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第96話 間も無く着陸態勢に移ります


 惑星メカニカはそこまで大きい星でない。公共交通機関である飛行機を使っても、うまく乗り継ぐことができれば惑星一周に七日ほどしかかからないらしい。

 ニジノタビビトはキラと四日前から惑星メカニカの着陸位置について話をしていた。


「それにしてもキラの家がある場所から宇宙船着陸許可地がほど近くてよかった」

「正直俺も今初めて知ったんだよな……」


 惑星メカニカで個人の宇宙船の着陸が許可されている場所は全部で十三カ所あった。ニジノタビビトがキラに家の近くに宇宙船が着陸が可能な場所はあるか聞いたときに彼はピンときていなかったが、調べてみると実はキラの自宅から徒歩で行ける距離の海沿いに個人の宇宙船着陸許可地が存在していた。その宇宙船の着陸が許可されたあたりは砂浜も少なく、徒歩圏内に綺麗な眺めもいいビーチがあるため地元の人間でもあまり訪れない場所であり、ユニバーシティ進学のためにこの街に移り住んだキラは知らなかったのだ。

 惑星メカニカのキラのアパートメントとユニバーシティがある街はそこそこ大きな駅とそこそこ大きなショッピングセンターがあるほどほど大きな街といった感じだ。確かに大きな両替所もあるし、買い物をするのに困ったことはないし、宇宙船が着陸できるような、人があまりこない広い空き地もある。言われてみれば確かに宇宙船の着陸の立地として最高なのかもしれなかった。

 なんにしてもキラの家がある場所から近いというのは都合が良かった。惑星メカニカに着けてもその先どうやって自宅へ帰るのかが問題になるところだった。これがまだ頑張って歩ける距離ならいいが、電車や車でないと行けない距離となるとまた色々方法を考えなくてはいけなくなってしまうところだった。

 しかもキラにはそれ以上に不安なことがあったので不安材料が増えるなんてことにならなくてよかったとこっそり胸を撫で下ろした。

 キラが気になって数えてみたら《翡翠の渦》に巻き込まれた日から今日までで百十六日経過している。つまりおよそ四ヶ月も家とユニバーシティを放置していることになる。その間に当然家賃が払えるわけもなく、この間に自宅がどうなっているか今の今まで考えていなかった。いや、実際のところは頭によぎらなかったわけではなかったのだが、今考えたくないという気持ちが強くて頭の端っこの影になっているところに隠すように放っておいてしまったのだ。

 しかしながら惑星メカニカについてからの懸念材料だけで冗談でも自分の胃に穴が開くような事態はなんとかならないですみそうだった。ただキラも《翡翠の渦》なんてものに巻き込まれても生まれ故郷に帰ってこれたのだから、正直なんとかなるだろうという気もしていた。

 こればかりはもう星に着陸できて自宅に戻って同じアパートメントに住む大家さんに聞いてみないことにはどうしようもない。


「それじゃあキラ、いくよ」

「ああ……お願いします」


 ニジノタビビトはメインモニターの前に座り込んで着陸地の座標を今一度確認した。宇宙船はもうすでに惑星メカニカの周回軌道上をぐるぐる回っており、いつでも着陸態勢に移ることができる状態にある。


〈間も無く着陸態勢に移ります〉


 宇宙船の機械的な音声のアナウンスが入った。

 キラが生まれてからこれまで何度も画像や動画で見てきた生まれた星である惑星メカニカの姿が窓の外に見えていた。



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