青春サツ×論 剋宮夜王編 第22章
青春サツ×論
剋宮夜王編
第22章
ようこそ、我々の箱庭、兼「劇場」に。
よくぞ参られた。
・・・おや、初めてのお客人か。
見ない顔だ。
我々は誰も、貴殿をお見受けしたことが無い。
だが、敵では無いだろう。
貴殿はそんな野蛮人では無いと、信用しよう。
貴殿の事は詳しくないが、貴殿の社会的信用、
ひいては社会的常識を前提に、お話させて頂こう。
おや、失礼。
此処には初めてのご来場のようだが、我々は貴殿に、会った事があるようだ。
・・・得意客を一見と間違えるとは、コレも耄碌したようだ。
いやはや、失敬失敬。
・・・果てさて、貴殿は誰の担当だったか。
あぁ、そうか。
あれか。
卑劣で卑怯な、「卑」尽くしの裏切り者か。
失礼。
早とちりだ。
貴殿は、「初めて」のようだ。
アレが我々の真似事をしているとは…
いや、こちらの話だ。
失礼、御客人。
我々は「話作定理」。
しがないエンターテイナーだ。
そしてコレは、モノアラワと申すモノ。
ただの見物人に過ぎない。
・・・おや?
貴殿は、これで満足する器なのか?
我々なら、更に面白い物語を用意してみせると言うのに。
まぁ人の趣味嗜好は、色よりも数がある。
・・・あぁ、その男の続きが気になられるか。
その任、賜った。
ただし、我々も聖人君子では無い。
見返りを求めよう。
何、大したものでは無い。
「貴殿の物語」も、我々の商品に加えさせて頂きたい。
勿論、個人情報には十二分に配慮致そう。
より興じられるモノにするために、改変もするから、
誰一人として貴殿だと気づかないだろう。
手間は取らせない。
そう、お約束しよう。
怖気づかれたか?
・・・しかし、もう契約は成立してしまっている。
「見え始めた」だろう?
一度知ってしまえば、もう知る前には戻れない。
水と同じで、覆る事など無い。
報酬を、頂こう。
――――――――――――――
「・・・広いな。」
無論、個人差がある。
広さも、様相も。
それは十分理解している。
だが、これ程までに広大で、尚且つ何も存在していないとなると、流石に見たことが無い。
「やはり、居ない…?」
この空間の主は、一体どのような人物なのか。
いくら精神を蝕まれようと、何も存在しない空間には、関係が無い。
殆どの場合、縁が深かったり、思い入れが強かったり、記憶に残っていたりする物体。
それが、存在する。
「・・・ここの地は、土なのだな。」
にしても、変わった土だ。
風変りで、痩せた土地に住んでいたのか。
変わった色。
足を進める度に、足から伝わって来る感触が、違和感を覚えさせる。
変な柔らかさ。
畑のような、さらさらな柔らかさでもない。
弾力があるのではない。
弾力があったのなら、それはもはや土だとは感じないだろう。
逆なのだ。
異常に、細かいのだ。
踏みしめる度に、巻き上がる細かい、
黒とも赤とも白とも言えない、様々な色の粒が混ざった土が巻き上がる。
そして巻き上がるのは、土のみではない。
臭気も、巻き上がる。
「・・・!」
・・・何故気づかなかったのだろう。
肉が焼けた匂い。
草が焼けた後の匂い。
煙の臭いでは無い。
焦げ臭い匂い。
煙の臭いは感じない。
しかし、不思議と、焦げ臭さを感じる。
「・・・焼いたのか?」
この土は、焼け跡だ。
灰だ。
それに気づいた瞬間、俺は別の物にも気づいた。
確かに、何も無い。
ただ、気配が消えている。
気配を消している時の、違和感。
「何も無い」と言う、違和感。
逆に、気配を消しすぎて、何もない違和感。
何も存在しないのに、空気もそこには存在しないと言う、違和感。
ずっと、俺の隣には、誰かが居る。




