少年は戦う事を決意する。
やっぱうちの主人公は正義の味方ではない。 改めて思いました。まあ正義の味方なんて書くつもりなんてないけど。
結婚式の開館まで、残り十五分。 仙台の高層ビル「セレスタタワー」の最上階、ルミナス・ホールは、式の準備を終え、静かにその時を待っていた。 スタッフたちは最終確認に追われ、来賓の一部はすでにロビーに集まり始めている。だが、その喧騒の裏で、アクトは再び姿を消していた。
黒い軍服に身を包み、ガスマスクを装着し、軍帽を深く被る。 その姿は、戦場の亡霊のようだった。 そして、彼の姿を隠すのは――初伝妖術『蜃気楼』。
光を屈折させ、周囲からは「誰もいない」ように見える。 ただし、妖力の感知に長けた者には、もやもやとした違和感が残る。 それでも、式場内を巡回するには十分な隠蔽力だった。
(……あの女はどこだ。陽炎は反応しない。爆弾も見つからない。だが、何かが起きる)
アクトは、式場の図面を脳裏に浮かべながら、静かに歩を進めていた。 彼の心は、怒りと焦燥に満ちていた。
(俺を殺した。あの女は、俺を殺した。式を壊そうとしてる。俺の依頼を妨害する。 .....後ついでに悠真の願いを踏み躙ろうとしてる。……許さない)
彼の手には、片手剣。 黄色い斬撃を放つための媒介。 そして、腰には妖紙の束。 その中には、火・木の霊質に対応した術式が揃っていた。
開館まで、残り五分。 その時だった。
――カサッ。
微かな紙の音。 アクトは即座に振り返る。 祭壇の裏、白い花が飾られた場所。 そこに、黒い影がしゃがみ込んでいた。
(……いた)
女は、黒いワンピース姿のまま、祭壇の中央――新郎新婦がキスを交わす予定の場所に、妖紙を貼ろうとしていた。 その妖紙には、赤黒い紋様が浮かび上がっている。
『爆炎』――火妖術の中でも、広範囲に爆発を起こす術式。 式場の中央で発動すれば、来賓も新郎新婦も、誰一人無事では済まない。
「……させるかよ!」
アクトは、剣を構えた。 黄色い斬撃を、周囲を傷つけないように、突き伸ばす。 空気を裂くように、鋭い光が一直線に女を貫こうとする。
だが――
女は、まるで予知していたかのように、斬撃を紙一重で回避した。 そして、包丁を抜き、アクトに向かって突進してくる。
「チッ……!」
アクトは蜃気楼を解除し、正面から剣を構える。 二人の刃が、式場の静寂を切り裂く。
――キィン!
金属音が響く。 アクトの剣と、女の包丁がぶつかり合う。 火花が散り、空気が震える。
「……お前は、何がしたい。誰のために、こんなことを」
アクトの問いに、女は答えない。 ただ、狂気に満ちた瞳で、包丁を振り続ける。
アクトは、剣を振る。 黄色い斬撃が、空間を裂く。 だが、女はそれを避け、祭壇の柱を蹴って跳ね上がる。
(……速い。だが、読める)
アクトは、女の着地点を予測し、剣を振り上げる。 だが、女はそれを空中で体を捻って避け、逆に包丁でアクトの肩を切り裂いた。
「....ッ!」
だがアクトは痛みを堪え女に剣を振り下ろした。それを女はすんでのところで避け、炎弾を何発も放つ。
祐樹はそれを『誘導炎弾』という対象に自動で向かっていく炎弾で迎え撃った。 避けるのは簡単だが、そうしたら結婚式場が焦げてしまう。 そういう意図を持った誘導炎弾は空中で女の炎弾と衝突し、花火のように散った。だが祐樹は安心してる場合じゃない。女はアクトが結婚式場を破壊されるのを嫌がってると気付いたのか、歪んだように笑うと、
また何枚もの妖紙を取り出し、何かを発動しようとしていた。
(……まずい)
その瞬間、アクトの視線が、近くの木製の椅子に向いた。
「木縛」
彼は、木妖術の術式を発動する。 椅子の木材が、女の足元から伸び、蔦のように絡みつく。
女は驚き、妖紙の発動を中断する。 その隙を逃さず、アクトは手袋から黄色い斬撃を伸ばす。
――ビュン!
斬撃は、空いていた窓へと伸び、女の体を掴む。 そして――
「っらあああああっ!!」
アクトは、全身の力を込めて、女を窓の外へと投げ飛ばす。 ガラスが砕け、風が巻き上がる。
女の体は、隣のビルの屋上へと落下する。 アクトは、剣を背負い、窓枠を蹴って、女を追った。
――ドンッ!
着地の衝撃が、膝に響く。 だが、彼はすぐに立ち上がり、女を睨みつけた。
屋上は、コンクリートの広場。 風が強く、空は曇っていた。
女は、立ち上がり、包丁を構える。 その顔には、笑みが浮かんでいた。
「……今度こそ、本当に殺してやる」
アクトは、剣を構え、瞳を燃やす。
「殺してやるだと?ふざけやがって。俺を殺した罰を受けろ!」
そして――
黄色い斬撃が、剣から伸びる。 空気を裂き、怒りを乗せて、女に向かって放たれる。
――この劇は、まだ終わらない。
キャラ紹介 謎の女
私は、すべてをあの女狐に奪われた。中学一年生の時までは私はカースト上位だった。 楽しかった。 彼氏もいた。 だからこれからもずっとこの生活が送れると思っていた。 だけど、だけど、だけど! あの女がすべてを奪った。 信頼信用なんて地に堕ちた。 家族も自殺した。彼氏だって、全部、全部奪われた。 あいつは議員の父母を持っていた。 だからちょっとバレてもすぐに隠蔽しやがった。 だけど、そんな彼女もついにバレた。 快感だった。 バレた彼女が、殴られ、家に石を投げられ、靴もかくされ、そして男どもに犯され、見ててすっごく快感だった。 だけど、そんな彼女は行方不明になった。
だけど、この快感をもう一度味わいたい。 絶望してる顔を、後悔してる顔を、もっと、もっと見てみたい!
だから、私は殺人鬼になった。 もう、失うものは何もないんだから。




