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第97話 惑星メカニカへの帰還


 ズドンッ! ガガガッ――。


 内臓が浮き沈みするような感覚ののちに、飛行機が着陸するよりも大きな衝撃を持ってして無事に着陸した。ただ宇宙船は飛行機のように車輪が出てくるわけではなく逆噴射を利用した胴体着陸なので多少バウンドするような感覚がある。


「フーッ、まだ慣れないな……」

「あはは、私も万全だと理解していてもこの衝撃はちょっと力入っちゃうんだ」


 ニジノタビビトは肩に力を入れてすくめていた首を楽にさせてキラの方を振り返っていった。キラはそのニジノタビビトの言葉で自分の失言は気づかれていないことを察して内心胸を撫で下ろした。

 キラはこれから先、宇宙船にまた訪れる可能性は十分あったが、宇宙船に乗って飛び立ち、着陸するというのはもうないのにも関わらず、つい「また」と言ってしまった。キラはすぐにそれに気がついて悲しくなったが、ニジノタビビトは気がつかなかったようなのでまだよかったと思った。キラはもう、この大きな衝撃を体感することは無くなってしまったのだ。

 少し俯いたキラに気づかず、ニジノタビビトはシートベルトを外して立ち上がり両腕を上げて伸びをした。


「よし、それじゃあ早速出ようか。まずはキラの自宅に行くんでしょう?」

「ああ、自宅がどうなっているか気になるしな」


 そう返事をしたものの、キラはこっそり心の中でその自宅があるかどうかも分からないが、と続けた。

 ニジノタビビトは存外明るい様子で、まるでこの星にはいつもの通り虹をつくるのか食料補給のために立ち寄ったかのような感じだった。キラから見てもいつも通りのように思えたが、もちろんそんなことはなかった。ニジノタビビトはキラを引き止めるようなことだけは、追い縋るようなことだけはしたくないと思って、どうにかこうにか我慢して、感情を押し込めて、慟哭はキラとさよならをした後に取っておこうと思っていた。


「そういえば、もう通信端末繋がるんじゃない?」

「あっ、すっかり忘れてた」


 キラは惑星メカニカの紙幣と硬貨がいくらか入った財布と通信機を持って《翡翠の渦》に巻き込まれた。しかしこのどれもが今まで役に立たない紙と金属片と金属でできた箱だった。通貨は星の距離が離れすぎていたため両替ができるところが宇宙船着陸許可地に近いところになく、唯一近場で両替が可能だったのが一つ前の食料補給のために寄った第七三七系、第四準惑星だった。ただ次の目的地がもう惑星メカニカなのだからと、同じ恒星に属する星々でないと手数料がかかってしまうこともあり、それを無駄に取られることは無いと両替はニジノタビビトに止められたのだった。

 通信機に至っては電源入れられるし宇宙規格の端子が採用された端末だったため、ニジノタビビトが持っていた充電機を借りて充電もできたものの、周波数が合わずにインターネットは使えないでいた。キラも購入するときにまさか宇宙に放り出されるなんて思ってもみなかったので、対応している周波数が惑星メカニカのみの一番オプションの少ない安価な端末を購入しており、今までずっと時計とカメラとメモくらいしか使えていなかった。

 今やっと惑星メカニカに帰ってきたことでインターネットに接続することができるようになった。キラは通信機の電源ボタンを押して設定を開き、あらためてインターネット回線に接続しなおした。通信機の料金は引き落としだし、四ヶ月分払えるくらいのお金は貯金してあったので、電話番号もおそらくは問題なく使えるはずだが。


 ピコン! ピコピコピコピコピコピコ、ピコン!


「うわっ」


 インターネットに繋げられた途端、ものすごい量の通知が鳴った。メッセージアプリによっては何百件ときている。その大半はキラが《翡翠の渦》に巻き込まれたことをニュースなどで知ったらしい友人たちからの連絡であった。



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