第87話 次の星へ
ニジノタビビトとキラはずっと、モニターでカメラ越しにラゴウとケイトを見ていた。
最初は窓から覗いていたのだが、着陸するときも離陸するときと同様に万が一でも窓にヒビが入ったり割れたりすることを防ぐためにシャッターが降りてしまうので、すぐにニジノタビビトが全画面で映しだしたモニターを見ていた。
「ずっと手を振ってくれてるね」
「ああ……」
キラはぼんやりとした返事をしてグッと右手を握りしめた後大きく手を振り返した。ラゴウとケイトに見えているわけがないことはもちろん分かっていたが、そんなことは関係なかった。
ニジノタビビトは隣でモニターに向かって手を振り始めたキラに少し驚いたものの、すぐにモニターに向き直って自分も手を振った。
もう既に宇宙船は彼らより高くまで上昇したが、手を振る力は強くなっていた。やがてラゴウとケイトの表情が見えなくなって緑の草原の上の点のようになって、大気圏を突破して二人のいた場所が大陸にしか見えなくなった頃にようやく手を下ろした。
キラはモニターを見上げていた顔を俯かせて瞼を下ろしたが、すぐに目を見開いて顔を上げた。
「……レイン、貰ったもの、見てみよう。それで、次立ち寄る星でなんて送るか考えよう」
「……うん」
ニジノタビビトはキラの後を追ってキッチンに運んだ袋の元へ歩いた。
「次は第六五二系の第四惑星で補給するよ。到着までは二週間くらいかな……」
ラゴウとケイトが渡してくれた袋三つには食材やお菓子、工芸品のようなものや鈴のお守りなんかが沢山詰められていた。お菓子なんかが軽かったおかげでそんな気はしなかったが、多分持っている中で一番大きいビニール袋に詰められるだけ詰め込んでくれたらしい。
その中でも早めに食べた方がいいものと付箋が貼られていたお菓子を早速開けて次の補給のために立ち寄る星について話していた。
「キラと出会った星……えっとアイルニムの時のように補給さえできればすぐに出るつもりだったけど、ケイトさんとも発信するって約束したから、それもやらなくちゃね」
補給するスパンについて実は食料はそこまで急く必要がない。食べ物は保存がきくものと乾物、冷凍を上手く使うことで備蓄によって三週間ほどは宇宙飛行が可能なのだが、酸素と何より水がそうはいかなかった。前回は準惑星アイルニムから第六二四系惑星クルニまで一週間ほどだったから二人でも酸素と水は循環システムもあったから間に合った。今回はその倍、約二週間かけて補給を目的とする星まで行くことになる。
補給を目的とするその星では水と酸素の補給、食料をいくらか調達すればいいので、その日のうちどころか半日もかからずに発つことができる予定でいる。さらに今回はラゴウとケイトの座標に発信すると約束したので、補給と調達の他にさらにやることがある。ただこれも予め送ることを決めておけばすぐ終わることなので何にしてもその日のうちに発つことはできる。
キラの故郷であり次の目的地である第七五六系第三惑星メカニカまでこれを繰り返しながら目指すことになる。




