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第148話 お慶び申し上げる


「っはい! キラ、キラ・ラズハルトと申します」


 キラは数秒の間言葉がでなかった。アメルデと初めて対面した時もひどく緊張したものだが、この人はそれ以上だ。キラはこの数日の緊張によって体重が三キロくらいは痩せてしまうんじゃないだろうかと思った。


「そうか」


 ルーランドは少し目を瞑ると、ずっと真顔だった顔に温かさを乗せて微笑んだ。


「まず、君があの超常現象に巻き込まれながらも約四ヶ月という短い期間で我らが惑星メカニカに無事帰還できたこと、心よりお慶び申し上げる」


 は、とキラの唇から息が漏れた。目頭が熱くなってしまうのをなんとか堪えて言葉を絞り出す。


「あ、ありがとうございます……!」

「そこのアメルデの報告で歯型での本人確認ができたとのことで診断書も拝見した。しかしながらそれはアメルデが個人的にしたことなのでこれからまた事情聴取をした上で記録をつけながら本人確認をしなくてはならない。あらかじめご了承いただきたい」

「あ、いえ、その……自分が帰ってきたのは普通信じられないのは仕方ないことですし、大丈夫です。……よろしくお願いします」

「ああ、よろしく」


 ルーランドは立ったままのキラにさあ座って、と言うとアメルデの横に腰を下ろした。キラは椅子の位置をアメルデとルーランドの間に調整してから座り直した。キラはペットボトルの位置を少しずらして背筋を伸ばし、しかし顎を引いて上目遣いにルーランドのことを見る。いつの間にかタシアが記録のためなのだろう、ノートパソコンを取り出している。


「ではまず、あなたが《翡翠の渦》に巻き込まれたところから話を聞かせていただこうか」


 



 ニジノタビビトは朝、キラと二手に別れてから今日も街をぶらぶらと、ペンダントトップのケースに収めたラゴウのカケラに意識を向けて歩いていた。昨日も一日歩いてみたり立ち止まってみたりしたがカケラは反応してくれなかった。

 そのため昨日は結局キラ生まれ育った星を見て歩くという意味合いの方が強い一日となった。そして歩いているうちに辿り着いた高台で夕焼けを眺めていたら時間が経ってしまい、そこから徒歩で帰るのにも多少時間がかかってしまったのでキラよりも帰宅が遅くなってしまったのだ。しかし今日までそんなことをしていられない。ニジノタビビトは自分がこの星に留まり続けることがキラにとって迷惑になってしまうのではないかと考えていた。

 では別の星で虹をつくれる人を探すという選択肢もあるはずだが、この惑星メカニカに来るために宇宙船の燃料はほとんど使ってしまい、今行けたとしても同じ第七五六系恒星シタールタ系の星くらいになってしまっていた。それならばニジノタビビトは、レインは少しでもキラとの別れを先延ばしにしたかった。キラと一緒にいたかった。


「あんまり、のんびりはしていられないよなあ」


 しかしながら虹をつくれる人というのはなかなか見つからないものである。前回のラゴウの時も承諾を得るのに時間がかかったもののあれはどちらかといえば早い方であった。

 虹をつくる人を見つけるにはカケラの熱が唯一の手がかりなので、これに頼るしかない。ただ人が大勢いるような駅やショッピングセンターなどに行ってしまうと例えカケラが熱を持ってもどの人に反応しているかが分からなくなってしまうので、場所も考えなくてはいけないのだ。

 ニジノタビビトは頬をペチンと叩いて気合いを入れ直し、歩みを進めた。



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