表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不死となった少年は抗う為に剣を握る  作者: マジュルーム
演者は劇場を見て何を思うか
18/34

少年は抗う事を決意する。

2日連続! このまま毎日投稿の習慣に戻したいですね。

 ――風が鳴っていた。

 高層ビルの屋上、鈍色の雲が押し寄せ、空は鉛のように沈んでいった。

 アクトは剣を構え、対峙する女の輪郭を睨みつけていた。

 互いの距離、わずか十メートル。

 踏み込めば、殺し合い。退けば、死が待つ。   待たないけど。

 次の瞬間、アクトの全身が閃光のように動いた。

 剣を振り抜く。

 ――ビュンッ!

 空気を裂いて、黄色い斬撃が疾走した。目にも止まらぬ速度で、女の胴を薙ぎ払う。

 だが、女はわずかに身体を傾け、刃が掠める。黒髪の先端が、切断されて風に舞った。

「チッ……!」

 アクトは舌打ちと共に次の斬撃を放つ。

 連続する三条の光が、獣の爪のように交差し、女を切り裂かんと迫る。

 だが――避けた。

 女の身体が幻影のように揺らぎ、回避の動きがまるで舞踏のように滑らかだった。

「速ぇな……!」

 アクトの眉が跳ねる。

 女は返すように、両手を広げた。妖紙が数枚、風に舞う。

 ――炎弾。

 赤橙の光球が次々と生成され、アクトへと放たれる。

 その数、十。

 しかも炎弾は真っ直ぐではなく、微妙に軌道を逸らして交差するように飛ぶ。

 アクトは即座に足を滑らせ、左腕で妖紙を握り、発動させる。

 「炎壁」――。

 彼の前に赤い壁が立ち上がる。燃え盛る炎が盾のように広がり、迫る弾を焼き払う。

 だが、爆ぜた一発が壁の端を抜け、右頬を掠めた。

 熱と煙が皮膚を焦がす。痛みが走ったが、止まらない。

「……チマチマと!」

 怒号と共に、アクトは左手で妖紙を弾いた。

 「木杭」――。

 地面のコンクリートを突き破り、木の杭が槍のように女を貫かんと伸びる。

 だが、女は再び跳んだ。杭が空を突き抜け、破片が雨のように降る。

 アクトの剣が唸る。

 黄色い斬撃と木杭が交差する。

 視界が閃光で塗り潰され、爆風が屋上の空気を引き裂いた。

 屋上の柵が一瞬で吹き飛び、破片が宙を舞う。

「ハァッ!」

 アクトが突進する。

 炎と煙の中を、地面を滑るように駆け抜ける。

 女は後退しながら炎弾を放ち、アクトはそれを剣で切り裂く。

 ――爆発。火花。

 衝撃波で髪が乱れ、アクトのマスクが揺れる。

 視界が煙に覆われても、彼の足は止まらなかった。

「そこだッ!」

 刃と刃がぶつかる。

 金属音が甲高く響き、火花が散る。

 アクトの剣は力任せに女を押し込み、女の包丁が悲鳴を上げた。

 しかし女は目を細め、妖紙を一枚、足元に落とした。

「ッ――!?」

 瞬間、地面が光った。

 符に描かれた青い紋様が輝き、水の奔流が天から降り注ぐ。

 ――「瀑布」 それは陽炎と同じ設置方の妖術で、その効果は、、、、

「ぐっ……!」

 アクトの身体を、轟音と共に水が叩きつけた。

 尋常ではない圧力。まるで滝そのものが落ちてきたかのような水量が、全身を潰す。

 防御の妖力を張る間もなく、コンクリートが悲鳴を上げる。

 亀裂が走り、屋上が崩れた。

「しま――」

 言葉の途中で、床が抜けた。

 アクトの体が、重力に引きずり込まれる。

 天井が遠ざかる。

 割れた鉄骨が突き出し、コンクリートの粉塵が肺を焼く。

 ――ドガァァンッ!

 激突。

 背中に衝撃。

 床が割れ、さらに下の階へ。

 ――ドン! ドン! ドン!

 三階層を突き破り、アクトは瓦礫の中に叩きつけられた。

 肺の空気がすべて抜ける。

 口の中が血で満たされ、鼓膜が軋む。

「……ッ、くそ……!」

 全身が軋む痛みの中、アクトは立ち上がる。

 上を見上げれば、女の姿が、壊れた屋上の縁に立っていた。

 見下ろす瞳は、まるで獲物を見つめる獣のようだった。

 アクトは唇の端から血を拭い、剣を握り直す。

 その瞳に、怒りと憎悪が宿る。

「……まだ、終わっちゃいねぇよ」

 コンクリートの粉が、白い煙のように宙を舞っていた。

 崩れた床の破片が散らばる中、アクトは息を荒げながらゆっくりと身体を起こした。

 全身がずしりと重い。水で濡れた軍服が肌に張り付き、視界がぼやける。

 だがそれも時間の問題だ。 いくら傷ついても、いくら疲れてもこの体はすぐに回復する。

 頭上の穴から、わずかに光が差し込む。

 女の影がそこに立っていた。

 黒い服が風に揺れ、その顔は見えない。けれど、あの笑い声だけは、風の中でもはっきり届いた。

「まだ動くんだ? しぶといね」

 挑発。

 そんな彼女の目は面白いおもちゃを見つけたような、嬉しそうな目だった。

 

「……言ってろよ」

 アクトはその挑発に乗ることもなく、息を整え、剣を構えた。

「...本当に、何でお前はこの結婚式を狙う?絶望した顔が見たい みたいなこと言ってたが、ここで結婚式があるなんて知ってたのか? それに...」

アクトは何か思うように間を開け、

「どこからそんな数の妖紙を仕入れた?」

そう短く問いた。

「ふふふ。 妖紙のことは教えないけど、私がここに来た理由は予想がつくんじゃないかしら? 彼女を恨んでいる人、新郎、新婦のことが先に好きだったのに! ってのの他の理由もあるんじゃないかしら?例えば...

『私の大切な人間を傷つけて!』 とかね!」

答え終えると女は螺炎をアクトに放ち、自分は結婚式場があるビルに向かってジャンプした。

アクトは腰の妖紙を抜き取り、手のひらに流し込むように妖力を通す。

 妖紙が淡く赤く光り、周囲の空気が一気に熱を帯びた。

「噴炎!」

 叫ぶと同時に、アクトの足元から炎が噴き上がった。

 まるでジェットのように炎が吹き出し、アクトの身体を一気に上へ押し上げる。

 焼ける空気の匂いと、轟く炎の音。

 アクトは螺炎が直撃する直前、窓ガラスを突き破り、屋外に飛び出した。

 火の粉が風に舞い、夜の街の光を赤く染めた。

「っらあああああッ!!」

 炎の中を突き抜けながら、アクトは剣を振るう。

 黄色い斬撃が、尾を引く光線のように女へと伸びた。

 その軌跡は一直線――だが、女の反応も速かった。

「炎翼!」

 女が妖紙を両手で握り潰した瞬間、背中から炎が噴き上がった。

 それは翼の形を成し、まるで鳥のように羽ばたいた。

 彼女は、黄色い斬撃を、文字通り宙を飛びながら避けた。

 赤と橙が入り混じる光が、夜の空気を染めた。

 ――美しく、そして恐ろしく。

 アクトは眉をひそめる。

 あれはただの回避じゃない。

 攻撃と防御を同時に成立させる高位の妖術――。

「……クソ、器用な真似を」

 炎の翼が羽ばたくたびに、熱風がアクトの頬を打つ。

 女は空中を滑るように旋回しながら、再び妖紙を散らした。

 青白い光がいくつも生まれる。

 ――水針。

 無数の水の矢が、アクトの周囲を囲むように飛来する。

 アクトは即座に剣を振り、火花のように空中で斬り払った。

 切り裂かれた水針が霧となって弾け、頬を濡らす。

 だが、次の一発は防ぎきれなかった。

 左腕をかすめ、浅く血が滲む。

「ちっ……!」

 ほんの一瞬、痛みで動きが鈍る。

 その隙を狙って、女は再び高度を上げる。

 まるで空そのものを支配しているような余裕のある動きだった。

 だが、アクトの目が笑った。

「……逃がすと思うかよ」

 彼の左手が、再び妖紙を掴む。

 指先でちぎるように破り、呪句を吐く。

 「――烈風」

 その言葉と同時に、空気が震えた。

 風が唸り、女の身体を押し上げていた炎翼が、大きく揺らぐ。

 バランスが崩れた。

 風圧に煽られ、女の姿勢が一瞬乱れる。

「今だ……!」

 アクトは剣を振り抜いた。

 黄色い斬撃が空を裂き、一直線に女へ。

 避ける暇など与えない。

 風の流れすら操るように、斬撃が女の進路を塞ぎ――

 女は包丁で斬撃を防いだが、その勢いまでは殺せなかった。

「がっ……!」

 女の身体が弾かれたように吹き飛び、背中から隣のビルの窓に叩きつけられた。

 ガラスが爆ぜ、鋭い破片が光る。

 女の姿が建物の中に飲み込まれる。

 鈍い音。崩れる什器の音。

 しばらくして、静寂。

 アクトは息を荒げながら、屋上の縁に着地した。

 煙が上がる瓦礫の中で、剣の刃が鈍く光る。

「……これで終わりじゃねぇんだろ?」

 遠くの窓の奥、黒い影がゆっくりと立ち上がった。

 女だ。

 血が頬を伝っても、その笑みはまだ消えていない。

「終わり? これからが始まりよ」

 アクトの背筋に、再び熱が走った。

 火と風が交錯する戦場――。

 互いの妖力がぶつかり合い、夜の街を照らす光が、戦いの続きを告げていた。

用語解説 相生妖術 ① 木生火


相生妖術とは、相性のいい二つの霊質を持っている場合にのみ使える妖術です。元々五行思想には相生という考え方があり、

「順送りに相手を生み出して行く」

という意味ですが、何を思ったか昔(今)の妖術師達は、

「これを利用して、五つの霊質一つ一つだけでは出せない妖術を作ろう」

とかいう考えにいたり、さまざまな妖術を生み出したので、それを出します。

今回は木生火。

「木は燃えて火を生む」

という考え方から作った妖術を下に出します。

1. 熱波妖術

木が火を生むという流れから、「熱」そのものを操る妖術で、「火」一つでも熱を操る妖術はありますが、熱波妖術の方が少ない妖力でより高い温度の熱波を放てる。その最大の武器は温度の高さ。少なくとも300度以上の熱波であり、妖力を循環させてないと、瞬時に体は炭化し、気管支は火傷になるなど即死級で危ない技です。....とはいったものの普通に鬼火とか炎弾の方が熱いですし、妖力で循環さえしとけばちょっと暑いなくらいで済んじゃう。 じゃあもっと熱波の温度を高めろとなるけど、、、普通に直接炎出す方が妖力を少なく抑えれちゃう。メリットとしては範囲が広いことくらい。

2.光妖術

火は光を生む。木が火を生むなら、間接的に「光」を生むとも言えるとかいうこじつけで生まれた妖術。

よくあるファンタジーみたいな浄化なり回復なり身体能力強化は一切なく、出せるとするならば◯陽拳みたいなことと光の槍を出したりすることくらい。 だけどもこれもこれで普通に火の槍を作った方が効率がいい。 まあ光の槍作った方が威力? 硬さ?は上だけど。   雀の涙くらい。

3.香・煙妖術

木が燃えると香りや煙が出る。これを妖術的に昇華させたもの。

これが木生火の中でも1番使えるまであり、相手をアヘアヘさせたり、眠らせたり、毒を吸わせたりできる。

ちなみにこれは紀元前くらいからある妖術らしく、これで好きな相手のところに媚薬を漂わせ、チョメチョメするのが定番らしい。   今でもやってるんだとか。


4.鼓動・振動妖術

木が火を生む=生命がエネルギーを生むという解釈から爆誕した某ドラゴン・格闘タイプのポケモンが使いそうな妖術。

その名の通り空気や地面に振動を出して揺らしたり相手を飛ばしたりするもの。 だけど土の霊質の相生妖術や相剋妖術で大体同じことできてこれよりもはるかに威力が高いためあまり使わない。   そもそも火の霊質の時点でかなり攻撃的な妖術が多くて攻撃用の妖術は開発する意味ないし、木もアシストなどで活躍できるようなサポート型の妖術が多いから、そもそもこの二つの霊質を持ってたら相生妖術を作る意味がほぼないからしょぼいのばっかってのはあるけど、、、、、

5.情熱・精神妖術

火は感情や情熱の象徴。木が火を生むなら、精神の高揚を生むという妖術。

つまり受けた相手(自分)全員が松◯修造になる妖術。

あの人は本当はネガティブとかちょくちょく聞くけどこれはマジでみんな熱血体育系教師になる。鍛錬する時によく使うらしい。 デメリットはその代償で切れたらしばらくネガティブ思考てんこ盛り人間になること。

6. 色彩妖術

火が生むのは光だけでなく「色」でもあるという考えから爆誕した。

能力としては温度を変えなくても火の色を青や黄色にでき、他にもいろいろな色の炎の出来、花火を出せる。 かっこいいけど夏しか使い場がない模様。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ