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第79話 コドモとオトナ


「お待たせ、そろそろ出るかい?」


 ラゴウは数分で戻ってきた。その頃にはニジノタビビトもキラも食後のお茶を堪能しきった後だったので頷いた。

 キラはお会計のことが頭にあって、お金は持っていてもこの星で使えるお金を持っていないため視線を彷徨わせて居心地悪そうにしながら特にポケットから出してもいない持ち物を確認したりした。ラゴウもケイトも気にしていないように見えても、ついお腹いっぱい食べてしまったものだから、食事代金の合計が気になっていたのだ。

 しかしラゴウは伝票を取ることなく出口に向かおうとした。そこでニジノタビビトも流石に変なことに気がついて出口に向かうラゴウとケイトに声をかけた。


「あの、お会計は……?」

「ああ、さっき払ったから大丈夫だよ」

「えっ、払います!」


 ニジノタビビトは慌ててそう言ったが、ラゴウはアハハと軽く笑っていなすと、店の人が片付けられないからと言ってひとまず外に促してしまった。キラは出口に急ぎながら慌ててテーブルの上を確認したがそこには変わらず伝票が伏せられていた。


「さて、食事のことだけど気にしなくていいよ。というか君たちへのお礼も込めているんだ、これくらい払わせておくれ」

「でも……」


 ラゴウとケイトはこのレストランサニーには何度も訪れたことがある常連で、店員は顔見知りであったし、基本厨房にいる女将さんにもまた来たのかいなんて言われていた。だから伝票を持って行かずとも直接レジで言えば会計をしてくれたのだ。

 思えばニジノタビビトはキラ以外の誰かと外食というものをした記憶がないので奢られると言った経験そのものも初めてだった。


「気にしない、気にしない。じゃあほら、蹲っていた私を介抱してくれて、宇宙船で色々おもてなしもしてくれたキラくんへのお礼。それから私とケイトが再び話し合うきっかけにもなった()によって前を向かせてくれたニジノタビビトへのお礼と、二人への餞別ということでどうだい?」


 それでもニジノタビビトはどうしたいいのか分からないような顔をした。それを見てラゴウは仕方なさそうに笑って言った。


「それにほら、君たちは私たちからすればまだ子どもの域を脱していないようなところもあるから。……コドモは大人しく奢られておきなさい」

「はい、すみません……」


 そこまで言われてやっとニジノタビビトは渋々財布をカバンにしまった。キラは一度唾を飲み込んでから口を開いた。


「ラゴウさん、ご馳走様です、とっても美味しかったです。ありがとうございます!」


 ラゴウはそれに満足そうに頷いて、その方が嬉しいなと言いながらニジノタビビトの方をチラリと見た。ニジノタビビトはその視線に少し考えてはたと気づくと慌ててありがとうございますと声を張って言った。ラゴウはまたそれに満足そうに頷いて背中に隠していた右腕を上げた。


「よし、素直ないい子にはこれをあげよう」


 そう言って少し仰々しい動作でラゴウがニジノタビビトの手のひらの上にポン、と乗せたのはレジ横で売っていた焼き菓子だった。ニジノタビビトはオトナから立て続けに色々と与えられるというのは初めてのことだったのでまた困惑したが、なんとか小さな声でありがとうございますと絞り出した。

 それを微笑ましく見ていたケイトだったが、パンッと一度手を叩いて音を響かせると切り替えるように言った。


「さ、それじゃあお買い物に行きましょうか。お料理をするのはキラくんなのよね? 何を買う予定なの?」


 今度はレストランまでの道中とは違って、ケイトに引っ張られる形でキラが並んで歩き、その後ろからニジノタビビトとラゴウが続いて歩いた。



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