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第201話 第五の被害者


 しかし、最初の被害者とその時の翡翠の渦について聞き込みを続けている間に凶報が惑星メカニカを駆け巡った。

 第五の被害者がうまれてしまった。



「あ」


 キラは思わず声が漏れた。ここまでで名前も詳細もまだ出てきていないが、第五の被害者ともなればそんなもの一人しかいない。第六はまだ出ていないはずだが、少なくともキラが巻き込まれるまでは第四までしかいなかった。



 ――被害者が出てしまったのはセーラン地区の市街地だった。



「俺か〜……」


 名前は出さないでいてくれるが、セーラン地区の被害者、これは間違いなく自分だろう。

 いや、もちろん分かっていた。そんな頻繁に被害者が出ていてはたまったものではないし、このサルニ・ガロンの息子とその恋人が巻き込まれてから自分が巻き込まれるまでのそこそこ長い期間、被害者がいないことも知っていた。


「というかやっぱりこれ、俺も出てくるのか」


 キラはノンブルを確認してから前半の方に戻ってサラサラと読み返してみた。一度上に登ってからまた元の位置まで下りていくスクロールバーで気づいたが、この論文もいつの間にかだいぶ後半まできているようだ。

 これまでの文章の中で第四の被害者までしか登場していないから、てっきりアップロードされたのが最近でも書きあがったのは自分が巻き込まれる前のことかと思ったのだが、それは流石になかったらしい。

 しかし、ということはやはり……。


「この文章、時系列順か?」


 急に自分の存在が出てきたので、調査をしながらこれを書いていて、ちょうどこの第一の被害者について詳しく調べている最中に自分という被害者がうまれてしまったということだろうか。

 そうなると、この部分が書かれたのはおよそ四ヶ月前ということになる。



 翡翠の渦の新たな被害者が出てしまったことは大変遺憾で、実際に別の被害者の親族として辛い部分があったが、身勝手な私は、これで何か新しいことが見つかるかもしれないという考えが真っ先に出てきた。



「うーん……」


 これを読むに、つまりサルニ・ガロンは自分という被害者が出てしまったことを新しい発見のチャンスと捉えたことを申し訳なく思っているということだろうか。

 全く思うところがない、というとそれは嘘になってしまう気もするが。


「いや、でもそんなもんじゃ……」


 キラとしてはあれは運がなかったというか、決して誰かが悪かったとかそういうことではないと思っていて、当然サルニ・ガロンが何かをしたわけでもないのだ。

 そして例が少なく、自分の息子とその恋人の手がかりという手がかりが全く掴めない中、新しいサンプルにそう思うのは仕方のないことではなかろうかというのが素直な感想だった。

 キラは自分という存在がこの惑星メカニカに知れてしまった時、この人と会うことになるだろうと思っているが、せめてその時に少しでも何か、手がかりにつながるものがあれば、とメモに自分の時の事象について改めて順番に書き留めることとした。



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