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第146話 警察署三階のある部屋


 コンコンコン。


「タシアです。アメルデ警部、ラズハルトさんをお連れしました」


 キラが連れて来られたのは警察署の三階の、ある部屋の前だった。タシアが立ち止まったのに合わせてキラも立ち止まると、タシアが一度キラの方を見てニコッと笑ってここですと教えてくれた。

 タシアはそのまま立ち止まった目の前のドアを三回ノックして声をかけた。


「はい、どうぞ」


 ガチャ。


 タシアはアメルデの返答にすぐにドアを開けてそのまま押さえながら壁際に体を寄せて言った。


「ラズハルトさん、どうぞ」

「あ、ありがとうございます」


 キラはペコペコと軽く二回ほど頭を下げてからタシアに促されるまま入室した。中にはてっきりアメルデ以外にも警察官の人がいるのかと思ったが、実際にはアメルデ一人だけだった。


「さ、ラズハルトくん。こちらへ」


 キラはアメルデが指し示した先の椅子に言われるがままついた。


「ラズハルトさん、飲み物、何がいいですか? コーヒー、緑茶、紅茶、ジュース、炭酸……なんかは出せますが」

「あ、じゃあ……紅茶を、お願いします」

「はい。ストレート、ミルク、レモンの希望はありますか?」

「えっと……じゃあ、ミルクを……」

「分かりました。それではアメルデ警部、お願いしますよ」

「分かってるわ」


 タシアはアメルデに念押しをするにしてから部屋を出ていった。キラを迎えにいく前に足しはアメルデにキラのことを威圧しないようにと苦言を呈していたのだ。しかしキラはアメルデと目を合わせるにはどこか気まずくて、アメルデの手が置かれた机のあたりで視線を彷徨わせた。

 そんなキラ気づかないのか、全く気にすることなくアメルデは話し始める。


「ごめんなさいね。早速なんだけど少し待機してもらうことになるわ。まだ上の会議が終わってないのよ。ただ報告は既に済ませてあるから……。まったく、立場だけ偉くなった人たちの会議って意味のない沈黙の時間が長くて嫌ね」


 アメルデは頬杖をついてキラがなんとも反応しづらいことをぼやいた。キラは言わんとせんことがまったく分からないわけではなかったが、アルバイト経験のみでこの地域の安全を守っているアメルデに対して分かります! などと言うわけにもいかず、はあ……と同意のような相槌のようなもの返すほかなかった。

 というか、これから来る人が会議に出ていて、その会議がアメルデいわく立場だけ偉くなった人の集まりなのだとしたら……。キラはまたアメルデの発言で不安になった。


「その、これから来る方って……」

「え? ああ、これから来るのはセイル・ルーランド警視正、さっき立場だけ偉くなった人って言ったけど、ホーランド警視正はそういう人じゃないから大丈夫よ」


 少しホッとした。しかし一緒に出てきた階級にキラは正直ビビった。警視正っていうのは、もしかしてすごく偉い人なのではないだろうか。基本ドラマを見ないキラでも警部という階級はよく聞くのでなんとなくわかるが、警視正はなんとなく名前を聞いたことがあるくらいのもので、アメルデのどれくらい上なのかも分からず、手に汗が滲む。


 コンコンコン。

 ビクッ!


 キラは肩を跳ねさせて、勢いよくドアの方を向いた。その警視正の人がもうきてしまったのかと思ってびっくりしたのだ。しかしすぐにかけられた声で吊り上がった肩は元の位置に戻った。


「タシアです。アメルデ警部」

「どうぞ」


 タシアは入室するとキラの前にミルクティーの入ったペットボトルを、アメルデの方にはブラックコーヒーのボトルを二本置いた。キラはありがとうございます、いただきます、と言ってひとまず乾ききった口の中をどうにかしようとペットボトルの蓋に手をかけた。



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