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鋼鉄の戦火 〜第502特務戦車大隊第4中隊従軍記〜  作者: 夢追い人
序章 銀色の英雄は戦場に舞う
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歴史の1ページ

 ある日、世界中を巻き込んだ大戦争が始まった。

 歴史と言う大河は、その時代に生きる人々に安息の人生を与えることを一切合切拒否することにしたのだ。


 各国の利権が絡み合い、政治的思惑が交錯し、対話による平和解決を目指した外交は見事に破綻。

 時代の流れは、最早誰にも止めることができなくなった。


 対話の時代が終われば、次にやってくるのは破壊と暴力による解決の時代だ。

 そこに至るまでのあらゆる事象を事細かに書き、真相を明らかにしようとするならば、それだけでいったい何冊の本になるだろうか。

 ともかく、これまでの歴史の積み重ねとその時の国際情勢における当然の帰結として、世界は真っ二つの陣営に別れて戦い始めた。


 覇を競い合うあらゆる陣営の中でも、当初は陸軍大国で知られる帝国が際立って圧倒的だった。

 先の大戦で姿を現した、戦車や航空機を本格的かつ積極的に用いた革新的戦術。

 それは既存の戦争様式を過去のものとし、時として無用の存在とすら批判された機甲部隊の有用性を世界中に示すと共に、帝国が今回の世界戦争における勝利者となる未来をも予見させた。


 行く先々で快進撃を続ける帝国軍機甲部隊。


 しかし、帝国と対峙した国の一つである連邦の広大な大地と根強い抵抗、極寒の冬の到来が帝国軍の快進撃を阻み、あっという間に終わるはずだった戦争は際限なく泥沼化して行った。


 雪の景色が消え去り、緑が大地を覆い、そして再び白い地獄が始まり、また初夏の日差しが大地を照らす。


 きっと、後世の歴史の教科書には良くて数ページ、なんなら数行が書かれるだけなのだろう。


 細部に至っては、最早教科書に書かれすらしない。

 学校での成績や受験に関わるお勉強の枠を超えた一部の物好きだけが知ろうとし、その物好きたちですら本当の意味で全てを知ることは実質不可能であろう年月が過ぎていく。


 何人の兵士が死に、何人の女が犯され、何人の子供たちが明日の食事すら保証されない孤児になろうとも、せいぜいその数字が教科書に載れば、"他人事の悲劇"として認識されるだけまだマシという程度で終わる歴史の狭間。


 それでも戦場は、当事者たちにとって現実のものとしてそこにあり続けていた。


 この戦いがいつ終わるのか。

 あと何人の血と涙を生贄に捧げれば平穏が戻るのか。


 それは、もう誰にもわからない。

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