第192話 サルニ・ガロンの執念
続いて私は唯一被害者がご遺体となってではあるがこの星に帰還できた二人目の被害者の方について調べてみることとした。
サルニ・ガロンは《翡翠の渦》が人を攫った場合にその人がどこへ行くのかを突き止めることができた二件目の被害者について調べることにしたらしかった。
というよりも他に調べられるものがなかったのだろう。だからこそあれほど丁寧に発生現場を調べ、現地に赴いて聞き込みまでしていたのだろう。
サルニ・ガロンは一度足を運んだ二人目の被害者が出た現場に改めて足を運んだらしい。
二人目の被害者が巻き込まれたのはスーリー地区の中心にある大きな公園の南側の入り口付近だった。平日だったことが幸いしたというべきか、いや被害者が出てしまっている時点で幸いも何もないが、大きな公園で小さな子供を連れた親子などが多かったものの、巻き込まれたのは一人だけだった。
私は季節が異なるものの平日に何度かこの公園に訪れたが、人は多かったように感じられる。また翡翠の渦が発生してしばらくはこの公園も人が来なくなったらしいが、そもそもいつ発生するのか、どうして発生するのかわかっていないようなものを警戒したところでどうしようもないので一ヶ月経てばパラパラと、二ヶ月経つ頃にはもう人の数は翡翠の渦発生以前に戻っていたようだ。
それから私は翡翠の渦の目撃者や被害者の知人を探した。公園に頻繁に訪れているらしい親子に一定の距離を保ちながら声をかけ、自分が四件目の被害者の家族であることを伝えて、二人目の被害者が翡翠の渦に巻き込まれた現場を見ていた人か被害者のことを知っている人がいないかを探した。
公園に来ている子供連れというのは独自コミュニティが形成されていることが多く、噂話にも詳しい人がいた。私が身分を示しながらということもあって話を聞かせてくれる人は多かった。
四日かけて探したところ、目撃者と友人だという人物を見つけたため、公園で待っているので話を聞かせてほしいという旨を書いた手紙を預けてその人に渡すように頼み、コンタクトを図った。
どうやら四日も連続で翡翠の渦を目撃した人、被害者の知人を探していたためか私の噂が広がっていたらしく、周りの目もある状態かつ夫も同席しても構わないならという条件で話を聞かせてくれた。
以下はその時の取材の一部である。
キラはまた通信機から目を離して膝に肘をついて左手で目頭を揉んだ。文字を追っているだけなのにカロリーの消費が激しい。
タシアはおそらくこれを読んでいない、もしくは冒頭だけ読んだのだろう。そうでなければ到底これを眉唾ものだとは言えない。いや、論文として眉唾ものと置かれてしまうかも知れなかったが内容は……。
強いて言えばこのサルニ・ガロンが偽物とか、そもそも全てがでっち上げであった場合にキラの今の夜ふかしが水の泡となるが、これが創作で嘘っぱちであるとは思えなかった。
「はあー…………」
キラは深いため息をついて一度通信機をテーブルに置くと水を飲みに行くために立ち上がった。