少年 依頼を受ける
語彙力がなくて真面目にリザレクション中。 東方ネタ多くなりすぎたか。(前書きが。)
廃工場の鉄骨に朝日が差し込む頃、祐樹は黙々と訓練を続けていた。黄色い斬撃を放ち、妖力を循環させ、ボンリスの指導のもとで魔術の基礎も学び始めていた。 不死の肉体に甘えることなく、彼は自分の力を「使いこなす」ために、日々の鍛錬を怠らなかった。
「……いい動きだ。だが、まだ無駄が多い。」
鉄骨の上から声が降ってくる。ボンリスだった。彼はいつものように無表情で祐樹の動きを観察していた。
「無駄ってのは、どこがだよ。」
「お前の斬撃は直線的すぎる。もっと柔軟に、角度とタイミングをずらせ。敵は一人とは限らない。」
祐樹は舌打ちしながらも、指摘を受け入れる。ボンリスの言葉は的確で、彼の戦闘経験の深さを物語っていた。
その日の訓練が終わった後、ボンリスは珍しく真剣な顔で祐樹に話しかけてきた。
「祐樹、一つ頼みがある。」
「……なんだよ、急に。」
「依頼だ。俺が受けた仕事だが、今回はお前に行ってもらいたい。」
祐樹は眉をひそめた。依頼という言葉に、嫌な予感がした。
「俺が? 白竜会に顔が割れてるってのに?」
「安心しろ。行き先は山形県だ。白竜会の勢力は全国に比べてかなり薄い。実践経験を積むにはちょうどいい。」
「……それでも、見つかる可能性はあるだろ。」
「変装すればいい。髪を染めて、眼鏡でもかけておけ。お前の顔を正確に覚えてる奴なんて、そう多くはない。」
祐樹はしばらく黙って考えた。確かに、実戦経験は必要だ。今のままでは、卓のような実力者に再び出会ったとき、勝てる保証はない。
「……わかった。で、依頼内容は?」
「詳細は現地で聞け。依頼人が待っている。青いバラのバッジをつけた男だ。場所は山形市内のカフェ『カフェ・ルフラン』。明日の午後三時に待ち合わせだ。」
祐樹は頷き、翌朝には髪を黒から明るい茶色に染め、眼鏡をかけて新幹線に乗り込んだ。
山形駅に降り立った祐樹は、冷たい空気に身を震わせた。名古屋や東京に比べて、空気が澄んでいる。だが、その分、どこか張り詰めたような静けさがあった。
「……白竜会の気配は、今のところないな。」
...白竜会の気配とはなんだろうか。
それはともかく、駅前のロータリーを抜け、祐樹はスマホ(ボンリスからもらった。出所は不明。)の地図アプリを頼りに『カフェ・ルフラン』へと向かった。店は駅から少し離れた、落ち着いた住宅街の一角にあった。外観は木造で、古民家を改装したような趣のある佇まいだ。
扉を開けると、カラン、と小さなベルの音が鳴った。中は静かで、ジャズが流れている。客はまばらで、年配の夫婦や学生らしき若者が数人いるだけだった。
祐樹は、店内を一通り見渡した。そして、窓際の席に座る一人の男に目を留めた。スーツ姿で、胸元には青いバラのバッジが光っている。
(あれか……)
祐樹はゆっくりと男に近づき、声をかけた。
「……あんたが、依頼人か?」
そう祐樹がいうと依頼人であろう男性は顔を祐樹に向けた。男性はスーツを身に纏い、眼鏡をかけている、いかにもサラリーマン、という格好だった。
「君が……ボンリスの紹介で来た?」
「そうだ。」
男は頷き、隣の席を手で示した。祐樹はそこに腰を下ろす。
「名前は?」
そう聞かれ祐樹は悩んだ。本名を言っていいのだろうか?だが間違いなく『ボンリス』は偽名だ。なんでボンリスなのかもだいたい予想はつくが、それはともかく自分はどうするか。 『祐樹』という名前が広がると白竜会や家族たちにも存在が大きく知られてしまう。
「...アクト。 そう呼んでくれ。」
故に祐樹は偽名を使うことにした。
「アクト君か。僕は佐伯だ。」
そう言い男..佐伯は落ち着かない手で便箋を差し出した。便箋の角には、先ほど見た水滴の染みがまだ鮮明に残っている。
「これを見てください。来週の結婚式の――」
祐樹...いや、アクトは便箋を受け取り、短く目を通した。文字は冷たく、嘲るような調子で書かれている。
悠真へ。
今日は千紗の“おめでとう”を、君が一人で噛みしめる日だ。
それは、拍手と涙と笑顔で満たされた、誰もが祝福するべき景色。
だけど――残念ながら君はその景色を最後まで見届けられないかもしれない。
君が最前列で笑っているとき、周りの声は祝辞の言葉で埋め尽くされる。
シャンデリアは光り、花は香り、シャッターが切れる。
でもね、花びらの隙間からは見えないものがある。
みんなが「おめでとう」と言ったその後に、誰もが知らずに踏みしめている“嘘”が。
僕はただ、君にそれを見せてあげたいだけだ。
あの日、君が知らないままに終わらせたもの。
あの日に誰かが拾った“残り物”。
君は本当に千紗を祝福しているつもりかい?
それとも、ただ楽な立場で見ているだけなんじゃないか。
君の拍手が、彼女の足元で何かを砕く音に変わる瞬間を、僕は楽しみにしている。
君がそれを止められるかどうか、観察してやるよ。
当日は、君のその“おめでとう”を奪うことに意味がある。
だから楽しみにしておいてほしい。
—–お祝いはほどほどにね。
そして、紙の余白には、細い字で小さく
「最後まで笑っていられるか試してみろ」
そう書かれてあった。
「…『君の拍手が、彼女の足元で何かを砕く音に変わる瞬間を、僕は楽しみにしている』か。ずいぶんポエムな脅迫状なこと。で、悠真ってのはあんたの本名でいいのか?」
「ああ。その通りだ。」
佐伯...悠真は声を詰まらせずに続ける。声の震えは抑えているが、瞳は真剣そのものだ。
「警察には届けました。受理もされた。でも…事情がややこしいんです。僕に送られたっていう事実だけで、周りは僕が逆恨みして式を潰そうとしてるんじゃないかって疑う。千紗を巻き込めない。だから、警察だけじゃ不安で――あなたに“式の護衛”をお願いしたいんです。できれば、表に出ない形で」
アクトは便箋をテーブルに戻し、悠真の顔をじっと見る。次に悠真の過去についての問いが来ることを、彼は知っているようだった。
「あんたと千紗のことを教えてくれ。『あの夜』ってのは何だ?」
悠真は深く息を吸って、しまい込んでいた記憶をそっと盗み出すように語った。言葉は短いが、重い。
「幼馴染です。小さい頃から一緒で、いつも隣にいた。僕は……彼女のことを特別に思っていました。でも僕は言えなかった。高校の頃、僕はそのまま逃げた。地元を離れて、連絡も絶ってしまったんです。彼女が、誰と何をしたか――本当のことは、僕は最後まで知らなかった。最後に会った夜、彼女は泣いていた。僕はそれに気づけなかった。自分を責めています。今、彼女が結婚する。自分の無力さのせいで彼女が何かを抱えたままなら、祝う資格はない――そう思ってしまうんです」
アクトはメモを取るでもなく、静かに頷く。テーブルの上、封筒の指紋染みが俯いたまま光を吸っている。
「なるほど。つまり、君は“過去を知らなかった”側の人間ってことだ。脅迫の内容は、過去の暴露をちらつかせて誰かの面子や平穏を壊すことが目的だろうな。狙いは『式の公衆の場』。そこが一番効果的だと踏んでる。」
悠真は息を吐く。「お願いします。結婚式が台無しになるのは絶対に嫌です。千紗を――彼女自身を傷つけられるのも嫌だ。式場の中で、何か起きても即座に対応してほしい。表に出ない形で――来賓には気づかれないように。可能なら、式の直前に会場の人間も含めた最短の安全確認をして、怪しい物や不審者がいないか見てほしい。あと、僕が犯人扱いされるのは絶対に困る。僕の動きが怪しまれないようにしてほしい」
アクトは指を組み、条件を反芻する。
「わかった。要点は三つだな――(1)会場の内外に伏せておける“目”(スタッフや警備ではない目)を置く、(2)式直前に雰囲気を壊す物や人物がいないかのチェック、(3)万が一のときに、君が『動機のある状況』に見えないように動線を作る。あんたの素性と過去は隠し通す。依頼人の“見え方”を最優先する」
悠真は震える手で千紗の写真を握りしめる。「お願いします。千紗には何も言わないでください。余計に不安にさせたくない」
アクトはそんな悠真をしばらくじっと見つめ、
「了解。でも一つ忠告しておく。こういう脅しはたいてい“見せしめ”か、“自分で騒ぎを起こすための誘導”だ。君の過去を利用して誰かが何かをやらかす可能性もある。だから、事前に君自身も動かない方がいい。目立たないで。ガラス細工を持つように振る舞え。あと、警察とは情報を共有しておく。俺は警察を丸ごと信用はしないが、連携はリスクを下げるからな」
こう悠真に忠告した。悠真は小さく頷いた。「警察にはこれだけを伝えました――脅迫状が来たこと、日付の指定はないこと、僕が式を潰す可能性はないことを説明しました。だけど、周囲の空気がもう…僕を疑っている。だからあなたの助けが必要です」
アクトはもう一度悠真を見つめた。 そんな目には『羨望』『嫉妬』『同情』といった感情が読み取れるが、悠真には気づかれなかったようだ。
「明日、式場の下見をする。会場の動線、出入口、裏口の管理、搬入ルート。何か不審な出入りがないかを探る。式当日は、俺の連絡網から数人呼ぶ。見かけは運営スタッフか業者。目立たないが、状況が変われば即対応する。君は当日はなるべく最前列に座らないこと。もし誰かが直接的に千紗に手を出すようなことがあれば、その時は君に判断を委ねる――だが、現時点であんたが動くのは一番まずい。わかるか?」
悠真は固く頷いた。胸の奥で何かがまだざわついている。だが、そのざわめきが少しだけ静まった。
「ありがとう。報酬は――」
「報酬の話は後だ。まず手を動かす。だが、ひとつ忠告だ。脅迫者は“君の反応”を見ている。君が焦れば焦るほど、相手は喜ぶ。冷静でいろ。千紗のために冷静でいろ」
アクトは便箋をテーブルに重ね、最後にもう一度だけ文字を追った。
「最後まで笑っていられるか試してみろ」そう言いアクトは悠真とメールアドレスを交換して、カフェを出たのであった。
「あの野郎、こんなドロッドロな雰囲気がぷんぷんする依頼を渡しやがって。こちとらまだ傷心中だぞ。」
.....ぼそっと言った恨み言を残して。
専門用語集② 封印術
封印術って要するに封印する対象以上の妖力をこめて封印術の術式が描かれている妖紙を対象に触れさせ、そんな対象を封印するやつ。 封印されたらカービィの某椎茸みたいなのに封印される。 封印最中の封印をしている人の制限(意識はどうなのか。 いつ出れるのかとか)は妖紙に描かれてる術式による。例えば週間無意識で封印させる妖紙だと買うなら数万円かかるが、 平安時代とかに出てくるとんでもないものを封印した時に使うレベル(数百〜数千年封印するやつ)は買おうとするとまじで億は超える。 でも一時期とある人が大量生産して値段が地獄みたいな変動をした事件があるんだとか。 ちなみにやった犯人は今は政府の秘密組織に隔離されてクソみたいな労働環境で永遠に作り続けてるんだとか。 まあ自業自得だね。




