表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
184/204

第184話 決意新たに


「キラ、お風呂上がったよ」

「ん、じゃあ俺も入ってくるわ」


 キラはソファーに浅く腰掛けて背もたれに沈むという姿勢の悪い体制のまま自分の通信機を見て時間を潰していたらしかった。惑星メカニカに戻るまでキラの通信機はメモをしたり写真を撮ったりするくらいにしか使えなくなってしまっていたので、一応バッテリーがゼロにならないように充電をしてはいたけれどこんなふうに触っている姿を見るのはほとんどなかった。

 キラはニジノタビビトが声をかけたことで一度そちらを向いて笑顔で返事したものの、すぐに通信機に視線を戻して唇を少し突き出したムッとしたような表情をして何やら文字を打ち込んでいるようだった。

 ニジノタビビトはその画面に何が映し出されているのか気になったもののわざわざ追求することでもないかと思ってくっとそれを飲み込んだ。

 ニジノタビビトは何か他にかける言葉を考えようかとも思ったがそれも思いつかずにひとまず冷蔵庫から何か飲むものでも探すためにキッチンに行くことにした。




「やべ、保温長引かせるとあれか」


 キラはニジノタビビトキッチンに行ってしまったところではたと電気の使用量のことに思い至って慌ててタプタプと文字を打ち込み送信すると通信機の画面を暗くして自室になっている場所に着替えを取りに行った。

 キラはとりあえずまだ体調の回復には時間がかかりそうだという虚偽の報告をタシアとアメルデに送っていた。しかしいつまでも体調がすぐれないようだと言い張り続けるわけにもいかない。病院に連れて行ったほうがいいのではだとか言われてしまうと少々面倒なことになるだろう。

 だからここからいかに、徐々に回復してきていることを主張しながらニジノタビビトと警察の対面を先延ばしにできるか、または感謝をするだけの警察という拒否する必要が特にない対面をいかに断ることができるかを考えていかなくてはいけない。

 何にしてもニジノタビビトがどれだけ自由にニジノタビビトとして動くことができるかをサポートしていけるかが明日からのキラの課題だった。

 キラは決してニジノタビビトを追い出したいということはない。しかし惑星メカニカにおいて自分があっという間にニュースで特番を組まれかねないような経験をしてきてしまった自覚がキラにはある。自分がこの星に戻ってきた本懐を果たすためには騒がれることを避けて通る道はないだろう。

 その時に隣に知らない星の知らない人間をわざわざ遠く、遠く離れた星から無償で送り届けてくれたニジノタビビトがいては巻き込まれるどころか余計騒ぎ立てられて謂れのないことまで言われかねない。


「絶対にレインを無事にこの星から送り出す」


 キラは脱衣所を兼ねた洗面所の鏡の中に映った自分の姿を睨みつけて決意を新たにした。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ