第163話 聞き取りの終わり
「それではラズハルト君、そろそろ再開しましょうか」
「はい!」
キラはこれが終わればおそらく早く帰れると分かってやる気を出して、沈み込んでいたソファーから立ち上がった。
今回の嘘で最も重要なのは序盤の部分でそれはもう休憩前に話してしまったので、後は惑星メカニカに着く一つ前の食糧補給した星から話すだけというのもありキラは気がだいぶ楽になっていた。
しかし油断はできない。キラはタシアに続いて聞き取りをしている会議室に戻った。
「それじゃあ、以上ですね。お疲れ様でした」
「はい、ありがとうございました!」
「それでは私はルーランド警視正とアメルデ警部に報告の上、この後のことについて相談してきますからここでお待ちください」
「お願いします」
無事に惑星メカニカに着陸し、役所を訪れるまでを話終えてキラはほっとした。長時間集中して話すだけでも疲れることなのに、そこに一世一代の嘘を混ぜ込んだのだからキラの疲労はひとしおだった。
しかしこれで無事にニジノタビビトの秘密を守ることができただろう。後は、ニジノタビビトがこの星で虹をつくる人を見つけて虹をつくり、無事に旅を再開できるようにしなくては……。
自分はあとニジノタビビトに何ができるだろうかとキラは考えに耽った。レシピ集は後少しで書きたいと思っているものも書き終わる。もちろん虹をつくれる人探しに関しては協力するし、その後のことだって協力を惜しむつもりは少しもない。しかし、そのほかは?
キラは準惑星アイルニムでニジノタビビトと出会った時のことを思い出した。あの時にも宇宙船の同乗させるメリットをプレゼンするために自分ができることを考えた。そして……。
「そうだ、《翡翠の渦》について……」
ガチャッ。
「ラズハルト君、お待たせしました」
「あ、タシアさん、アメルデさんも」
そう呟いた時、会議室のドアが相手タシアが戻ってきた。アメルデも共にいる。
「やあ、ラズハルト君お疲れ様。聞き取り無事に終わったのね」
「はい、おかげさまで」
「ええ、それでこの後のことだけれど、ラズハルト君をこの星に送ってきてくださった方の体調が快方に向かうまではできることがあまりないのよ」
「はい」
「それはタシアからも聞いたかしらね、だから今日はこれで帰宅してもらって大丈夫よ。それで、そのラズハルト君を送ってきてきださった方は看病するつもりなの?」
「はい。買い出しとかしてやりたいし、胃に優しいものとか作ってあげたいので……」
「そう、でもその方を待つと、ラズハルト君はそれだけ大学や日常生活に戻るのが遅れてしまうけれど……」
キラは目を見張った。なるほど確かに、自分は大学があった。
ただこれは忘れていたというわけではなく、単純にニジノタビビトがキラの中で最優先事項とういうだけで、自分が大学に通うのを再会するかは別に後で考えればいいと思っていただけだった。それに。
「自分はこの件が落ち着くまでは大学とかに戻るつもりなくて。そもそも惑星メカニカにこんな短い期間で戻ってこれたのが奇跡に近いんです、ここまできたら多少日にちが経とうがそこまで変わらないですよ。だからあの人が無事に旅を再会できるまでは自分はまだ宇宙の旅の続きの上にいるんです」
「……そう。分かったわ。それじゃあ、明日以降はその方の体調が回復次第ということにしましょう。それで、その方が回復されたら私たちに連絡を頂戴。その後私たちと会えるのか、この星をいつ頃旅立つ予定なのか聞かせて」
「はい、分かりました」
「焦って治していただく必要はこれっぽっちもないわ。それと、よく分かっているとは思うけれど、マスコミなんかには気をつけてね」
「はい!」
「うん、いい返事ね。そうね、他に何か聞いておきたいことはあるかしら」
「あ、それなんですけど……」
キラは先ほど思い出したことを訪ねるためにおずおずと口を開いた。