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第166話 黒髪の男、曲がり角


「ハッハッ……」


 キラは周りに人がいないことを確認できるたびに軽く走っていた。ニジノタビビトがどうしているのかが気になって仕方なかったからだ。

 昨日ニジノタビビトは明らかにアメルデたち警察の話がでてから顔色を悪くした。そのことからおそらく理由はニジノタビビト、ひいては虹をつくることに関することをこの星の警察に問い出されることが怖かったという可能性が高い。つまり、できるだけ彼らと会わないようにできればニジノタビビトの心の安寧は保たれるということになる。

 それができる方法が何かないかと考えながらニジノタビビトがいるかは分からない宇宙船へと急いだ。


「うっわ」


 しかしキラは前方から来る人物を見て慌てて足を緩めた。ただ歩いている人物よりも走っている人物の方が目立つだろうと思って前方から人が来るたびに足を緩めていたのだが、今回は少しまずいかもしれない。


「あーの顔、見たことあるんだなあこれが」


 キラは視力がいいので相手が気づく前に気付けたが、キラは目の前から来る人物のことを知っていた。

 キラが惑星メカニカに戻ってきたことを知っているのはキラが《翡翠の渦》に巻き込まれるまで住んでいたアパートの管理人であるカプラ、キラが帰還することを信じてアパートに何度も通いカプラから連絡を受け取ったセージ、セーラン地区役所の職員であるカルーセルとホーロン、そしてセーラン地区所轄警察署のアメルデ、タシア、ルーランドだ。

 役所と警察署には彼らの他にも数名自分が帰ってきたことを知る人物がいるとは思うが、毎日何回かしているSNSのエゴサーチでは二週間前のうっすい内容の《翡翠の渦》に関するまとめ記事のリンクが載った投稿が最も新しいものだったし、誰かに押しかけられたりつけられたりしているわけでもないので彼らがどこかしらに吹聴しているということはないはずだ。セージも約束を守ってくれているようだし、そもそも役所や警察なんていうのは万人の個人情報を常日頃扱っているはずだからその辺りの意識も高いのだろう。


 目の前から歩いてくる黒髪の男にキラは見覚えがあった。おそらく、キラと同じ大学に通う確か、シュウという名前だ。そもそも、この辺りは一応大学から近いところにあるので、今まで誰とも遭遇しなかったのはそれだけ運が良かったのだろう。これといって関わりがあったわけではないし、顔と名前だけを知っている同じ学科というだけだが、万が一がある。こんなところでバレるわけにはいかない。

 少し歩いたところに曲がり角があるが、彼と近づくまでに曲がりきれるだろうか。

 キラは目立たない程度の早歩きで曲がり角目指して歩く。先ほどまで軽く走っていた時は全然平気だったのに、急に脇腹に痛みを覚える。

 あと少し。三十メートル、二十メートル、十メートル、五メートル……!


「……ふー」


 キラはなんとかシュウらしき人物がこちらを認識する前に角を曲がることができた。キラは胸を撫で下ろしながらも、彼が自分と同じところを曲がってこないとも限らない。また早足で少し遠回りになってしまった宇宙船までの道のりを急いだ。



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