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第187話 明日のこと


 キラは脱衣所から出てそのままキッチンに直行した。風呂に入って喉が渇いたので水を飲みたかったのだ。ただ冷蔵庫を開いた段階で先ほど風呂場でぐるぐると考えたこともあって少し甘いのが飲みたいと思った。

 キラは冷蔵庫の冷気が逃げてしまわないようにさっと見渡して一度閉じてからすぐにもう一度開けて黄色いキャップの緑色の瓶と浄水ポットを出した。

 それからキラはハチミツが入った大きなボトルも棚から出してハチミツとレモン果汁をスプーンで適当に計りながらコップに入れて水を八割を超えるくらいまで入れた。

 カチャカチャと測るのに使ったスプーンで混ぜるのだがやはり冷水だと蜂蜜も溶けにくい。まあ自分が飲むものなのでそんなに気にする必要はないかと水の中で蜂蜜が細かくなって波のようになったくらいで手を止めた。


「んえっ」


 ハチミツはいい感じ溶けたがレモンは少々入れ過ぎだったかもしれない。思った以上の酸っぱさに驚いた声を出しながらレモン果汁の入った瓶と浄水ポットを冷蔵庫に戻してキラはリビングを覗いた。


「レイン?」

「あ、キラ、お風呂上がったんだね」


 キラはうんと返事をしながらコップに入ったハチミツレモネードを一気に煽ってしまうと酸っぱさに少し顔を顰めながらシンクにコップを置いてソファーに座ったニジノタビビトの隣に座った。


「レイン、明日からはどうする?」

「うん、明日から虹をつくれる人を探すのを再開するよ。今日でちゃんと休めたからね!」

「そっか」

「キラは明日からどうするの? とりあえず警察署には行かなくていいんでしょう?」


 キラは警察署の話をするニジノタビビトが申し訳なさそうな色を表情にも声音にも乗せなくなったことに安心した。


「それなんだけど、明日はまず髪を一時的に染める染料を買いに行きたいんだ。派手にするつもりはないけどちょっと色変えるだけで俺って分かりにくくなるだろうし……。あとはちょっと調べたいことがあるから午前中はそれをやって、その後は俺も虹をつくれる人探しでできることしたいなと思って」

「調べたいこと?」

「そう、今日タシアさんっていう警察の人に《翡翠の渦》に関する論文が最近出たことを教えてもらったんだ。眉唾ものかもしれないとは言ってたけど、レインの記憶を取り戻せるかもしれない《翡翠の渦》について調べるのに惑星メカニカほど向いてる星はないからな。カケラが虹をつくる人がいることを俺に教えてくれることはないけど、それくらいはできるから」


 ニジノタビビトはなんとも言えない気持ちになった。キラはこの星でできるかぎり人目につかないようにしているという印象があった。今までの外出だって外に出なければいけないから出ていたのだ。

 しかしもうすでにニジノタビビト待ちとなったのでキラのそれは不要不急の外出なのだ。それなのに、明日キラは活発に動くと言っている。


「キラ、でも……」

「ああ、大丈夫だよ。レインの手間を増やすようなことはしないようにするから」

「そうじゃなくて……!」

「大丈夫、うまくやるから。それに目立つようなことしないから平気だよ。時間も選ぶし」

「…………う、ん」


 ニジノタビビトは強く主張するキラに何も言えなくなってしまった。

 ただ、自分のために危ない橋を渡ることも厭わないキラが少しだけ怖かった。



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