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第150話 紫がかった黒髪の人


「っどこ? どこにいるの!?」


 ニジノタビビトは誰一人として取りこぼさないように目を大きく見開いてあたりを見渡す。カケラはその熱によって虹をつくれる人を教えてくれ、さらにその熱さの違いによってその人との距離を教えてくれる。今はまだ弱い熱だから虹をつくれる人との距離が開いているということなのだろう。

 カケラがなければ全くの手がかかりがない状態となって、いちいち「えも言われぬ感情や、大きな思いを抱いていませんか」なんて聞いて回ることになり、変な勧誘だとしか思われなくなってしまうので、カケラはあるだけで大助かりなのだが、それはそれとしてニジノタビビトはもう少しだけ詳しく教えてくれたりしないかと思ったりもしている。

 ニジノタビビトは空になったペンダントトップのケースを蓋が開いたまま適当に服の下に突っ込んで、ラゴウが生成したカケラを間違っても落としたりなどしないように強く固く握りしめてあたりを見回しながら慎重に歩き始めた。

 ここは住宅街で今見える範囲に人はいない。カケラは突然熱を持ち始めたし今少しづつ場所を移動しているが、カケラの熱さが徐々に増していることからおそらくこの辺りの家に住んでいる人に反応しているわけではないだろう。

 ニジノタビビトはカケラの熱に全意識を集中させ、鬼気迫った表情であたりを見回しながら先ほどカケラの熱を感じた場所から移動してバス停もある道の広い通りに出た。この通りは歩道も広く、あたりを見回せば歩行者も何人か確認できる。


「この辺は……」


 カケラを握りしめて意識を集中させたままニジノタビビトは一度通信機を取り出して現在位置の把握をしたが、この辺りはやはり一度通っている。マップを縮小するとどうやらここは宇宙船を停めてある場所から駅の方角に向かう途中の道らしい。さっきいた場所とは違いまばらだがベビーカー押した女性や自転車ですれ違う人もいるがカケラの熱さからどの人も該当者ではないだろう。

 ニジノタビビトは少し立ち止まっている間にカケラの熱さが弱くなってしまっているのを感じて焦りながらひとまず駅がある方に向かってみることにした。

 道は片側一車線の道路だが道幅が広く、駐車している車があっても余裕で抜かせるほどの道幅があり歩道も広いため、反対側の歩道を歩いている人までカバーできているのかに多少不安があったが、まだカケラが熱を持ち続けているという事実のみを頼りにニジノタビビトは必死に足を動かす。


「こんなことならカケラが熱を持つ範囲を検証しておけばよかった……!」


 カケラがどれくらいの距離まで近づけば熱を持つのかはなんとなく把握しているものの、カケラの違いによるものなのか人の違いによるものなのか、どうやら距離と熱さが一定ではないらしいことは分かっていたためこれまで検証してこなかったのだ。しかし、一度検証しておけば振れ幅があると言えども数値として把握できるからしておけばよかったと今になって後悔した。

 対象が動いているのだとすれば、カケラの熱さにあまり変化がないことから方向はあっているらしい。それならばとニジノタビビトはさらに足を速める。


「あ!」


 段々と熱くなるカケラを左手に、ニジノタビビトは一人の歩行者を見つけた。後ろ姿から見た感じだが、おそらく男性で歳の頃はおそらく若くまだ学生くらいにも見える。


「あ、あの!」

「……はい?」


 ニジノタビビトは握ってもらった時に万が一にでも持ち去られることを防ぐためにカケラをペンダントケースの中にしまってから、少し紫がかった黒髪の人物に声をかけた。



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