青春サツ×論 剋宮夜王編 第22章
青春サツ×論
剋宮夜王編
第22章
俺は、花魁の息子として産まれた。
別に、珍しい事でも無かった。
特に、何の面白みも無い、人生だと思う。
ただ、珍しく里子には出されず、店で育てられた。
楼主に育てられ、妓夫のような事をする。
ただそれだけの、何の面白みも無い、ぱっとしない人生のはずだった。
花魁道中とは裏腹に、豪華では無いが、真っ黒でも無い、人生。
そのはずだった。
ある時、変わり者が買われてきた。
遣り手の目を信じていない訳では無かった。
だが正直、あまりに田舎臭かった。
禿として買われてきた訳でもなく。
正直に言うと、不倫が明るみに出たか、愛想を尽かされたのか、離縁された女かと思った。
だが「花魁」として、突き出しされる事になった。
だが、やはり化けた。
正直、相当の田舎臭だけではなく、本当に「変わり者」だった。
この店では珍しく、身請けも起ころうとしていた。
正直、化け物共を相手にしているこの店では、そんな事、殆ど起きない。
化け物共は、何処から奪って来たかは知らないが、本当に金だけはある。
だが、身請けは、決してしない。
気持ちが移ろいやすいのだ。
詫び料を支払う事も、厭わない。
もはや、ここの遊女たちは、詫び料も勘定に入れて、借金を返そうとする。
そんな化け物共を虜にする、底知れない何かがあった。
その花魁は、正直、店中どころか、町中で噂になっていた。
俺も、同じ店とは言え、あまり接点は無かった。
ただ一度二度、見た事あるか程度。
一度二度、花魁道中に付き添った程度。
今思えば、最初からキチガイだったのだ。
ただの「変わり者」では、無かった。
あれはもう、人間ではない。
化け物共と同じ。
狂っている。
キチガイだったんだ。
何故に、遣り手婆も気づかなかったのか。
いや、あの気狂いは、それで人を虜にするのかもしれない。
何か、頭のネジが何十も外れている女の方が、
何か蜘蛛のように人を惹きつけるのかもしれない。
頭の可笑しい女の方が、魅力的に見えるのかもしれない。
あの女が何をしたのか。
あぁ、教えてやりたい。
大声で、町中を走り回りながら、叫んでやりたい。
あのキチガイ女の所業を。
あの女は、何の接点も無い俺に、何故か恋をしやがったのだ。
トチ狂っている。
本当に、頭が可笑しい。
それどころか、奴の頭の中では、俺と恋仲―相思相愛になっていたらしい。
勝手に、そう思われる分には、別に構わない。
俺に害が無いのならば。
奴の頭の可笑しさは、ここからが本題だ。
「恋仲にある男女が、来世で結ばれる為にする行動」
―将来の愛と、今生の愛を誓い合いながら、供に死ぬ事―それを「心中」と言う。
「心中」も、相手の同意が無ければ、「無理心中」だ。
悲壮感溢れる、悲恋譚が、狂気溢れる狂人譚に様変わり。
誰が、こんな結末なんて、望む?
しかもそのくせ、自分は死なないなんて、ただの殺人じゃないか。
無理心中にすら、ならない。
奴は丁寧に、俺の身体を切り裂き、顔の皮は干して保管しやがった。
今も、残っているんだぜ?
あいつの、悪趣味な部屋に、俺の骨壺と一緒に。
俺の頭骨を、漆で赤く塗るような、趣味の悪い女なんだ。
どうしてだ?
身請けが決まった時か?
それより、後なのか?
一体いつ、鬼女になったのだろう。
俺の祟りを、「好き避け」とかほざきやがる。
頭が、気が、オカシイ。
そうとしか、思えない。
正気の沙汰とは、思えない。
正気でやっていたのなら、それが一番おかしい。
何故、伝ワらないのカ。
俺は、お前が、嫌いなンダ。
心底、嫌いナンダ。
何で、お前に、俺が殺されなくちゃいけなかッタンダ?
勘違いダッタノカ?
許サナイ。
絶対ニ、許サナイ。
オ前ニ盛ラレタ毒、痛ミ。
ソノママ返シテヤルヨ。
オマエ、俺ガ好キナンダロウ?
ダッタラ、ウケトレヨ?
ナァ、逃げるナよ?
アレ?コイツ、こンな感じノ見た目ダッケ?
茶髪ダッケ?クロ髪ダッタ気モ?
もう少シ。もう少し。背丈も低かった気も?
マァ、良イカ?
ウン。ベツニイイナ。




