青春サツ×論 剋宮夜王編 第7章
青春サツ×論 剋宮夜王編 第7章
佐藤少女の「闇」が、垣間見える。
傷口と共に。
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一限目
「さ、佐藤?!
お、お前、何してるんだ?!」
一番佐藤少女の席に近い火豹が、思わず声を荒げる。
その声で、保健室に行った剋宮少年と、保健室へ剋宮少年を担いで行った神宮司少年以外の全員が、
佐藤少女の方を向く。
見ると佐藤少女は、血でノートを取っていたのだ。
二宮金次郎像もびっくり仰天でバク宙を三回転してしまう程の熱意と狂気だ。
「さ、佐藤!
お、お前、何してるんだ!?
血出てんじゃねぇか!!」
「お気になさらないで下さい、火豹様。」
「いや、二個前で血でノート取ってる女が居て、気にならねぇ奴が何処に居んだよ?!
マジで、何してるんだ!?
『大量出血』とか、大丈夫なのか?!」
「妖あるある」だ。
人間の基準が分からず、どの程度で死んでしまうのか、分からないのだ。
「いえ、御心配なさらず。
自分で出した血ですので。
この程度、問題ありません。
死にはしません。」
「いや、じゃあなんで血出してんだよ?!」
「いえ、お気になさらず。
ただ、筆記用具が用意出来なかっただけです。」
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神宮司少年にノートを分けてもらっていたため、
「ノート替わり」にと、恐ろしい物を使っている風景は流石に無かったが、
筆記用具を急遽貸しだされた。
※ちなみに滴る程の出血があったため保健室に連れて行かれた。
青春サツ×論
剋宮夜王編
第7章
「・・・俺のこの首の傷は、こうやって、隠しています。」
そう言って、首を撫でる佐藤少女。
その手の下には、粘土のような物で隠されてはいるが、
その剥がれかけている端からは、生々しい傷が垣間見える。
遠くからでは全く分からず、服と露出面の境界に丁度あるため、
注意して見なければ、粘土どころか、露出している生々しい傷にさえ、気付けないだろう。
「・・・剋宮様は、この傷で、勘違いしてしまったのですよね?」
「あぁ。
・・・ちょうど、姫璃と似た位置にあるから、早とちりして、取り乱してしまった…
・・・本当にすまない。」
「いえいえ、剋宮様に落ち度はありません。
このような傷を持っているだけで、珍しいですから。
ましてや同じ部位となれば、取り乱すのは自然な事です。」
「・・・そう言って貰えると、助かる。」
「・・・まぁ、このような生々しい傷、そうそうないでしょうしね。
・・・流石に、これは隠さないといけない程、生々しいですから…
突然これを見てしまわれて、驚かれる方は、多いでしょうし。」
「・・・まぁな。
剥がれかけから垣間見える部分だけでも、惨状と言うか何と言うか、
その傷の深さが伝わって来るしな。
・・・どれだけ深いんだ?
入浴とか水泳とか、日常生活に支障をきたす程の物だったら、
革田や守国に掛け合って、配慮を求めた方が良い。」
「・・・見られますか?」
「は?」
そう言って佐藤少女は、首筋の粘土なような物を剥がそうとする。
「え?!は、剥がすのか?!」
「見られた方が、説明が早いかと。
不快でしたか?」
「いや、そういう事ではなくてだな!?
い、良いのか、剥がしても?!
再び付けるの、大変じゃないのか?!」
「いえ、問題ありません。
剥がれかけてしまっていたので、そろそろ交換しなくてはいけなかったのです。
それに、革田教師にも見つかり、話を聞かれまして。」
「・・・流石革田と言ったところか。」
「はい、革田教師は凄い御方ですね。
まさか、一日目でこの傷が発見されるなんて…
・・・事情を説明しましたら、保健室から包帯を持って来て下さったので、
衛生面的にも、包帯に巻き替えようかと思っていたのです。」
「・・・まぁ、ずっと同じ物で塞いでいるのは、衛生面的にも、良くないだろうな。」
「おまけに、粘土ですからね。」
「・・・え?」
「粘土のような物」
と形容されてきた、件の肌色の物体は、まさか本当に粘土だったらしい。
「・・・衛生用品ではなかったのか…?」
「はい。金銭が不足しておりまして。」
「・・・そう言えば貴様、学用品も無かったな…
・・・だからと言って、血でノートを取らなくとも…」
「皆様を驚かせてしまい、申し訳なく思っております。」
「・・・貴様、今の手持ちの金は、いくらだ?」
「ありません。」
「・・・は?」
「俺の手持ちの金銭は、ありません。
ですので、空腹と生命の危機が重なり、短慮と愚考を重ね、
あのような襲撃事件を行ってしまったのです。
申し訳ございませんでした。」
そう言って頭を深々と下げる佐藤少女の目は、
変わらない冷たい瞳であるが、少し闇を宿しているように見える。
「・・・今後何か金が足りなくなったら、遠慮なく俺か守国か、革田か。
・・・いや、誰でも良い。
とにかく相談しろ。」
珍しく、佐藤少女の目が大きく見開かれる。
「で、ですが俺には返せる当ても、担保もなk」
「そんな事を気にし、生徒を見捨てるような者、この学校の教職員には存在しない。
俺が保証する。
必ず、貴様の状況に合わせた、適切な支援や制度を紹介してくれるだろう。
・・・貴様には迷惑をかけてしまった…
・・・俺は、金銭には余裕がある。
・・・制度や支援でも足りないのであれば、俺に相談しろ。
・・・かなりの額を用意出来る自負はある。」
「・・・ですが、剋宮様のご迷惑n」
「いや、貴様、『頼る』という事が出来るのか?」
「・・・それは、どういう…?」
困惑する佐藤少女。
「・・・神宮司が『剋宮警報機』と呼んでいる俺の能力がある。
・・・貴様も、偽田中の件で目にしただろう?」
「え、えぇ、はい。
急に倒れられたので驚きました。」
「・・・あの能力は、まぁ、詳細は省くが、
『負の感情の把握』
だとでも思ってくれ。」
「は、はい。」
「・・・無論、貴様の襲撃時にもこの能力は発動した。」
「成程?」
「・・・『流れ込む』イメージだと思ってくれ。
つまり、貴様が抱える『闇』が、そっくりそのまま俺に流れ込んできた。」
「・・・そ、それは、どういうk」
「貴様の負の感情は、私利私欲の『我』で溢れかえるような物ではなく、
『諦め』と『自己犠牲』だった。」
「・・・。」
「貴様は、『自分』を諦めている節がある。
・・・そう言う者は、頼る事が出来ない。
自己肯定感の低さも相まって、『頼る』という事が出来ない者が、多い。
『諦め』を持つ者にはな。」
「・・・『自己犠牲』、ですか。」
「・・・貴様がこの学校を襲撃してまで『尽くしたかった』と言う感情については、
言及しない。
・・・だが、この学校の生徒である以上、貴様には、教職員に『頼る』権利があり、
教職員は貴様を『心配』する義務が生じている。
・・・教職員の手間を増やしたくないのであれば、頼れ。」
「・・・頼っても、宜しいのですか?
・・・この、呪われた俺が?」
そう小声で呟いた後、一気に首の傷を隠す粘土を剥がす佐藤少女。
生々しさもさることながら、思わず注目してしまう点はそこではない。
傷口に漂う、いや、傷口から溢れる、黒い霧のような悍ましい「何か」に、
思わず目線は向かってしまう。
皆々様、初めまして、またはこんにちは。
⻆谷春那です。
先に申し上げておきます。
私の両手が失礼致します。
(宜しければ皆々様もご一緒に思いの丈をぶつけましょう)
・・・ヒメリちゃん?
ヒメリちゃん?
・・・うわぁぁぁ!!!
ふ、不憫だ…
ヒメリちゃんは、不憫な少女だった…?!
・・・失礼致しました。
・・・次回ですか?
救済ですか?
・・・ある?
ない?
・・・何時になったら現実に戻って来れるんだ…?
・・・じ、次回もお楽しみに。




