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無能のG級ハンター

「くそっ、すまんな! お前らには囮になってもらう、お前らいくぞ!」


「は、はい!」


するとパーティーリーダーである、今井陽太と副リーダーである佐藤大輝が返事をした。


「ご、ごめんなさい!」


そう言いながら彼らについていく女性は支援担当である雪原舞さん。

その他数人が今原について行った。


「っは、くそっ」


元はと言えばそもそもこの話を受けなかければ良かったんだ。

俺は昨日のことを思い出していた。



学校が終わり3ーA組のクラスメイトが次々に教室から出ていく中、俺は陽キャグループの頭領である今井陽太に金髪をふぁさあ、としながら話しかけられた。


「なぁ、篠宮! お前もダンジョン来ないか?」


「だ、ダンジョン?」


「そうそう! ちょっと入るのに人が足らなくてさ。」


ダンジョン。

ある日突如として現れ、世界を混乱へと招いたそれは、現在では莫大な金を産むものになっている。


そしてダンジョンの出現と共に人々にも変化が起こった。

髪色の変化や、瞳の色の変化など。


一番重要なのはスキルが発現したことだ。


同時にスキルを使うにはMPーー通称マジックポイントや魔力などと呼ばれている超常的物質を消費する。


もちろん全ての人々がスキルを得たわけではないが、得ても花粉症耐性などと言った、あると便利なものから一瞬で蜂の性別がわかるものなど様々だ。


共通していることは、誰でもMPがあるということ。


もちろん俺はそんな大層なスキル持ちではない。

スキルを持ってない者は世間一般から無能と言われる、いわば雑魚である。


要はほとんどの人はスキルを持っているということだ。


無論、俺がダンジョンに言ったところで足枷になるだけである。


ちなみに今井太陽が言っていた人数制限はダンジョンの種類によって様々だ。

勿論人数制限がないダンジョンもあるし、逆に言えばソロでないと行けない物もある。


タイムアタック制のダンジョンや、一回入ったらダンジョンを攻略してボスを倒さないと出れないダンジョンなど。


ちなみにダンジョンは基本、ボスを倒せば攻略される。

ごく稀に存在進化みたいな事をすることもあるが、まぁ稀である。


俺がこんなにダンジョンに詳しいのは将来はハンターと言われるダンジョン攻略を生業とした職業につきたかったからだ。


その夢はあっけなく知ってしまったが。

すると今井太陽が口を開く。


「なぁ、お前も来るだろ無能さんよ。一応ハンター証は持ってんだろ?」


「ま、まぁ。G級だけど……。」


「っ!? G級だって? まぁ、俺たちは全員D級だし、俺に至ってはC級だぜ?今回攻略するダンジョンはE級だから安心しろって無能!」


「無能じゃなくて、篠宮碧って名前が……」


今井たちは俺の事なんて合コンの人数合わせのような扱いをすると、陽キャらしく騒ぎながら教室を出て行った。


今井太陽は確かに実力はある。期待の高校生としてもテレビや雑誌などで注目されるほどだ。

しかし高校生Cランクは探せばい一応いる。

だが、今井太陽は異常な速度で実績を積んでいるからだ。


それは期待の新星として名を馳せるだろう。


「……E級か。」


E級ダンジョン。

普通の大の大人ならば、金属バットじゃちょっときついかもしれないが、それくらいで攻略できる難度のダンジョンである。


それでも俺は少し不安だ。

何しろ普通に試験を受ければどんなに才能がなくてもF級ハンターになれる程度の物なのだが、俺はそれすら合格できなかった。


ある意味才能があるのかもしれない。


それはそうと、俺が不安なのは別の事だ。


俺が不安なのはダンジョンの階級上昇である。


ごく稀にダンジョンの隠しアチーブの様なものを達成すると、ダンジョンの階級が上昇して、2〜3ランク上がることがあるのだ。


「全く、縁起が悪いな。」


俺はそう言うと、3ーA組の教室から出た。



次の日、俺は今井太陽の指示された集合場所へ向かっていた。


「まだ少し早かったか……」


辺りを見渡しても、今井達はいない。

あるのは目の前にあるダンジョンゲートだけである。


青白く光るゲートは街中で遠目に見るのとは雰囲気が全く違う。


するとガヤガヤと言う声が聞こえてくる。

今井達のようである。


「おお、もう来てたか! 張り切ってんなぁ」


「あ、あの…攻略者組合にダンジョンの攻略申請した?」


攻略申請とは、名前の通り攻略者組合にダンジョンの攻略許可をもらうための物だ。


攻略申請を行わず、ダンジョンに無断で立ち入ったりするとハンター資格の剥奪や、罰金などが課せられるのだ。


「んなもん、当たり前だろ? ほら、早く中に入ってとっととやっちまおうぜ!」


すると今井達がダンジョンの中に入っていく。


今井太陽C級、佐藤大輝D級、雪原舞D級、上村拓人D級、吉原和夫D級、北澤加奈E級


そしてこの俺、篠宮碧G級である。


今井は前衛の剣士で、佐藤は前衛の盾役。上原も前衛の双剣使い。


雪原さんは支援の回復、吉原も支援の斥候。


そして北澤さん貴重な支援のバッファーだ。


俺を除けばなかなかのパーティーだと思う。

俺はそう思いながらトレーナーにジーパンとカジュアルは服装でダンジョンに入る。


他のみんなが剣とかを装備しているのに仕事しないのか!? と思われるかもしれないが、俺はあくまで人数合わせ=戦力には期待しないでほしい。


無駄に変な格好をして笑われるのも嫌だからね。



中に入るとそこは洞窟のような薄暗い空間が広がっていた。

すると今井が雪原さんに指示を出す。


「雪原さん、照明を頼めるかな?」


「あ、はいっ! 漆黒の闇に光を灯せ、照明」


すると雪原さんの赤い宝石のようなものがついた杖から光の球が出てくる。


雪原舞、クラス一の美少女だ。

白銀色のとても綺麗な髪に碧色の瞳。


いろんな髪色が多くなった現在でもとても珍しい配色。

何より顔が整っていて、性格がいい。


そりゃ、可愛くて頭も良くて、優しいという三拍子が揃えば人気になる。


大して俺の髪は極々普通の黒。

目の色は青みがかっている入るのだが、俺の場合はなんだか黒ずんでいる様に感じる。


顔も極々普通で、身長は平均にすら届いていない。


うん、だめだこりゃ。


するとゆっくり進んでいた今井が、いかにも斥候の様な格好をしている吉原に声をかけた。


まぁ、斥候なんだけど。


「吉原、敵はいるか?」


今井に聞かれると同時に吉原が応答した。


「スキル【偵察】」


吉原が床に手をついたまま少し黙る時間が続く。

吉原は少しすると床から手を離した。


「30m先にゴブリンらしき魔力反応を探知した。数は五匹。問題ない。」


彼はそういうと気配を消すように先行する。


なんだ、彼は忍者か?


俺はそう思うと、この先に何があるかも知らずに呑気にいまいについて行った。

明日も一話更新。

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