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第27話 冷蔵庫の中身一掃スープ、パスタはお好みで


「いや、俺赤ちゃんかよ」


 キラは目が覚めて軽く瞬きをしてから目元に手を当ててそう言った。寝落ちる直前のことを嫌というくらいはっきり覚えていた。むしろ夢も見ないほど熟睡していたもので、何なら気がついたら眠気だけなくなっていたような感覚だった。

 急にものすごく眠くなって、眠くなる電波が出ているのかとか変なことを考えていたことも、ニジノタビビトのタオルケットを肩までかけてもらったことも覚えていたから、子供のように寝かしつけられたようで恥ずかしくて仕方がなかった。不幸中の幸いは変なことを口走らなかったことか。


「うっわ、恥ずかしいな」


 しばらく頭を抱えていてゴロゴロと寝返りをうったが、ふとどれくらいの時間が経ったのか気になり、勢いをつけて起き上がると、ベッドの反対側にある窓に歩いていって仰天した。もう惑星に着陸したので外を見ればどれくらいの時間が経ったのかはある程度分かるのだ。

 もう真っ暗だった。キラの部屋の窓から見える方向が街がある方向ではなく、草原と森しかないため明かりがないこともあるのかもしれないが、とっくに日が暮れて星あかりしかなかった。この星に着いたのは昼ごろだったのに……。お昼ご飯も食いっぱぐれてすっかりお昼寝とは言えない時間寝てしまった。これは今日の夜も寝れないかもしれないと思いながら、ニジノタビビトはどうしているだろうと急いで食卓のある部屋に出た。


 食卓のあるリビングダイニングに出るとそこも明かりがついておらず、薄暗かった。ただモニターがスクリーンセーバーになっているおかげで物の位置などは問題なく伺えた。


「あ、レインいた」


 ニジノタビビトはソファで横になって眠っているようだった。キラは起こさないようにそうっと近づくとしゃがんで顔を覗き込んだ。寝顔が幼いというのはよくある話だが、ニジノタビビトもそれに漏れなかった。しかしどうしてか小さく寝息をたてて縮こまって眠るその姿はただ幼いというよりも、迷子の子供のようでやるせなさを感じた。

 勝手にニジノタビビトの部屋に入るのは申し訳なかったので、自分の部屋からタオルケットを持ってきて、念の為一度匂いを確かめてからそっと起こさないようにかけてやった。


 それからキッチンに行って冷蔵庫を覗き込んで、使えそうな食材を全部入れたスープをつくることにした。炭水化物が欲しくなったらパスタを茹でて入れてもいいし、ご飯のパックがあるからそれを電子レンジで温めて入れたっていい。

 大きめの鍋をかき混ぜていると後ろから緩く声がかかった。


「ん、キラ」


 ニジノタビビトが目を軽く擦りながら、起き出してきた。目を擦るのと反対側の手は緩くシャツの裾を掴んでいるのがさっきの延長線で子供のようで、しかし今度は可愛らしいだけだった。


「レイン、ごめんな。すっかり寝ちまった」

「ううん、いいんだ。私もちょっと確認作業したら寝ちゃって今起きたから。惑星メカニカに行くのが一日遅れてしまうことになっちゃったけど……」

「いや、一日ぐらいなら誤差だよ。冷蔵庫の中身いろいろ入れたスープ作ったんだけど、食べる?」

「うん、食べる! そうだキラ、タオルケットかけてくれてありがとう」


 最初は二人ともスープだけを味わっていたが、お昼ごはんを食べていないものだから物足りなくて、二人分より少し多めのパスタを茹でて一緒に味わった。奇しくも最初の夜のようにスープパスタになった。

 それでも最初の夜とも昨日の夜ともまた違った静かな夜だった。


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