婚約破棄されたら第一王子に溺愛されたので冒険者になった俺は勇者パーティから追放され『俺、何かやっちゃいました?』。受付嬢ギルド試験で無能判定されるもスローライフでもう遅い!聖女を味わう本格異(以下略)
正式タイトル
『婚約破棄されたら第一王子に溺愛されたので冒険者になった俺は勇者パーティから追放され『俺、何かやっちゃいました?』。受付嬢ギルド試験で無能判定されるもスローライフでもう遅い!聖女を味わう本格異世界グルメで成り上がります』
とある人が『本格なろう系小説』として指定されたタイトルを真面目に調理……
あらゆる属性を勢い任せで乱雑に刻んで怪しげな調味料と共に鍋に放り込んで超強火にかけた結果、カオスの極限へと挑戦した属性ごっちゃ煮となりました(笑)
食す人は大体『最後の晩餐』的な覚悟で挑むでしょうけど……
それでも忠告入れておきます。
小便済ませたか?
神様にお祈りは?
手に持つスプーンでガタガタ震えて食す心の準備はOK?
もしOKであれば…………
good luck!!
「オスカー!!嫉妬のあまりネトリーを殺そうとするなど、貴様にはほとほと愛想が尽きた!!よって私シンジツ侯爵令息のイチロ-はオスカーと婚約破k(バキッ!!)」
「そうですか、わかりました。その婚約破棄、確かに承りました」
オスカーはつい先ほどまで婚約者であったイチローに一礼を行う。
貴族令嬢としてのカーテシーではなく、血に塗れた右手と左手を合わせてペコリと頭を下げた礼は冥福を祈ってるようにみえるだろう。
だが、オスカーは気にしない。
目の前でピンク頭をした、如何にもお花畑な振る舞いをみせていた男爵令嬢のネトリーが唖然としてようとも、やはりオスカーは気にしない。
殴る価値なんてないのか、ただ興味ないのか……
どちらか不明ながらも、オスカーは一礼を終えると同時に出口へ向かって全速力で駆け出すのであった。
……………………
今日はアーリア国の王城で新年を祝うパーティーが行われており、オスカーもベナミヤ伯爵令嬢の一員として婚約者であるイチローにエスコートしてもらいながら参加する予定であった。
だが、彼女は知っていた。
今日のエスコート相手は自分ではなく、ここ最近イチローが熱を上げている男爵令嬢のネトリーである事を……
パーティー会場でイチローから婚約破棄される事を……
その直後を狙って、第一王子が婚約を申し込んでくる事を……
オスカーは全て事前に把握していた。
だから逃げだした。
彼女は結婚して家庭に縛られるより、独身生活を謳歌したかったのだ。
そういう意味では愛人にかまけてオスカーを全くかえりみないイチローより、オスカーを溺愛する第一王子の方が厄介だった。
彼はオスカーを溺愛するあまり王宮へ閉じ込めようとするのが目に見える。
だからオスカーは全力で逃げだした。
「誰か、オスカーを捕まえろ!!」
事態に気付いた第一王子が慌てて命令を下すも、すでに遅かった。
オスカーは逃げ去りながら背中まで届いていた髪をぶった切り、着ていたドレスを脱ぎ捨てて下着同然の……ビキニアーマー姿になっていたのだ。
これは、この日のために用意していた冒険者の装いだ。
もちろん冒険者登録も済ましているのでなんちゃってでもモグリでもない。
さらにいえば、この世界の女戦士はなぜかビキニアーマーを着こむ露出狂が多い。新年という真冬であろうとも関わらずビキニアーマーなので、オスカーの姿は別に不自然ではない。
というか、貴族令嬢が真冬にビキニアーマーを着込むなんて夢にも思わないだろう。
第一王子からの追手は今のオスカーをみても気付かずに通り過ぎる始末であった。
……いや、一部は気付いてるようだが、認識したらその瞬間鉄拳が飛んで記憶諸共意識が吹っ飛ぶ姿を幻視してしまったため、あえて気付かない振りをしてる節がある。
「くくく……命拾いしましたわね」
「全くです、お嬢様。逃亡経路ですが、まず城から出て次の十字路を右にお進みください。門近くにあるダーイルの宿屋で勇者ご一行が待機しております。まずは勇者ご一行に加わって国から脱出してください」
「何から何までありがとうねジージョ」
「お礼でしたらぜひともべろt(バキッ!!!)」
調子乗って、キスを迫ってきた侍女を鉄拳で沈めたオスカー。せっかくだからと先ほどまで着ていたドレスを着せて身代わりに仕立て上げてからその場を離れる。
何食わぬ顔で正面から堂々と城門をくぐり、侍女のジージョから示された通りにダーイルの宿屋へと向かい……
「よろしくな」
勇者スルアの3人目のハーレムパーティーの一員として迎え入れらるのであった。
こうしてオスカーは勇者スルアと2人の仲間、女魔法使いと女僧侶と共に魔王退治……オスカーにしてみればただの名目上での理由で旅立つのであった。
……………………
旅は順調であった。
襲い掛かって来るモンスターはオスカーのワンパンで大体ダウンだ。
別大陸へと渡った先では覆面マントにパンイチというまごうことなき変態に襲われるも、やはりワンパンで解決。
オスカーは強かった。
あまりに強すぎたせいか
『もう全部あいつ一人でいいんじゃないのか?』
な空気が蔓延してきたこともあって勇者の立場が危うくなってしまった。
これはまずいと思ったスルアは決意した。
「オスカー!お前を追放する!!」
「俺、何かやっちゃいました?」
オスカーとしては国から脱出できた時点で目的は達成できたのだ。
このままさよならしても問題ない……が、一応仲間として魔王退治まで付き合う程度の義理は持っていた。
なので理由を聞いたところ……
勇者パーティーに脳筋は必要ない。
もちろんこれは方便だ。
スルアとしても馬鹿正直に理由を伝えるのは、それこそ勇者の沽券にかかわりかねない。それらしい理由をつけたわけだ。
だが、オスカーはスルアの本音を見抜けなかった。
王城で見せた一連の行動は変態だけど出来る侍女であったジージョのお膳立てのおかげであり、普段はおつむの弱いポンコツであった。
「そ、そうだったのですか……わかりました。俺は一から修行して来ます。今一度自分を鍛えなおしてから改めて仲間として加えて下さい」
「おう、その日が来るのを待ってるぞ」
スルアからしてみればただの方便なので本心は『もう来るな』なのだが……
ポンコツであっても反省と向上心はあるオスカー。これから脳筋を脱却すべく勉学を励む気になったオスカーを前にしたせいか、ちくりと良心を痛ませながらも再開の約束を行うのであった。
……………………
翌朝、勇者ご一行から惜しまれる?形で別れた……名目上は追放だが、オスカーはその事に全く気付かないまま、新たな自分を目指して第一歩を踏み出した。
そう……
「魔法使いに俺はなる!!」
脳筋から脱却すべく、魔法使いの第一歩を踏み出そうとするも……
彼女は知らなかった。気付かなかった。
魔力0であるオスカーにとって、魔法使いの道は踏み出す以前の問題だということに……
よって……
「魔法使いになりたいだなんて寝言は寝てる時だけにしてください」
冒険者ギルドでの転職申請で受付嬢から無常な無能判定での門前払いを下されるのは当然であった。
だが、脳筋でおつむの弱いオスカーは受付嬢の言葉を真正面から受け止めたせいで……
「そうですか……魔法使いになるにはたくさん寝ればいいのですね」
誰もそんなこと言ってない。
言ってないが、オスカーは思い立ったら吉日っとばかりにオスカーは即座にギルドを飛び出した。
受付嬢が慌てて止める。
彼女視線としてみれば、オスカーは戦士として超有能なのだ。態々無能な魔法使いになる必要性ないっと思いとどまらせようとした言葉であったのだが、おつむの足りないスカー相手では変な解釈に取られてしまったらしく……
この日、超有能であった戦士オスカーは山に向かったまま消息を絶ったのであった。
…………………
オスカーが消息を絶ってから3年の月日が流れた。
魔法使いになるべく、当初は山奥で食っちゃ寝生活をするも……
それに飽きたオスカーは鍛錬を始めた。
一日1万回のせいけんづきをノルマにして、鍛錬を続けた。
最初の頃はノルマを達成するのに18時間もかけていたが、1年後には⑨時間、2年後には3時間で済むようになり……
3年後には音を置き去りにする素早さでせいけんづきが放てるようになったおかげで、1時間もかからず終えるようになったのだ。
時間に余裕できたオスカーは余暇の時間を料理にあてた。
毎日1万回もせいけんづきを放てば、カロリーもそれ相応に消費される。
特に美味しい料理は生きる糧なこともあり、時間だけはたっぷりあったオスカーは山奥で家庭菜園や牧場を作って一人のんびりと……
俗にいうスローライフを楽しんでいた。
……傍からみれば、残像を生み出すような速度で畑や家畜の世話をする有様のどこがスローライフなのか疑問符付きそうであるも、本人は周囲が『もう遅い!』といわんばかりなスローの世界にみえるからスローライフのつもりなのだろう。
こうして魔法使いになるという目的をすっかり彼方へと追いやったかのようなスローライフの日々を過ごしていたところ……
夜中に来客があった。
魔王の配下であるゴーストが襲い掛かってきたのだ。
物理一辺倒なオスカーでは物理無効のゴーストは相性最悪。
3年前まではなすすべもなく、エロ同人みたいに乱暴される展開となってたのだろうが……
このⅲ年の鍛錬のせいでいろいろな常識をぶっ壊したオスカーの拳は、物理無効の概念すらぶっ壊していた。
……………………
「ふふふ……ゴースト様。こんな真夜中に淑女の元を訪れるだなんて、よっぽど死にてーようだな」
「ごめんなさい。許してください。なんでもしますから」
「ん?今何でもするって言いましたよね」
「え、えぇ……っと…」
にやりと笑うオスカーの前にして、一瞬とんでもない事を口走ったのではと思うゴーストであるも……
「……ゴーストって食べたらどんな味するのかしら」
とんでもない事を口走ったのはオスカーの方であった。
「た、食べないでくださーい!ぼくはたべてもおいしくありませんから」
「大丈夫、俺は好き嫌いしない性質だから。ぐふふふ……」
右手でナイフ、左手でフォークを形どった指でギチギチと鳴らしながらにじり寄るオスカーにゴーストは焦りはじめる。
どうにかして打開する術をっと思って周囲を探ると……
ある本……初級の魔法使い入門書ともいうべき本の山が目に入った。
「ふふふ……オレサマオマエマルカジリ~」
「ま、まて!!」
「モウガマンデキナ~イ!!」
「お前……魔法使いになりたいんだな?」
魔法使い……その言葉を聞いたオスカーはピタリと止まった。
どうやら彼女は、まだ魔法使いになるという目標を捨てたわけではなかったらしい。
その様を突破口と判断したゴーストは叩きかける。
「魔法使いになりたいならいい方法がある……聖女……聖女を食べれば魔法使いになれる!!!」
「…………」
しばらくの沈黙。
通常であればなにとち狂った事を……と思われるも、あいにくオスカーは最初からとち狂ってるような存在だ。
3年前での受付嬢の言葉を変な解釈に捕らえるほどの残念なおつむをしていたオスカーは、この3年間ずっと山奥に籠って全く人と関わることない日々を過ごしていた事もあって……
「そうですか……聖女を美味しく食べれば、俺は魔法使いになれるのですね」
信じてしまったのだ。
でもって、信じてしまったからといってゴーストの危機は去ったわけでなく
「それはそれとして~いただきます」
「アッー!!」
ぱっくんちょ
ゴーストはオスカーに美味しく踊り食いされたのであった。
「うん、まずい。やっぱり食材は生より手間暇かけた料理しないとダメっぽいわね……よし決めた、明日になったら山を下りよう。そして聖女を美味しく食べるべく、料理の腕を磨きながら聖女を探し出そう。そうして俺は……魔法使いになる!!」
新たな目標を刻み込んだオスカーは翌日、山を下りた。
聖女を探すために……
魔法使いになるために……
魔法使いとして、勇者と合流するために……
オスカーは改めて旅立つのであった。
…………………
聖女を探すべく旅へと出たオスカー。
その道すがら魔物を鉄拳でワンパンするのは3年前と同じだが、3年前と違い……
グルメ志向に目覚めた彼女は倒した魔物を調理した。
骨だらけのスケルトンだろうが、腐った肉の塊であるゾンビだろうが、岩石で出来たゴーレムだろうが、なんであろうと『お残しは許しません!!』精神で調理して食した。
例え人間相手であろうとも、彼女が敵と判断すれば……鉄拳を浴びせた相手は食した。
お残しは厳禁だからっと、思い出したかのようにわざわざ祖国に戻って元婚約者と侍女を食すぐらいの徹底ぶりで食しまくった。
さすがに危機を感じた国から軍隊を差し向けられたが、彼女の音速を超える鉄拳から発生した衝撃波で全員がまとめて彼方へと吹っ飛んだ。
その後はお残しは厳禁だからっと、彼方まで吹っ飛んだ兵を一人残らず探し出しては捕まえて食した。
その姿を多数の人間達が目撃し、このままではオスカーに全人類……いや、魔物すら含めた全ての生命体が食い尽くされかねないからっと危機感を抱いた世界は彼女を魔王以上の敵として認定。
勇者は魔王と休戦し、2人協力して世界の敵であるオスカーに決戦を挑んだ。
だが、オスカーにとっては勇者も魔王もそこらの雑魚と大差なく……
「ふふふ……聖女さん、どこにいるの~~隠れてないででてきなさ~い」
勇者と魔王がオスカーに美味しく食べられて1年。
世界はオスカーの前に屈した。
オスカーは世界を手にした。
だが、オスカーは世界なんてどうでもよかった。
オスカーの目的はただ一つ……
“聖女を美味しく食す”
いつにまにか手段と目的が入れ替わった事に気付かないまま……
本来の目的である勇者と合流(というか血肉と化)し、打倒魔王を果たした事に気付かないまま……
彼女は探す。
勇者は存在しても聖女は存在しない世界を隅々まで……
道行くものを拳で沈めて調理して食しながら……
今日もオスカーは放浪するのであった。
終わり?
その後のオスカーの行く末だが……
あるダンジョンで調子ぶっこいてる大魔王の前に現れ、美味しく食したという記録があったりなかったりする……?