青春サツ×論 剋宮夜王編 第4章
青春サツ×論 剋宮夜王編 第4章
ヒメリの本心はいかに。
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「あら、貴女のことを正室と呼んでいるだけなの?
それなら赤の他人じゃない?
それなら、私が処分しても構わないわよね?」
「・・・駄目です。
俺が許しません。
処分も振るのも受け入れるのも、俺の特権です。
部外者は口出し無用でお願いしたく存じ上げます。」
青春サツ×論 剋宮夜王編
第4章
「・・・結局のところ見異、剋宮は黒なのじゃ?白なのじゃ?」
『え?白だね。
とりあえず悪意はなかったよ。』
「不正な持ち掛けなどはなかったのじゃな。」
『うん。むしろヒメリちゃんの方が気を遣って妥協してた感じだったね。』
「・・・妥協か…」
『どうする?
あたしは
「これは凸しなきゃ」
案件だと思う。』
「そういうと思って既に作話を待機させておる。
わらわの携帯が既に作話の携帯と繋がっているはずじゃ。」
そういっておもむろに自身のガラケーを取り出す御孤少女。
見異少女と繋いでいるスマホは
リア充撲滅委員会副委員長の物だったらしい。
「・・・ヒメリの本心を聞き出すため、
学級裁判の件は隠したまま繋いでいるのじゃ。
見異、頼んだぞ。」
『「どんと来い!」よ!』
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「ヒメリも災難だったな。
・・・普段剋宮は迂闊にああいう事を口走るやつじゃないんだ。
だから正直言って、私たちも驚いているくらいだよ。
天と地がひっくり返るほどの衝撃だ。」
「それほどなんですか?」
「あぁ、そういうことは鉄威の専門だと思っていた。」
ここでも信用がない、いや、ある意味信用がある鉄威少年。
「・・・すまないな、ヒメリ。
編入初日に驚かせてしまったようだ。」
「いえ、大丈夫です。
私なんてむしろ、編入前に皆様を大変驚愕させた人間ですので。」
「あぁ、あれは本当に死ぬかと思った。
どういう風の吹き回しだ?
私は
「守国役人などの私情説」
を疑っているんだが。」
「私もびっくりです。
てっきり許されないものかと思っていたのですが。」
「あぁ、本当だよ。
あの守国役人が君を許すなんてな。
明日は赤い雪が降るのかもしれない。」
「・・・いや、そうではなく…
「守国様が私を許したところで、皆様は私を許すことはない」
と思っていました。」
「あぁ、このクラスはなんだかんだやらかした奴らが多すぎるんだ。
それに比べたら君なんて可愛いものだよ。
第一、誰も致命傷に至っていない。
第二に、人間には危害が加えられていない。
素晴らしいよ。
もう、無罪放免に等しいレベルだ。」
少し自嘲の笑みが含まれていそうなひきつった笑いを、
桜色の唇に浮かべながら、作話は語る。
「そういうものなのでしょうか?」
「あぁ、そういうものだよ。」
こういう当たり障りのないところから本題に入っていく
作話のテクニックは、本当に恐ろしい。
その青緑色の目はどこまで見透かしているのだろうか。
「・・・ところで、剋宮は君に「求婚」したらしいじゃないか?
あれ、本当に「求婚」だったのか?」
「あ、はい。確かに
「俺と結婚してくれ」
と言うニュアンスの言葉、というか
「俺と再び結婚してくれ」
と言われましたね。」
「「再び」とはまた意味が込められていそうなものだな…
・・・ヒメリ、嫌だったらきちんと「嫌」と言わなければ駄目だぞ。
強く言えないなら私が代わりに伝えても良い。」
「・・・まだお答えしていないんですが、正直に申し上げると、
自分の中でもどのようにお答えすればよろしいか、迷っている状態なんです。」
「嫌じゃないのか?」
「嫌でもないし、かといって良いというわけでもないと申しますか…
・・・別に夜王様のことが嫌いというわけでもなく、
かといって好きというわけでもなく…
ただ夜王様のお話を聞いてしまって、断るに断れなくなりまして…」
赤みがかった茶色の、長いまつ毛から少し濁った水色の目が見え隠れしている。
いつもと同じ、ぱっちりとした冷たい瞳だが、少し困惑しているような印象が伝わってくる。
神妙な空気が流れだしたところで、
『成程、ヒメリ。
そなたはそのように感じておったんじゃな。』
と、
「聞きたいことは全て聞けた。
もう良いぞ。」
と言わんばかりに、
ミュートを解除した御孤少女が作話のスマートフォン越しに佐藤少女に話しかける。
「ふぇ?!
そ、その声はみ、御孤様?!」
『すまぬヒメリ。
そなたの真意を知るために、今までの会話は全て聞かせてもらっておったのじゃ。』
『あ、初めまして~ヒメリちゃん。
あたし、覚妖怪の一種の見異でーす。』
「え、あ、初めましt…
・・・え?「覚妖怪」なのですか?」
「うん、そう!
むしろ覚の上位互換!
過去とかも見れるよ!」
「え?か、「過去」ですか…?
・・・私と夜王様との廊下でのやり取りは見ていないですよね…?」
「あ、今のやり取りの本心よりもそちらが気になる?」
「・・・はい。」
「ごめん!剋宮君を通して見ちゃった!」
「・・・私の一人称は…?」
「あ、見ちゃった!ごめん!」
ガクッ!
剋宮少年の飛び火で何よりも知られたくなかった
本来の一人称が露見してしまった佐藤少女。
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作話に連れられて学級裁判に出頭した被害者、佐藤少女。
「・・・夜王様、お恨み申し上げますよ。」
「・・・すまん。」
『そんなに俺っ娘判明が嫌だったの?』
「・・・革田教師…」
「ん?なんだ?」
「ちょっと穴掘ってきて良いですかね?」
「早まるな!」
「自分、山派か?海派か?」
と言われ、帰ってこれなくなった人間が入った穴かと思い、慌てて止める革田教師。
『先生!その穴は
「穴があったら入りたい」
だよ!』
通訳に入る見異少女。
「・・・例えバレたとしても、私は「私」をバレてない体裁で貫かせて頂きます、見異様…」
『「俺っ娘ヒメリちゃん」、別にギャップで可愛いと思うよ?』
「まぁまぁ、一人称なんて本人の自由じゃ。
むやみに言ってやるでない。」
「・・・私と夜王様の件は解決したはずでは…?」
「あー、ヒメリ、これは2年す組の恒例行事「学級裁判」と言ってな…」
慌てて説明に入る革田教師。
「例え教師陣と当事者が許しても!
俺達は許さない!
絶対に認めないからな!」
リア充撲滅委員会副委員長としての謎の使命感に駆られている笑山少年。
「あー、これは当事者が解決するための裁判ではないのじゃ。
「クラスとしての平穏を保つため」
の裁判なのじゃ。」
実際「クラスとしての平穏と風紀を守るため」
という目的で、
「別に身内だしね」
と被害者が全く怒っていない、鉄威少年の刀姫少女覗き事件が処罰された。
「・・・だが、この件は完全にヒメリ次第じゃ。
ヒメリは剋宮のことを怒っており、
「2度とこんなことをしてほしくない」
と申すなら、処罰を下そう。」
「そんな!それに関わらず、剋宮には極刑を下すべきです!」
「静粛にするのじゃ。
1番は被害者じゃろ?
・・・ヒメリは剋宮には、どうして欲しいんじゃ。」
「・・・私は…」
剋宮少年の紺色の瞳が、佐藤少女の美しい横顔に一心に向けられている。
じっと、じっと向けられている。
佐藤少女が何と申そうが、それを受け入れる覚悟があるだろう。
じっと、じっと向けられている。
じっと、じっと、向けられていた。
倒れるその瞬間まで。
ドタッ
「剋宮?おい、剋宮?!」
真っ先に動いた神宮司少年。
「おい、大丈夫か、剋宮?!
あれなのか?!
侵入者か?!」
意識を失いかけながらも、神宮司少年の問いかけに僅かに首を縦に振って、
肯定の意思を示す。
そしてもう限界だったのだろう。
意識を失う剋宮少年。
そして意識を失った剋宮少年の後を継ぐかの如く、テキパキと行動する神宮司少年。
「革田先生!あれです!
「剋宮警報機」です!
侵入者です!」
「分かった!
神宮司は剋宮を頼んだ!
お前らはここで待機!
特に病み上がりの江口を守ってやれ!
佐藤も大人しくしt」
まさに一瞬の出来事だった。
皆がその妖力に気づいた時には既に、術が展開されていた。
佐藤少女とその隣にいた剋宮少年の周囲に
黒いドロッとした妖力が球状に構築されたかと思った次の瞬間にはもう、
そこに2人の姿はなかった。
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「初めまして佐藤ヒメリさん。
本日はお越しいただいて有難う。
今日は貴女に、とても良いビジネスのお話を持ち掛けに来たの。
・・・あら?
何か邪魔な小虫がついてきているわね。
ヒメリさん、その虫は貴女のお知り合い?」
「・・・こちらは夜王様。
俺が2番目に大切にしなくてはならない人…
俺のことを正室と呼んでいる方です。」
皆々様、初めまして、またはこんにちは。
⻆谷春那です。
ヒメリちゃん?
・・・ヒメリちゃん?
ヒメリちゃぁぁぁん?!?!?!
ど、何処に飛ばされちゃったの?!?!?!
待っててね、今⻆谷が迎えに行くから!
ヒメリちゃぁぁぁん!!!
失礼いたしました。
ですが今回は私の両手を責めないで頂きたい。
あの女ダレェ?
次回もお楽しみに。
そして本日19時もお楽しみに。




