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第204話 ジェットコースターがちかい?


「ンオアー……」


 キラはネコの鳴き声に聞こえなくもないような微妙な声を上げながら天を仰ぎ見てあの空が高く青い日のことを思い出していた。

 あの時、自分がどんなふうだったか。メモには起きた事をある程度書いていたが《翡翠の渦》に巻き込まれた時のあの微妙な感覚はあまり文字に起こしてはいなかった。というのもあれをうまく言語化するのは難しく、メモを書こうとした時も「なんかふわふわした」とか「フラフラしてしゅるんとした感覚があって」とかいう具体性もなく、オノマトペだらけの記述になってしまうと自分以外の誰も分からなくなってしまうと思ったので約四ヶ月前の自分は諦めたのだ。それと、少し恥ずかしかったのもある。

 しかし、今回はこれを見せたい人がいる。だから結果としてふわふわして読んでも大して理解できないような文章になったとしても、できる限り例えを入れることで伝えられるものにしようと頭を悩ませていた。


 まずは『ふと空を見て歩いていたら変な感覚が自分を包み込んでいることに気がつき』の「変な感覚」の部分を詳しく書いてみようと思うのだがいい例えも形容もこれといって思いつかない。


「なんだろ、浮いたような感覚がしたんだよな……ジェットコースター? バンジージャンプ? いやバンジーはやったことないしな……」


 キラの経験の中ではジェットコースターが最も近いだろうか。だがここ数年アトラクションがある場所に行ったことがないのでその体験の記憶は古く、ジェットコースターで落ちる時の浮く感覚というのもあまり覚えていないというのが正直なところだった。


「最後に行ったの修学旅行だっけ?」


 キラは遊園地などが嫌いではないし、絶叫マシンと言われる類も嫌いではなくむしろ好きな方だったが、好んで足を運ぶかというとそれはまた別の話だった。あとは普通に金がかかるなというのも大きな理由だった。

 しかしどれだけ頭を悩ませてもジェットコースター以上の例えが思い浮かばなかったので後で思いついた時に書きたせるだけのスペースは残して『ふわふわと浮くような感覚(ジェットコースターがちかい?)がして違和感を感じ下を向くと渦が広がっていた』と巻き込まれた時の「変な感覚」の説明を書き足した。


「それで下向いて、臍のあたりから白と緑のがブワッて広がって……」


 キラはあの時のことを明確に思い出そうとに立ち上がって俯き臍のあたりを服の上からそっと撫でて、あの時のことがフラッシュバックした。

 足元から何かが迫ってくるような悪寒を感じ、震える。キラは目をぎゅっと瞑ってフッフッと短く数回息を吸った後、大きくフーと息をついて腹においていた右手を硬く握りしめた。その拳でドスンと痛くはないが衝撃が走る程度に腹を叩く。


「トラウマ、とかではないかと思ってたけど、意外と……」


 キラは脱力して座り込むと宇宙船の白い天井を仰ぎ見た。いつの間にか適温、適切な湿度であるはずの宇宙船でキラはじんわりとした嫌な汗を背中にかいていた。






ここまで読んでいただきありがとうございます!

突然ですがニジノタビビトの更新は少しお休みをいただきたいと思います。

理由としては私生活でちょっと精神をすり減らすことがあったこと、ちょっとだけ旅行に行く予定があること、カクヨムのマジックイミテーションの編集をしたいという理由です。よろしくお願いいたします。


こちらの小説が気に入ってくださった方、続きが読みたいと少しでも思ってくださった方は、よろしければ感想やブックマーク、この下の広告の下にあります ☆☆☆☆☆ をクリック、タップで塗るなどしていただけますと、とても嬉しく、何より読者様の応援、反応が一番のモチベーションに繋がります。よろしくお願いいたします。

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