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奴隷商、料理人の存在を有難がる

筋骨隆々の野盗達のリーダーはテッドと名乗っていた。


死刑囚の殆どと言っていい野盗のグループはそのままカーゾ隊に加わることになった。


もちろん性質が異なる以上、同じ部隊というわけにはいかない。


そこで彼らの同意のもと、テッド隊は青髪にすることにした。


もちろん、イケメン青年部隊だ。


テッドの特徴である髭がなんともワイルドな男へと変貌を遂げた。


正直、かなりカッコイイ。


それはともかく……


彼らを青熊隊と名付けた。


別に熊のタトゥーがあったわけではない。


ただ、熊のように体が大きいから……


さて、残りは兵士か……


「えっと……その前に確認なんですけど、女性ですよね?」


兵士は5人いる。


皆、一応鎧を身にまとってはいる。


だが、一人だけ鎧が合っていない人がいたのだ。


胸の盛り上がりのせいだろうか?


それに露出している足が妙に艶めかしいのだ。


あまり見てはいけないのだが……


「はっ!! 自分は女であります! 名はオリバと申します!!」


おおっ!!


軍人だ。



これだけで安心感があるな。


「君がこの5人のリーダーと考えてもいいのかな?」

「はっ!! 我々は同じ小隊で、自分が小隊長として任務に就いておりました」


なるほど。


「元、だけどね」

「そう……であります!」


凄い落ち込みようだな。


まぁ無理もない。


何をしたかか知らないけど、ドーク子爵の直属ならさぞかし有能なのだろう。


それが奴隷になるのだから。


「君たちは何が出来る? 軍では何をしていたんだ?」

「はっ! 料理であります」


ん?


聞き間違いか?


さすがに鎧を身にまとったシェフがいるはずがない。


「料理人であります。野外料理人。それが我々小隊名であります」


えっと……どういうこと?


ドーク子爵、教えてくれ!!


助けを求めるとすぐに教えてくれた。


「我々は王都直属軍とは異なり、厳しい自然下でも戦いを継続させる技術が必要となります」


ほう、なるほど。


「食料は知っての通り、とても重要です。彼らにはその食料調達と調理を担当せてもらいました」


しかも、とても優秀だとか……


試しに料理をしてもらうことにした。


野外料理人の腕前……どんなものか。


「不味っ!!」


信じられないほど、不味かった。


マリーヌ様にイタズラされた薬草汁よりも酷い。


とても食べられたものではないな。


「うむ。美味い」


ドーク卿、気でも狂ったか?


これが美味い、だと?


「本気か?」


さすがに料理人の前でこれは失礼とは思ったが、言わずにはいられない。


「なるほど。ロッシュ様は野外での食事事情をご存じない。たしかに、この料理は決して美味しいものではありません。しかし……」


野外ともなると、一流シェフの料理に感じるらしい。


彼らは決して、野外で手に入らないもので料理はしない。


常に現地調達を旨としている。


そのため、貴重な塩も現地で採取する技術を獲得する。


だけど……


「不味いものは不味いんだよね。野外だからって、何でも許されるわけじゃない。やり直してくれ。今度は普通に料理してくれ」


……。


「これだよ!! 凄いじゃないか。こんなに美味しい料理が作れるなんて」

「はっ! お褒めの言葉、恐縮です」


これはとてもいい人材が手に入ったな。


料理人の存在はこれからの旅には必要不可欠だ。


今までの食べ物を考えたら、涙が出てくる。


「これからは保存食を中心に調理してもらう。ただし、調味料はすべて、立ち寄る街で調達するつもりだ。だから、普通の料理を頼むぞ」

「はっ!!」


……やっぱり、これも言うか。


「その言葉、なんとかならないかな?」

「はっ!! へ?」


軍人然とした話し方は嫌いではない。


頼もしさすら感じる。


だけど、料理人としては相応しくない。


勢い良く話すせいで、結構ツバが飛ぶ。


料理にそれが入るなんて……僕はいい気分ではない。


「僕は奴隷商とはいえ、辺境伯という地位がある。これからは僕の直属のシェフという自覚を持って欲しい。出来るか?」

「はっ!! いえ、はい。分かりました。誠心誠意、辺境伯様に料理を振る舞います」


なんとか、奴隷たちを加えることが出来たな。


ヨルを筆頭とする10人の女盗賊。


オリバを筆頭とする5人の野外料理人。


テッドを筆頭とする90人の野盗、改め、青熊隊。


雇用条件は基本的にはカーゾ達と同じ。


ただし、加わった女性達は同意のない僕との同衾をしないという項目が追加された。


奴隷紋がある以上は、僕が命令すれば、女性たちを蹂躙することだって可能だから。


もちろん、マギーからの提案で僕は逆らうこと無く同意した。


150人以上の大きな所帯になってしまった。


フェンリルも100頭いる。


「ドーク卿。世話になった」

「いえ。ロッシュ様と再び離れることがとても寂しくなります」


これは言葉の意味どおりには受け取らないほうがいいだろう。


「僕はとても安心している。さらばだ!」


おっと……


「私に何か言いたいことでも? もしや……告白…・・ぐへっ!」


「サヤサ。最後の別れだ。殴らなくても良い」

「もう殴ってしまいましたけど、承知しました」


「……大丈夫か? 貸しのことをもう一回、念押ししようと戻っただけだ。ではな」

「……ロッシュ様ぁぁぁぁぁ」


もはや振り返る必要はない。


僕達は一路、南に足を運んだ。


そこには山脈が立ちはだかる。


「ここを超えなければ、イルス領は見えてこないな」

「ロッシュ。オーレック領には立ち寄ってくれるんでしょ?」


この山脈の先……大きな峡谷に街がある。


オーレック領、領都イドニース。


かつてオーレック領は貧しく、寂れていた。


それが何代か前に王国随一の鉱山が発見された。


当時男爵位しかもたなかったオーレック家は代を重ねるごとに地位を上げた。


そして、先代で王家と姻戚関係となり、公爵まで上り詰めたのだ。


実はマギーとは遠い親戚ということになる。


血の繋がりという意味では遠い祖先まで遡る必要がある。


「もちろんだよ。僕は一度も行ったことがないからね」

「そうね。私も数度しかないけど、とてもいい場所よ」


マギーは僕と同じ、王都生まれ、王都育ちだ。


それにしても……


「山脈超えってこんなに楽なのかな?」

「そんな訳ないでしょ?」


僕達は今、フェンリルの背の上にいた。


一度に四人は乗れるフェンリルはまるで平地を走るように山脈を上っていく。


……この調子なら、すぐにイルス領に着いてしまうだろうな……

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