丸のように撃ち込んだ。
「――まだ終わってねぇ!」
突入と同時、耳を裂く破裂音。
女がすでに炎弾の妖紙を発動していた。小さく、だが鋭く。まるで心臓を狙うような速度で。
アクトは反射的に剣を構え、炎弾を切り裂く。爆ぜた火花が頬を焼いた。
視界が赤く染まる中、彼女が動く。
薄暗いビルの中で、包丁が閃く。まるで光の短剣。
アクトの剣とぶつかり、甲高い金属音が響き渡る。
ガンッ――ガンッ――ギンッ!
剣と包丁が何度もぶつかり、散った火花が床を焦がす。
彼女の動きは軽く、無駄がない。小柄な体で、まるで風のように滑る。
一撃を弾いても、次の瞬間には背後に回っている。
「ちょこまかと……!」
アクトは斬り上げ、振り下ろし、押し込む。
だが女は後退せず、紙一重で避ける。まるで寸止めの格闘家。
包丁が喉を掠め、火花が散るたび、血と鉄の匂いが混ざった。
その数合目、アクトの剣が相手の包丁を弾き飛ばす。
刃が空中で回転し、柱に突き刺さる。
今だ、とアクトは踏み込んだ。
「終わりだッ!」
袈裟斬り。
彼女は刃の間際で体を反らせ、頬を掠めて剣が風を裂いた。
同時に――突きが来る。
包丁がなくても、拳で。肘で。
鋭い突きがアクトの鳩尾を狙う。
「ぐっ――!」
息が詰まる。
アクトは後ろへ飛び、息を吐きながら剣から黄色い斬撃を伸ばし、切り裂こうとした。
だが彼女は舞うように避ける。まるで訓練された武術家のように、極限の距離を見切っていた。
「嘘だろ……どこでそんな動き覚えた……」
応えるように、女は包丁を拾い直す。
そして、両手で妖紙を数枚放った。
「炎弾」「水針」。
そのすべてを同時に――しかもためらいなく。
ドドドドドッ!!
赤と青の閃光が、嵐のように襲いかかる。
アクトは反射的に靴底から黄色い斬撃を伸ばし、その反動を利用しコンクリートの天井をぶち破り、上階へと行った。
背後で床が爆ぜ、壁が削られる。
上階に着いた瞬間、天井をぶち破った衝撃で折れた骨が治るのを確認しながら、アクトは手をかざした。
「螺炎!」
炎が渦を巻き、回転する竜のように女へと襲いかかる。
爆風が天井を焼き、蛍光灯が落下した。
アクトは更に靴底から黄色い斬撃を伸ばし、その反動で自らを前へと加速させる。
まるで跳弾のような速さで女へと迫り――剣を振り抜いた。
「おらァッ!!」
だが、アクトと一緒に襲いかかった螺炎が消えた。
炎が、消えた。
「……なに?」
目の前で、女の符が淡く光る。
「鎮炎」――水と火の相剋妖術。
その効果は......熱や炎を消し去るというもの。
「そんな術……!」
アクトが言い終える前に、女の足元で妖紙が弾けた。
「水牢」
透明な球体が一瞬で形成され、アクトを包み込む。
「くそっ……!」
中は真空に近い圧力。呼吸が奪われる。
アクトは剣を突き立て、黄色い斬撃を放ち、何度も壁を裂こうとするが――歪んだ水膜が再生する。
女の姿は、もうそこにはなかった。
残るのは静寂と、水音だけ。
アクトの胸が重く沈む。
(……なぜ逃げた? 今、俺を殺せたはずだろう。)
息も整えれない状況で、思考する。
その瞬間、考えたくもない推測が脳裏を掠めた。
――自分を殺す前に、本来の目的を果たそうとしているのか?
その瞬間、アクトの中で何かがはじけた。
水牢を内側から爆発的に割り、妖力を振り絞って脱出する。
肺が焼けるように痛い。
だが止まっている時間はない。大丈夫。 死んでも自分は蘇る。
「……結婚式、だな」
彼女の言葉の断片が脳裏をよぎる。
アクトは濡れた髪を妖術で乾かし、ガスマスクを外す。
そして隠し持っていたスーツケースから、変装用のスーツを取り出した。
茶髪のウィッグ、メガネ、白いシルクの手袋。
鏡に映る自分を見て、皮肉げに笑う。
「まるで別人だな……俳優にでもなれそうだ」
そのまま結婚式場へと向かう。
夜の街が静かに光っていた。
式場の中では、純白の装飾と笑い声。
あまりにも平和な光景が、血に濡れたアクトには異世界のように見えた。
だが、女の姿は――ない。
その時、背後から声がした。
「アクトさん? どうしたんですか、その格好」
悠真だった。
アクトは一瞬、言葉を選びかけてから短く答える。
「……お前に脅迫状を送ったとされる最重要容疑者の女に、ビルの中で逃げられた。だからここにいるだろうとは思ったが.....」
「女? そんな人が.....でも、それだとしたらおかしいですよ。あなたの招待状は僕があげましたが、その女は持ってないと思いますけど?」
「別に招待された以外でもここに来れるだろう。例えば、従業員の誰かと入れ替わったり、そもそも隠れて動いてたり。」
ああ、確かにそうですねっと悠真は納得しているが、それでも女がどこにいるかは不明だ。 このビルの中にいない可能性すらある。
「招待状って、誰が渡せる?」
「新郎新婦の2人ですね。 一応あなたのは学校時代の親友だと説明しましたけど。」
悠真は首を振る。
アクトは小さく息を吐き、ポケットの中の妖紙を確かめる。
最低限の護身用。剣も斬撃も、持ち込みはできない。
だから今は――ただの参列者だ。
「……気をつけろ。何か、起こる」
そして、扉が開く。
司会者の声が響く。
結婚式が――幕を開けた。
※相剋妖術・・・相生妖術と同じようなノリで相手を打ち滅ぼして行く、陰の関係を妖術にしたもの。
その中の一つである鎮炎は、水と火の相剋妖術で、効果は周囲の火を消すというもの。効果の範囲は妖紙ごとに設定されてる。効果時間は一瞬のみ。火の妖術特攻で、チートのように見えるけど、欠点としては火の妖術を消す際には、消す対象の妖術に含まれてる妖力の二倍消費すること。あと自分も炎も消える。
相生妖術② 火生土
物が燃えればあとには灰が残り、灰は土に還るという意味です。
1.灼土妖術
火と土の融合体。地面を灼熱化し、溶岩のような妖力を操ります。
意外と実践的 まあ溶岩って約850℃から1200℃程度らしいからガスバーナー(約1700°C)より温度が低い。 と言ってもまあ使える方の妖術。
2. 灰妖術
火が燃え尽きた後に残る灰は、静寂と終焉の象徴とかいうすごいどっかの宗教でありそうな考え方な妖術。
できることは、灰は静寂と終焉の象徴らしいので、封印術や記憶がまるで灰に紛れるかのようになったり(?)できる。 でも灰如きに封印されたり記憶を封じられるのやだな。 ちなみに灰は妖紙に妖力を循環させて発動したら妖紙が勝手に燃えて出てきてそれで封印したりするんだとか。
3.陶妖術
火によって土が焼かれ、形を持つ(陶器みたいな)ということでできた妖術。
決して晴賢が作った妖術ではない。あの人は妖術師ではない(多分)。できることは土から武器などを出したり地形を彫刻することができる。 つまり元々の土妖術の効果(◯ガレン)とほぼ変わらない。強いていうならば生成したりするのが硬く脆くなることくらい。 ゴミかな?
4.内圧妖術
火が地中に熱を伝え、土の中で圧力が生まれること(おそらく変成作用のこと)を再現した妖術。
作者もこれらを深夜にノリと勢いで書いたので真偽は不明。 まあでも地面の下から力を噴出させる、振動や隆起を起こして攻撃したり足止めできる優秀な妖術。 原理は知らないけど。
5.再生妖術
火が命を焼き尽くし、土がそれを受けて新たな命を育むという自然の摂理に着目して作られた妖術。
効果としては死体などに新しい命を引き込むことができる。 例えば吉川さんが死んだとしましょう。 その人は車に轢かれて死に、いろんなところが欠けてます。 ですが、たとえ脳が無事なら、どこが欠けててもこれをやったら全て再生し、新しい命が誕生します。 ここで勘違いしたらいけないのは、別に吉川さんが生き返ったんじゃなくて、吉川さんの体に新しい魂が入り込んだみたいな感じです。 要するに蘇生魔法ではないということです。
6.刻印魔法
土は記憶を刻む媒体(墓、遺跡、土器など)。火がそれを活性化する。 らしい。もう過去に自分が何を考えてたか分かんない。
効果としては、土に刻まれた記憶を呼び起こすことらしい。多分ピラミッドとか行って発動させたらその時の風景が浮かぶのかな? でもこれ他のキャラの能力と被っちゃうからなぁ、、、、、




