青春サツ×論 剋宮夜王編 第13章
青春サツ×論
剋宮夜王編
第13章
「学級裁判」が開かれる約半日前。
昼休みの事。
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「いや、今日このクラスに編入生がやって来たのも、別に何も可笑しい事では無い。
そう言った予感はしていたし、編入生も、
この学校、この組においては、何も珍しい事では無い。
だから別に、問題はそこではないのだ。」
剋宮少年は何やら薄暗い校舎裏の、池の傍で、誰かと電話で話している。
昼休みとは思えない程の静けさが、池の不気味さを際立たせている。
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ただ少し、何かそれだけでは無い、胸騒ぎがしていた。
嵐の日の海、そしてそれに浮かぶ船、そしてそれに乗る者のような心地が、朝からしていた。
・・・気のせいだと思った。
遂に、俺に唯一残されたこの技術さえも、可笑しくなったかと思った。
俺の予感が可笑しくなっていなかったと察したのは、
その「編入生」が扉を開けて、自己紹介した時であった。
同じクラスの奴らは、俺とは別の意味で驚いていた。
奴は、一週間程前の「襲撃事件」の犯人なそうだ。
刀姫曰く、その襲撃犯は
「人間とは思えなかった」
との事だ。
神宮司にも
「人間にしてはやるね」
としか言わなかった奴を此処まで言わせるなんてなと、
ちょうどニ、三日前に聞いて驚いていた。
俺は例の面倒な後遺症のせいで、寝込んでしまっていたため、
奴の所業を直接見た訳ではないのだが、あの革田でも抑えられなかった事や、
如月が敗れたらしい事から十分、強さは伝わって来る。
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「本題に入ろう。
・・・何故姫璃が此処に居る?」
『はて~、何の事でしょう?
私は何が何やら、さっぱりなんですけどね~。
・・・とりあえず~。』
そこまで言うと、電話の向こうの声は一気に冷え切ったものに変わり、こう告げた。
『音遮断の術、解いて下さい。
死にたいんですか?』
「貴様がそこまで必死になることでもなかろうに。」
『知り合いに死なれたら、寝覚めが悪いんです。』
「意外と貴様、人の心はあるよな。」
『人喰い妖怪に何をおっしゃられているのやら。』
声は先程の陽気さを取り戻している。
風邪をひきそうな程の温度差で、一般人ならチキンになってしまいそうである。
「・・・世辞は不要だ。
社交辞令もな。
貴様の会釈は、裏しか感じられなくて、気分が悪くなる。
・・・知りうる限りの真実を言え。」
『私、上司に
「権力の有る人物には、とりあえず敬語を使っとけ。」
と言われておりまして~。』
「貴様が腹を割って話す気が無ければ、俺も術を解く気は無い。」
剋宮少年がそう言うと、スピーカーからは少し大きめの溜め息が聞こえてきた。
『・・・分かりました。
分かりましたから。
・・・この状況がお望みなのですか?
・・・せめて従者に張らせて下さい。
どうせ近くに待機させているんでしょうし。
ワタシも裏帝様に知りうる限りの事を話しますから。』
それまで、アミューズメント施設のスタッフのような陽気さと抑揚を孕んでいた声は、
そんな物等無かったかのように、すっかり先程垣間見せた冷酷な声になっていた。




