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第81話 スコーン、なんちゃってクリームとジャム添え


 翌日の朝食の準備は静かだった。キラは本当はまだ今日この星を発つことも、次の目的地が惑星メカニカであるという実感が湧かないでどことなくふわふわとしていた。

 朝食の席についたニジノタビビトは瞼を擦っていて、どうやら寝不足気味らしかった。

 今日の朝食は昨日乳脂肪分が四十七パーセントの生クリームを買うことができたので、それを朝から冷やした瓶に詰めて振ってクロテッドクリームみたいものを作った。そう、朝からスコーンを焼くことにしたのだ。スコーンをオーブンに入れて焼いている間に生クリームを振っておくと時間管理がうまくいく。


「はい、これいちごのジャム、こっちがりんごとスグリね」


 キラは、丸くてお腹が割れたスコーンを二つずつ乗せたお皿、振り終わって冷蔵庫で冷やしておいた瓶ごと冷たいクロテッドクリーム、そして昨日入手したジャムを二種類テーブルに並べた。

 昨日ケイトが連れて行ってくれらスーパーの、オーガニックにこだわった店舗が出しているところに手作りと書かれたシールの貼られたジャムが色々と売られていた。どこのスーパーにもあるようなジャムに比べると内容量が百グラムとか百五十グラムくらい違うのに値段が変わらない、つまり割高なのだ。キラはこういったときには迷わずお得な方に手を伸ばすが、今日ばかりは違った。

 もう残りが数えられるようになってしまったニジノタビビトとの食事は、決して娯楽の多くない宇宙船内において重要なものであった。それを抜きにしたって、ニジノタビビトはどうやら食べることが好きで、甘いものが好き、おまけにキラは作ることが好き。それならばおろそかにする理由はないし、丁寧に時間とお金をかけたい部分である。

 だから、ニジノタビビトに買っていきたいのはこだわりのある、少量で割高な方であるが、今自分がポケットに突っ込んだ左手の中にある財布はニジノタビビトのもので、キラがいくらか持っている惑星メカニカのお金はこの町では両替ができない。

 ケイトや別行動をしているニジノタビビトとラゴウをあまり待せてもいけない中で悩んだキラが手を伸ばしたのは、こだわり手作りシールの貼られた果肉感たっぷりジャムだった。

 キラが購入を決めたのはいちごのジャムだけだったのだが、いくらか悩んでカゴの中に入れたキラに、ケイトがお土産だと言っておすすめだというりんごとスグリのジャムを持たせてくれたのだ。


 キラはまずナイフでお皿の空いたところになんちゃってクロテッドクリームをたっぷりとって、綺麗なスプーンでいちごのジャムをその横に盛った。

 それからスコーンの腹割れのところにちょっとだけナイフを差し込んで割って、片割れにちょっとだけジャムを塗ってその上にたっぷりクリームを乗せた。


「ジャムとクリームを乗せる順番は好みで、量も好みだけど俺はジャムを先に少なめに塗ってクリームをたっぷり乗せて食べるのが好きだな」


 はじめてならせっかくだから色々試して欲しいというキラに、ニジノタビビトはまずキラと全く同じようにしてから一口。


「んーっ!」


 ニジノタビビトは大きく目を見張って口元に少しクリームをつけたまま声にならない声をあげた。

 その様子を見てキラはニコニコと笑いながら二口めを口に入れた。




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