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第43話 カフェでの思惑


 念の為カフェの中にラゴウがいないかを確認してから中に入った。そこはセルフサービスのカフェで先にレジで注文をしてからドリンクを受け取って好きな席につけはよかった。少し昼を外れた時間だからか、ピークはすぎていて好きな席を選ぶことが出来た。


「キラ何がいい?遠慮しちゃダメだよ」


 飲み物も選んでねと続けたニジノタビビトとキラはレジの少し手前、他の客が先にレジを使いたくても邪魔にならないところで何を注文するか考えていた。

 ただ、キラにしてみればそんなことを言われてもやっぱりお金が出せないのだから安いメニューにしておきたくて、レジの上に掲げられた一覧とショーケースの中身に素早く目を走らせる。しかし、これで一番安いメニューにしようものならニジノタビビトが勝手に追加で注文しかねないので、低価格帯かつしっかりお腹にたまるものが何か素早く考える必要があった。


「じゃあ、カリクとトマトのパスタとセットドリンクのアイスティーがいいな」


 やはり安いのはパンやサンドイッチの類だったが、それら一つだけだとキラが普通量でも問題ないタイプのそこそこの大食漢なことを知っているニジノタビビトが絶対に追加で注文するので、パスタにすることにし、セットドリンクから選ぶことで少しでも金額を抑えようとした。


「じゃあ、私はサンドイッチのアソートとシナモンロールとホットのロイヤルミルクティーにしよう」


 一方ニジノタビビトも遠慮をするなとは言ったものの、キラがこちらを伺ってラインを見極めながら遠慮をするのは分かっていたので、少し多めにして食べきれないから食べて欲しい作戦を決行しようと企んでいる。

 変に二人の思惑の絡んだ注文を終えてドリンクとサンドイッチ、温めてもらったシナモンロールとレジ横にあったことで誘惑に負けたニジノタビビトが追加したクッキー、キラのパスタの番号札を受け取った。

 それほど混んでいないお陰か、キラがせっかく温めてもらったシナモンロールが冷めないうちにと先に食べるように促されたニジノタビビトが四切れ入っているサンドイッチを一切れ食べたところでパスタが運ばれてきた。

 先に食べるのに甘えたが、ニジノタビビトはしょっぱいのを食べてから甘いのを食べたい派だった。



 うまいこと、サンドイッチ一切れをキラに押し付けることに成功したニジノタビビトは残りのサンドイッチとシナモンロールを完食してほくほくと、ゆっくりロイヤルミルクティーを味わっていた。

 次にビルの出入口を見に行くのは夕方になるので、それまで時間を潰す必要があったのでもう少しこのカフェにいることにした。ニジノタビビトが先程写真に撮った周辺地図を見ながらどうしようか考えていると、何となく外の方を見ていたキラが思わずといったように少し力を込めて肩を叩いてきた。


「レイン、あれ!」


 興奮したキラがしかし声のボリュームを押さえつけるようにしてこっそり指差した先には、なんとラゴウいた。

 二人は顔を見合わせると、ニジノタビビトはカップを煽り、キラはストローをズゴゴと鳴らす。クッキーをカバンに放り込むと、手分けしてお盆を持って返却口に置き、少し慌てながらしかしキチンとゴミを分別して捨てて、店員のありがとうございましたの声を背にカフェを飛び出した。


 ラゴウの後ろ姿を見失わないように、しかし見つからないようにあとを追いかけながらキラはなんだかおかしくなってきた。


「いや、ハハ。俺ってもしかして運がいいのかな」

「キラは翡翠の渦に巻き込まれたろ? 私かもしれないよ」


 ニジノタビビトはいつの間にか、キラの渾身の自虐を交えた冗談に切り込んだ返しができるようになっていた。


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