青春サツ×論 剋宮夜王編 第23章
青春サツ×論
剋宮夜王編
第23章
「・・・。」
分かっている。
十二分どころか、二十分程には、理解しているつもりだ。
此処に来てから、何度失神しただろうか。
級友達には、かなりの心配を掛けた。
事情を知らない者からしたら、恐怖以外の何物でも無いだろう。
正直言って、毎回わざわざ保健室まで俺を連れて行く神宮司には、感謝してもしきれない。
何時だったか、礼をしようとした時があった。
―――――――――――――――
「・・・え?『礼』?」
「あぁ、そうだ。
・・・流石に毎度の如く、見放さずに保健室に連れて行ってくれる貴様には、
どれだけの礼をしても足りない。
・・・何か、望む物は無いか?」
「・・・いらねーよ。」
「?!
い、良いのか?
遠慮しなくても、良いぞ…?」
「別に俺は、人として当然の事をしているだけだし。
・・・あと、お前の『礼』は、何かスケールとかがバグってそうだし。」
「・・・貴様は、良い人間だな。」
「そうか?
別に、普通だと思うけどな。
・・・あ、そこまで言うなら、ラーメン奢ってくれよ。
今月、金欠なんだよ~。」
―――――――――――――――
別に喘息か何かの発作のように、何か処置が必要なわけでは無い。
安静にしていれば、半刻程で目覚める。
それなのに、わざわざ保健室まで俺を運んでくれる神宮司を、
ここまでの人格者に育て上げた、「師匠」だと言う令嬢二人には、脱帽だ。
―――――――――――――――
正直言って、神宮司が「剋宮警報機」と呼びだしたこの症状は、
あの女が俺の妖としての術を封印した副作用の一つに過ぎない。
ただの、「処理不全」に過ぎない。
―――――――――――――――
あの女の術も、無理をすれば解けなくはない。
本人も、
「少し緩めに掛けている」
と言っていた。
キツくし過ぎると、また別の弊害が生まれてしまうらしい。
そのせいか、耳にタコが出来るほど念を押された。
「絶対に術を使うな。」
と。
姫璃の瘴気を消す際に、既にあれだけ意識が朦朧としたのだ。
「一理ある。」
それは理解している。
「学級裁判」が、開かれていたような気がする。
「・・・次は、どうなる事やら。」
恐らく、数刻分だ。
俺は数刻分、先の使用で記憶を飛ばしている。
意識が朦朧としていた。
酒に酔って、酔っぱらっていた時の記憶が無くなるほどの酔い。
それと同じような感覚だ。
次は、どうなるか分からない。
いよいよ、あの女が言っていた通り、【暴走】するかもしれない。
それに付随して、姫璃を傷つけるかもしれない。
正直、恐らく、十中八九。
この精神空間の主は、呪い・瘴気、またはそれに準ずるものに蝕まれている。
それを解呪し、正常な状態に戻し。
それをただの「感情」に戻し。
「俺の能力」で、俺の霊力に変換すれば。
この者も、姫璃も。
助けられる。
俺の力で。
ただの、自己満足だ。
姫璃の事だ。
俺の助力なぞ、無くとも構わないだろう。
むしろ、俺が敵に回る可能性もある。
【暴走】したら、そうなるだろう。
俺が、姫璃の敵になるだろう。
俺に分かるのは、
「異常事態だ。」
という事のみだ。
姫璃には、危害が加えられていないかもしれない。
俺を嵌める為の、罠かもしれない。
「・・・俺は、やはり愚かな鬼ならしい。」
ここまで「人間的な鬼」、居ただろうか?
「・・・俺は、こうやって、弱い方に流されてしまう。
・・・自己満足だよな。」
頭では理解していても、心では理解できない事も、ある。
「・・・俺は、トラウマに怯えて、愚かな選択をする。
・・・むしろ、貴様の手で、殺して欲しい。」
久方ぶりだ。
あの日からあまり、術を発動してこなかった。
数回しか、発動して来なかった。
簡単な術しか、発動してこなかった。
「音遮断」なんて、初歩の初歩だ。
それでも、失敗する気は、しない。
もはや、魂に染み付いている。
「・・・対象は、この精神空間の主。
・・・ん?
精神空間に入り込んでいるという事は…」
あの女の術式は、やはり緩いらしい。
術を解く暇が省けた。
「・・・空気の気配が無い所。
・・・つまり、俺の右隣。
・・・俺の右隣を獲るとは、良い度胸だ。
・・・その度胸に免じて、解いてやるぞ、感謝しろ。」
精神統一。
・・・まずは。
「・・・呪術解除。」
―――――――――――――――
剋宮少年は、やはり鬼人だったらしい。
白く長い、左右非対称な、美しい二本の角だ。




